戦国異伝
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第百六十一話 紀伊へその十一
「そうするからのう」
「では、ですな」
「これより」
「高野山を囲むのじゃ」
全てはこれからだった。
「そのうえで使者を送るぞ」
「そしてその使者は」
それが誰かとだ、問うたのはここでも池田だった。
「誰にされますか」
「和上じゃ」
雪斎を見ての言葉だった。
「ここはな」
「雪斎和上ですか」
「そうじゃ、頼むぞ」
信長は雪斎自身にも顔を向けて告げた。
「ここはな」
「畏まりました、それでは」
「ではな、しかし今は急ぐ」
延暦寺の時と違ってというのだ。
「すぐに終わらせるぞ」
「話をするにしても攻めるにしても」
「どちらにしてもですか」
「そうじゃ、本願寺がおる」
それ故にだというのだ。
「ここはな」
「すぐに終わらせてですか」
「そのうえで本願寺に向かい」
「そして倒しますか」
「うむ、時は残り少ない」
それでだというのだ。
「ここはな」
「本願寺の門徒達が集結する前に」
「あちらに向かってですか」
「そして倒しますか」
「あの者達を」
「高野山も収めねばならんが本願寺はそれ以上じゃ」
門徒達はというのだ。
「だからじゃ」
「わかりました、では」
「すぐに高野山を囲みましょう」
「山の傍に来たところで」
「蟻の子一匹通さぬことじゃ」
そこまでだ。高野山を囲めというのだ。
「それこそ二重三重にな」
「そうして圧力をかける」
「その為にも」
「うむ、ではな」
こう話してだ、そのうえで。
織田軍は高野山のところまで来た、そのうえですぐに信長の命じた通り山を二重三重に囲んだ、そうしてだった。
雪斎は高野山に入った、そうしてまずは山の高僧達の前で一礼してだった。信長からの文を渡し述べたのだった。
高僧達はその話を聞いてだ、まずはこう言った。
「ではじゃ」
「右大臣殿は我等に荘園と僧兵を手放せばか」
「それでよいと申されるか」
「山を降りずともよい」
「そう申されておられるのか」
「はい」
その通りだとだ、雪斎は確かな声で答えた。
「そして荘園の代わりにです」
「檀家を用意してくれる」
「そうだというのか」
「左様です」
その通りだというのだ。
「さすれば殿はです」
「我等を攻めぬか」
「必ずや」
「延暦寺を御覧下さい」
この寺もだというのだ。
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