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剣の世界の銃使い

作者:疾輝
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藍椿

「メッセージねぇ・・・」

そんな堂々と表ざたに証拠残すようなこと、藍椿でやったか?いや、表に出せないようなことはしてない、と思いたいが・・・。
結局、俺もレナも何のことか分からなかったので、シリカに続きを促す。

「10層で攻略組が苦戦してたボスが、いつの間にか消えていて、《藍椿参上!!》ってメッセージだけが残ってたー、って話なんですけど・・」

10層?えーと、あ、あれの事か。

「やったな、そんなこと」

「やりましたね、そういえば」

俺とレナがほぼ同時に呟いた。あれは実際はボス撃破より、その後の11層での出来事の方が酷かったから、すっかり忘れてた。

「確かラウ姉が、11層ってアイングラットの10分の1達成地点だよねー、だったら藍椿が一番乗りしよー!!とか言ったのから始まったんでしたっけ?」

「そうだったな、それから結局、一番乗りするにはボス撃破しかないって話になって・・・」

ボスを倒し終わるのを待って、倒したらその横を抜けていくとかも考えたが、ラウ姉にそんなのつまらないよ!!って一蹴されたのはよく覚えてる。んで、結局ボス戦に挑むことになったんだったな。

「その後、10分くらいで基本的な作戦決めて・・・」

「後はいつもの、《問題点はその場で何とかする》でごり押ししたんだったよな」

少しくらい不安残した方が絶対に楽しいよ、というのが彼女の口癖だった。そのせいで、藍椿ではいつも作戦は深々と立てず、何か起こったらそのとき考える。という方針をしていた。
今から考えても、かなり頭のおかしい考え方だった。

「え・・?たった4人でボス倒しちゃったんですか!?」

「そうだよ~。そういえば、先輩が今もずっと着ているローブは、そのときにドロップした物ですよね?」

「ああ。んで、そのシリカが言ってるメッセージは、ボス撃破し終わった後にラウ姉が書いたものだと思う。いや、それ以外あり得ない」

確かに4人だけで撃破するのにもかなり苦労したから、ボス戦が終わってから上の層に向かうまでは疲労困憊だったので、そのあたりの記憶がない。
シリカは心底驚いているようだが、これは、藍椿の中ではまだ軽い方だ。うん、割とマジで。
その後のあの事件の方がひどかったし。

「それで、とりあえずここが藍椿の集合場所だったんだよ」

「ラウ姉の気分で集合場所は結構替わってたけどな。まあ、ある程度はここに集合してた」

この場所はレナの店兼藍椿のホームとなっていた場所で、一応倉庫や金庫もここにある。金庫と言っても、ここに金がたまり続けていたのは見たことないが。

「レイトさんやレナさんは今でも藍椿で活動しているんですか?」

いつかは聞かれると思っていた質問。何気ない一言だったが、レナが隣で息を詰めるのが分かった。俺は何でもないように答える。

「いや、今はしてない。ラウ姉たちがいないからな」

「え?それって・・・?」

そう、ラウ姉とリオンさんはもうこの世界にはいない。
実感がわかない。俺はその瞬間を見ていたはずだ。なのに、それが、自分の記憶が信じられない。
俺が黙り込んだのを見て、代わりに口を開こうとしたレナを制して、俺は吐き出した。
これを言うのは藍椿の中では先輩である俺の役目だ。

「死んだよ、ふたりとも」

「っ!?」

そう、もう彼女たちはいない。
それを認めたくはない。だが、それは揺るがない、どうあっても変わらない事実。だから・・・・。

「たまたま、最前線に上がって来ててな。そこで、他のパーティを庇って・・・・それでな・・・」

あの時、俺にもっと力があれば・・・。何度もそう思う。それ以来俺は、自分の無力さを呪い、一度もパーティには入りはしなかった。ひたすらソロでレベルを上げ、攻略組に登りつめるまでになった。
今では元の考えに戻ったものの、それでもあの日のことは忘れたことが無い。いや、二度と忘れられないだろう。
この力があの時あれば、彼女達を助けることができたのだろうか。この答えが出ることもない。

「それにしても、よく立ち直りましたね。先輩」

「ま、レベルだけ作業のように上げてても、楽しめないって分かったからな」

あの事件以来、ほとんど忘れかけていた《楽しむ》という行為を思い出したのは、最前線の近くで、あるプレイヤーたちを偶然助けた時だった。

「迷宮区で突然、近くでアラームトラップが鳴ってな。潰しに行こうと思って行ったら、成り行きでそこにいたパーティ助けたんだ。助けたと言っても、何人かは間に合わなかったけど・・・。それでも、終わった後、ふとラウ姉のこと思い出してさ。それで、今の自分は何やってるんだろうって思って、そこで立ち直れた」

本当に偶然の出来事だった。あれが無かったら、俺はすっと、この世界が終るまであのままだったかもしれない。そう考えると、不謹慎だがあの事件には感謝している。

「よし、この話はここでやめ。元の目的に戻ろうか」

一度手をパンと鳴らして、場の雰囲気を打ち切る。もうこの話はこれくらいでいい。全く藍椿のことを知らないシリカには、この話は重すぎた。

「レナ、俺を呼んだからには、何か理由があるんだろ?」

「あ、そうでした。つい昔話に花が咲いてしまいましたね」

レナは立ち上がって奥の壁に立てかけてあった槍を掴むと、俺に向き直る。

「久しぶりに、決闘(デュエル)してくれませんか?」

笑みを浮かべて、本来の目的を言った。  
 

 
後書き
さて、最後のレナの笑み、皆さんはどう捉えたでしょうか?
普通に優しい笑みを浮かべたってのをイメージしてたんですが、友人に見せたら
「絶対これ、ニヤッとした方の笑みだってww」
って言われたんですけど・・・・
ま、どっちだっていいですww
感想とか待ってます!! 
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