美しき異形達
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第八話 土の忍者その十五
「いい動きだな、菖蒲ちゃん」
「身体の動きがいいわね」
「ああ、最低限の動きでかわしているな」
「上半身だけの動きでね」
「ああ、いけてるよ」
怪人の攻撃をかわしているというのだ。薊は菊に話した。
「いい具合にね」
「そうね、ただ」
「ああ、守る一方でな」
「攻めるまではな」
それまではというのだ。
「至ってないな」
「そうね、かわすだけではね」
「何にもならないからな」
こう言うのだった。
「どうするのかね」
「そこも見られるかしら」
「あの娘あれだけで終わらないからな」
菖蒲のことをわかっている、それで言った言葉だ。
「これから見所だな」
「薊ちゃん菖蒲ちゃんのことわかってるのね」
「いやいや、それ程でもないよ」
「そうかしら」
「少なくともこれで終わる娘じゃないのはな」
そのことはわかっているというのだ。
「だからな」
「ここからね」
「攻撃ってのは何時までも出来ないさ」
薊はこのことも笑って言った。
「それはな」
「そうね、それに」
菊はここでこのことを指摘した。
「力があるから」
「ああ、何をするかだよ」
「菊ちゃんがね」
「ちょっと楽しみだな」
薊は菖蒲と怪人の闘いを観ながら笑って菊に述べた。
「菖蒲ちゃんが何をするか」
「うん、それじゃあね」
菊も笑顔で応える、そしてだった。
二人は楽しげな笑みで菖蒲の闘いを見ていた、だが裕香はその二人を見て怪訝な顔だった。その顔で薊に尋ねた。
「楽しみなの?」
「ああ、菖蒲ちゃんがこれから何をするかさ」
「菖蒲ちゃん今危ないんじゃ」
「大丈夫だよ、さっきも言ったけれどさ」
「攻撃は何時までも出来ないのね」
「ソフトだってそうだろ」
薊は裕香の部活のことからも問うた。
「そうだろ」
「ええ、確かに」
「だから大丈夫だよ、後の先だな」
「後の先?」
「そうだよ、敵に攻めさせてな」
そのうえでだというのだ。
「その先だよ、菖蒲ちゃんが考えているのは」
「そうなのね」
「まあ見てなって。菖蒲ちゃんは勝つよ」
微笑んだままで言う薊だった、裕香にも。
「絶対にさ」
「じゃあ私もなの」
「見ていてくれよ、菖蒲ちゃんが勝つ姿を」
まさにそれをというのだ。
「今からのな」
「それじゃあ」
裕香は薊の言葉を信じることにした、そしてその菖蒲は。
まだ怪人の爪を避けていた、攻撃はまだまだ続く。
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