少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第62話 ロシュオとの邂逅 ①
森を出る前に、咲がしたいことがあると言い出した。
「前にね、ドラゴンフルーツのロックシード、こわされちゃったの。だから、新しいの、ここでチョータツできないかなって……だめ?」
咲が変身することになった時、ヒマワリの錠前しか持たないままでは、また咲の体に負担をかけてしまう。ヒマワリ以外のロックシードは必要だ。
「兄さん――」
「分かった。“森”を出る前に探してみよう」
「やったあ!」
「ありがと。兄さん、だいすきっ」
碧沙が貴虎に抱きついた。貴虎は苦笑し、妹の頭を撫でてやった。
そして、ロックシード探しが始まった。
だが、いくら木から果実をもいでも、現れるロックシードはランクCやDのものばかり。
加えて、ロックシードを収穫できるのは、戦極ドライバーを持つ咲だけ。効率が悪いことこの上ない。
手の届かないあの果実がそうかもしれない、と悄然と木を見上げる咲を見ては、貴虎も放っておけなかった。仮に放っておいたら妹の中で自分の株が下がるというリスクもあった。
貴虎が肩車してやると、咲は喜んで高所の果実をもげるだけもいだ。
何度かそんなことをくり返し、ついに。
「あったぁ!」
ドラゴンフルーツのロックシードが咲の両手に握られた。
「イェーイっ」
「いぇいっ」
咲は碧沙と手を打ち鳴らした。
「よかったわね、咲」
「うんっ。これお気に入りだし一番使ってるから、これからこれなしで戦うのかと思ったらどーしよーかと思ったぁ」
そういえば貴虎も、メロンの他にスイカの錠前を主武装としていたが、使うのはもっぱらメロンのロックシードだった。愛着というのはこういうことか、と貴虎は妙に納得した。
(しかしロックシードを探してずいぶんと遺跡に近づいてしまった。早々に退散すべきか)
思案を断ち切るように、頭上の枝がいっせいにざわめいた。
さわ、さわ……草木がすれ合う音が近づいてくる。これは――足音だ。
貴虎はとっさに碧沙と咲を背に庇った。変身できない自分でも、一撃目の盾になるくらいはできる。か弱い子供を守るのは大人の責務だ。
足音の主が姿を現した。
インベス――にしては、フォルムが人間的だ。全体的に白い。だが、外見が問題なのではない。このインベスが歩いた後に次から次へとヘルヘイムの植物が生えるのも、この際無視しよう。
(何だこの威圧感――威厳は。まさかこれが、葛葉が言っていたオーバーロードなのか)
『お前がこの森を探る者たちの長だな?』
退役軍人を思わせる老爺のような、落ち着いた、ゆったりした声だった。
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