| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六十二話 ならず聖その八

「援軍を待っていたかと」
「左様か、して他にわかったことはあるか」
「少し妙な話を聞きました」
「妙とは?」
「伊賀から来ておる者の言葉ですが」
 この前置きからだ、平手は信長に話した。
「伊賀の忍だった者がおるとか」
「伊賀者がか」
「石川と申す者が」
「石川五右衛門、確か百地の里の忍じゃな」
 石川と聞いてだ、信長は平手にすぐに返した。
「そうじゃったな」
「はい、忍ですが随分目立つ者とのことで」
「その者も覚えておったか」
「本願寺に味方しておるのかと」
 こう述べられる。
「どうやらですか」
「ふむ、左様か」
「殿、石川五右衛門といえばです」
 すぐに蜂須賀が述べてきた。
「伊賀の百地三太夫の下におり」
「かなりの手練じゃな」
「服部殿とはまた別の一族になります」
「その様じゃな」
「伊賀には多くく二つの系統があることは」
「無論知っておる」
 信長にしてにだちいうんだ、
「服部家の系列とじゃな」
「はい、その百地家とです」
 二つに分かれているというだ。
「服部家に分かれていますが」
「最初から分かれておったのじゃな」
「左様です、百地家と服部家は同じ伊賀におりますが」
 伊賀の忍の里だ、それでもなのだ。
「別々に住み交わることもありませぬ」
「そして百地家は最初からだったな」
「伊賀におりました、その生まれははっきりしませぬ」
「ふむ。古くからおってじゃな」
「後で服部家も来ました」
 その彼等がだというのだ。
「しかしその時から両家は交わらず」
「今に至っておるな」
「服部家は徳川家に仕えておりますが」
「百地家は別じゃな」
「どの家にも仕えておりませんでしたが」
「本願寺に雇われたのであろうか」
 ここでだ、信長はこう察した。
「そうではないか」
「いえ、それは」
「ないか」
「あの者達は忍の間でもわからぬ者達です」
 蜂須賀はいぶかしむ顔で信長に話す、彼もまた忍であり伊賀についても知っているのだ。しかしその彼でもなのだ。
「百地家に関しては」
「わからぬか」
「はい、全く」
 信長に申し訳なさそうに話す。
「残念ながら」
「御主もか」
 信長は滝川も見て問うた。
「やはりあの者達のことは」
「申し訳ありませんが」
 滝川もこう答えるだけだった。
「あの者達のことは」
「そうか、甲賀の間でもか」
「あの者達が何時から伊賀におるかさえ」
 それすらというのだ。
「全くわかりませぬ」
「そうか」
「そうです、どうしても」
 こう言うのだった、滝川もまた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧