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戦国異伝

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第百六十二話 ならず聖その三

「言った通りな」
「ですな、あの者達らしく」
「来ましたな」
「高野山とは仲が悪いと思いますが」
「それでも」
「そのこともわからぬな」
 どうしてもだというのだ、信長は。
「あの者達と高野山のことはな」
「しかしですな」
「今は」
「うむ、置いておいてじゃ」
 そしてだというのだ。
「まずはな」
「この戦いに勝ちましょうぞ」
「何としても」
「守りはこれまで以上にじゃ」
 固めよというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「ここは」 
 毛利と服部も応える、そしてだった。
 織田軍は守りをさらに固めた、こうした時に織田軍が持っている長槍がものを言った。その長槍が敵を防いでいるのだ。
 そしてだ、そこで。
 弓矢と鉄砲を放つ、それで彼等を防ぎ。ここで信長はまた言った。
「絶対に槍から前に出るな」
「槍を突き出した前にですか」
「そこからは」
「そうじゃ、出るな」
 絶対にだとだ、信長は足軽達に答えた。
「わかったな」
「そして弓矢を撃ち」
「鉄砲も」
「そうじゃ、狙いは定めずともよい」
 それもだというのだ。
「わかったな」
「はい、では」
「そうします」
 足軽達も応える、既に事前の準備をしていた彼等も充分に戦えている。敵は次々と倒されていっている。
 闇夜の中に断末魔の声がする、全て闇の者達だ。
 柴田はその声だけを聞いている、そして言うのだった。
「ふむ、よく見えぬが敵はな」
「はい、倒しておりますな」
 明智が応える、柴田の言葉に。
「確かに」
「そうじゃな、しかしじゃな」
「見えないということは」
「困るのう」
「はい、しかし」
「敵は確かに倒しておる」
 こう言うのだった。
「何とかな」
「そうですな、では」
「このまま戦う」
「朝になればはっきりしますな」
 この戦いの結果がだとだ、明智もほぼ声だけを聞きつつ柴田に応える。
「どうやら今もかなりの数で来ていますが」
「朝になればな」
 その時はだった。
「倒れておる屍の数だけを数えるか」
「それだけで相手の数はわかりませぬが」
 生きて逃げる者も多く屍も仲間が持って帰ることも多いからだ、確かに倒れている骸の数だけで敵の総数はわからない。
 だがだ、それでもなのだ。
「それだけの敵を倒したことは間違いありませぬ」
「そうなるのう」
「とりあえず朝まで、です」
 戦おうというのだ、これが明智の今の言葉だ。
「そうしましょうぞ」
「そうじゃな、ではな」
 柴田は明智の言葉に頷いた、そうしてだった。
 織田軍は朝まで戦った、朝日が昇るといい加減闇夜に目が慣れてきた織田家の軍勢は闇の衣の者達はというと。
 去って行った、残っていたのは。
 屍とだ、まだ戦おうとする高野山の反逆者達だった。高野山の者達はまだ戦おうとしていたがそれでもだった。 
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