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剣の丘に花は咲く 

作者:5朗
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第三章 始祖の祈祷書
  第七話 侵攻

 
前書き
コルベール 「し、シロウくん……こ、これは何だい?」
士郎    「ふっ……見られてしまいましたか」
コルベール 「こ、このなめらかなフォルム、滑らかな肌触り……」
士郎    「分かりますか、この凄さが?」
コルベール 「し、信じられない……これはもはや芸術品だよ。これはシロウくんが?」
士郎    「ええ、まあ」
コルベール 「お、お願いだっ! これを譲ってくれ!! い、いくらでも払うっ!! ゆっ、譲ってくれないかね!?」
士郎    「くくっ……好きですね、あなたも」
コルベール 「譲ってくれっ!! この人形をっ!!」
士郎    「ちっっがあああぁあうううぅぅっ!!! これはっ!! フイギュァアアあああだああっ!!」



 見たことがない存在っ! フィギュアッ!! その存在に今までにない驚愕! 興奮!! 感動!!! を受けたコルベールは、士郎に師事を受けることにっ!!? 今ハルケギニアに異界からの新たな風が吹き込むっ!!
 
 燃えっ! 萌えっ!! エロッ!!! 
 
 今ここに第一次フィギュア戦争が始まるっ!! 陰謀! 欲望!! が渦巻く世界でっ! 萌え上がれッ! コルベール!!


 にじふぁんからの読者の方、お待たせしました。これより完全新作となります。
 それでは本編をどうぞ……。



 

 
「なっ、何なんだこれはっ!  す、凄い、何が何だが分からないがとにかく凄いぞこれはっ!」

 コルベールは魔法学院の広場にドラゴンに吊られて現れたものに駆け寄ると、その周りを犬の様にぐるぐると駆け回りながら凄い凄いと言って興奮している。全体を濃緑に塗りつぶされているそれは、明らかに人の手によって作られているにも係わらず、どうやって作られたのか全く想像もつかず、コルベールの知的好奇心を刺激したのであった。
 そんなコルベールの様子に苦笑いを浮かべた士郎が近寄ずくと、士郎に気が付いたコルベールが、好奇心に目を輝かせながら士郎に詰め寄っていく。

「し、シロウ君っ!  い、一体これは何なんだねっ! き、君なら知っているだろう! わ、私に教えてくれないかっ!」
「え、ええ、分かっています。それで少しばかりお願いがあるんですが」
「お願い?」

 訝しげな顔をするコルベールに、後ろでにこにこと笑って待っている竜騎士隊をチラリと横目で確認すると、士郎は頭をかきながらバツが悪そうにコルベールに頭を下げる。

「実は今持ち合わせがなく。その竜騎士隊に払う代金が」
「ん? ああ! そういうことですか。分かりました、私が立て替えておきますよ」

 士郎の言葉にコルベールは快く頷くと、料金の交渉をするために竜騎士隊に向かって歩き出していった。


 試験管や薬品の瓶等様々なものが雑然と広がるコルベールの研究室の中、士郎とコルベールは向かい合って座っている。

「ほう、“ひこうき”と言うのかねあれは。う~む、まさかあれが空を飛べるとは、にわかには信じられないんが、君がそんな嘘をつくはずが無いからね」
「ありがとうございます。それでこれが“飛行機”を飛ばすための燃料です」

 腕を組んでうんうん唸っているコルベールに、士郎はゼロ戦の燃料タンクに微かに残っていたガソリンを入れた壷を手渡した。

「燃料? ふむ……嗅いだ事がない臭いだが、何も手を加えずともこんな臭いがするとは、随分と気化しやすいもののようだね」
「ええ、ですから気を付けてください。それぐらいの量でも火が付けばかなり危険ですから、扱う時は窓を開けて換気に気を付けてください」

 士郎からガソリンが入った瓶を受け取ったコルベールは、まるで犬の様に瓶の中をくんくんと嗅ぎ始めると、時折机の上に在る羊皮紙に何かをメモしている。それを見た士郎は、苦笑しながらも部屋の窓を開け放ち、埃ともカビともつかない、妙に鼻につく異臭が漂う部屋にガソリンの臭いが混じり、さらに混沌とした空気になっていく部屋に新鮮な空気を送りこんだ。 
 そんな士郎の行動に目を向けず、コルベールはガソリンの入った瓶を揺らしたり掲げたりしては、羊皮紙にメモを取り続けている。

「それで、シロウ君。これと同じものを作れば、あの“ひこうき”とやらは飛べるのかね?」

 士郎に顔を向けることなく、コルベールが声を掛けると、士郎は開けた窓を背にして立つとコルベールに顔を向けた。

「ええ、多分ですが大丈夫だとは思います。ざっとですが見た感じでは特に壊れたところはないので」
「いやっ! すごいっ! 調合は大変だろうがやってみようっ!!」

 士郎の返事を聞いたコルベールは『飛行機』が空を飛んでいるのを想像したのか、ますます目を輝かせると、棚から瓶を取り出したり、ガソリンに魔法をかけ始める。
 士郎はそんなコルベールの様子を見ると、口の端に浮かべていた苦笑を少し深くした後、外に出るためコルベールに背を向けて歩き出した。

「シロウ君」

 しかし士郎が入口の近くまで歩いていくと、突然ガソリンが入った瓶を片手に振り返ることもせず話しかけてきたコルベールに対し、士郎は入口に向かう足を止める。
 士郎はドアノブに手を伸ばそうとしていた手を身体に横に戻すと、背後にいるコルベールに振り向きもせずに返事をした。

「何ですかコルベール先生?」
「確か以前、君は自分のことを東方の出身だと言っていたね」

 コルベールの声は妙に平淡な声であり、どのような感情がこもっているのか判断することは出来なかった。 
 そんなコルベールの様子に訝しげな顔をすることもなく士郎は返事を返す。

「それが?」
「いやなに。エルフが治める東方の地とこのハルケギニアは、ここまでの技術の差があるとは思ってはいなかったものですので」
「……俺がいたところは、魔法使いが少なかったので、代わりにそれに代わるものが急速に成長したからだと思います」
「ふむ……そう、ですか」
「……それでは」

 コルベールの声が途切れたため、士郎はコルベールに断りを入れると、ドアノブに手を掛けドアを開けると外に向かう。
 部屋を出ていく士郎の気配を感じたコルベールは、誰に言うともなく小さく呟いた。

「……あれは東方のものだと君は言うが……東方のものにしても、あまりにも異質過ぎるよ……」

 コルベールは士郎が出て行ったドアに顔を向けると、ため息のような声をもらした。

「まるで……別の世界のような……」 


 トリステインの王宮にある会議室では、悲鳴のような意見が飛び交っている。

「アルビオンは我艦隊が先に攻撃したと言い張っておる! だがこちらは礼砲を発射しただけというではないか!」
「偶然の事故が、誤解を生んだようですな」

 何を……

 そんな会議室の上座には、俯いて座るアンリエッタの姿があった。

「何ということだ、早く誤解を解かなければ」
「そうですな、まずはアルビオンに会議の開催を打診しましょう」

 何を言っているのですか……

 アンリエッタはその身体に、本縫いが終わったばかりの眩いウェディングドレスを身に纏っている 
 本来の予定では馬車に乗り込み、ゲルマニアへと向かう予定であったが、予想外の出来事にその予定を取り消し、突如開かれた会議が開かれそれに出席することになったのであった。

「全面戦争になる前に、何とかしなければ」
「だがこちらの話をアルビオンが聞いてくれるか」

 明らかに侵略ではないですかっ!!

 紛糾する会議は国賓歓迎のため、ラ・ロシェール上空に停泊していた艦隊全滅の報と、ほぼ同時にアルビオン政府から宣戦布告文が急使によって届けられたことにより開かれた。
 会議の内容としては、どうやってアルビオンの誤解を解くかということであり、迫り来るアルビオンの艦隊をどうするかについては何も話されていない。
 アンリエッタは紛糾するだけで何も決まらない会議に苛立ちを募らせていると、伝書フクロウによってもたらされた書簡を手にした伝令が、息せききって会議室に飛び込んできた。

「急報です! アルビオン艦隊は降下して、占領行動に移りました!」
「場所は!」
「ラ・ロシェールの近郊!タルブの草原です!」









「お姉ちゃん……」
「大丈夫、大丈夫よ」 

 空から何隻もの船が燃え落ち森の中に消えている光景を見つめながら、シエスタは震えながら兄弟を抱きしめていた。

 一体何が起きているの?

 つい先ほどまではいつも通りであったのだ。外で遊んでいる弟達を呼ぼうと外に出てみると、突然ラ・ロシェールがある方角から爆発音が聞こえてきたのだ。
 村の住人が爆発音に気付き外に出始めてしばらくすると、空から巨大な船が降りてきた。山が飛んでいると見まごうばかりの巨大なその船は、村人たちが震えて見守る中、草原に錨を下ろしてタルブの草原に停泊した。
 巨大な船からは次々とドラゴンが飛び上がっている。

「僕たちどうなるのお姉ちゃん……」

 幼い弟や妹たちが不安そうにシエスタを見上げている。そんな弟たちにシエスタはこわばった笑顔で笑いかける。

「大丈夫よ……さあ、家に入りましょう」

 シエスタは恐怖で叫びだしたくなるのをぐっと堪えると、弟たちを促して家の中に入った。シエスタが家の中に入ると、中ではシエスタの両親が不安げな表情を浮かべながら、食料や服等を袋に入れていた。

「お父さん何しているの?」
「シエスタか、お前も手伝いなさい」

 シエスタがそんな父に声を掛けると、父は焦燥が混じった顔をシエスタに向けると手に持った袋を一つ投げよこす。

「な、何で……?」
「戦争かもしれない、入れられるだけ入れたらすぐにここから離れろ」
「そんな……一体どこが」

 父は忙しなく動かしていた手を止めると、窓から見える草原に停泊した船を睨みつけた。

「あれはたぶん、アルビオンの艦隊だろう」

 父のその言葉にシエスタは驚きの声を上げた。 

「そ、そんな……アルビオンとは不可侵条約を結んだって……」
「しかし可能性としてはそれが一番高い。とにかくどこの国かは関係ない。入れられるだけ入れたら早く逃げろ!」

 父がシエスタに怒鳴った瞬間、艦上から飛び上がったドラゴンの一匹が村めがけて飛んできた。それに気が付いた父は母を抱えると床に倒れ込んだ。その刹那、父の背中を舐めるように熱風が通り過ぎた。
 窓の外では騎士を乗せたドラゴンが村の中に飛んできて、辺りかまわず家々に火を吹きかけている。
 父は痛む背中に顔を顰めながらも、気を失った母を抱きかかえると、尻餅をついて呆然と燃え上がる村の様子を呆然と見つめるシエスタに怒鳴りつけた。

「シエスタっ!! 弟たちを連れて南の森に逃げろっ!!」

 アルビオンのタルブ村への占領行動を告げる伝令を皮切りに、次々と暗い報告が飛び込んできた。

「タルブ領主、アストン伯戦死!」
「偵察に向かった竜騎士隊全滅しました!」
「アルビオンからの問い合わせへの返答未だありません!」

 それでも会議室は、未だに何の決定も出されてはいなかった。

「ゲルマニアへ軍の派遣を要請しましょう!」
「それでは時間がかかりすぎる!今ある戦力だけでもタルブへ向かわせたほうが」
「いかんっ!軍を派遣して攻撃を仕掛けたら、それこそアルビオンに全面戦争の口実を与えるだけだぞ!」
「いやしかし―――」
「だが―――」

 一向に意見がまとまらず、何も決定できない会議をアンリエッタは苦々しい顔を向ける。
 こういった際、頼りになるはずのマザリーニも、外交で解決を望んでいるため結論を出しかねていた。
 怒号が飛び交う会議室の中、アンリエッタは一度目を伏せ薬指に嵌めた“風”のルビーを見つめた後、決意を秘めた眼差しを今だに何も決められない大臣達に向け勢い良く立ち上がる。
 音をたて立ち上がったアンリエッタに会議室中の視線が集中した。その視線に睨みつけるような視線で答えたアンリエッタは、胸を張って怒りが滲んだ声で言い放った。

「あなたがたは恥ずかしくないのですかっ!!」

 アンリエッタの怒号により会議室が一瞬静まり返る。
 そんな初めて聞くアンリエッタの怒声に驚き静まる中、一人の大臣が恐る恐るアンリエッタに声を掛けたが、アンリエッタは怒りに真っ赤になった顔を声を掛けてきた大臣に向けると堂々と応える。

「ひ、姫殿下?」
「今この瞬間にも国土が敵に侵されているのです! 同盟だ特使だと騒ぐ以前にすることがあるでしょうっ!!」
「し、しかし……姫殿下……これは誤解から起こった小競り合いですぞ」
「そう思う者は今この場で辞職しなさい。どこが誤解から起こった小競り合いですかっ! 考えてもみなさいっ!」

 アンリエッタは右手をテーブルに叩きつけると、呆然としている大臣達に向かって大声で叫ぶ。

「アルビオンとは不可侵条約を交わしてはずです!それにもかかわらずかの国は礼砲で艦が撃沈されたなどという、明らかな言いがかりで我が国を攻めています! しかも短時間の内にタルブ村に攻め入れるほどの戦力でもって! どう考えても前もって予定されていたことだと考えられるでしょうっ!!」
「し、しかし……」

 アンリエッタの怒声を聞いても、なおも何とかすがろうとする大臣にアンリエッタは軽蔑の眼差しを向けると、先ほどとは正反対の冷ややかな声で大臣達に言い放つ。

「わたくしたちがこうしている間にも、民たちは血を流し、兵は死んでいっているのですよ。このような危急の際に、何もせずこうして会議室で意味のない話し合いをするものに、貴族を名乗る資格はありません。わたくしは王族を名乗る者の一人としてその義務を果たしにいきます」

 アンリエッタはそう言い放つと、白いウェディングドレスを翻すと大臣達に背を向けて歩き出した。

「ひ、姫殿下っ!! お、お待ち下さい! お興入れ前の大事なお体ですぞ!」
「どきなさいっ! もうっ走りにくい!」

 会議室から出ていこうとするアンリエッタをマザリーニや何人もの貴族が押し止めようとしたが、アンリエッタはそんな貴族達に怒鳴りつけたかと思うと、ウェディングドレスの裾を膝上まで引きちぎった。 そして、その引きちぎったウェディングドレスの裾を後を追いかけてくるマザリーニの顔に投げつけた。

「ゲルマニアと婚姻関係になりたいのならあなたが結婚なさればよろしいわ!」

 宮廷の中庭に出たアンリエッタは、大声で近衛兵を呼ぶ。

「近衛! わたくしの馬車を連れて参りなさい!」

 王女の声に近衛の魔法衛士隊が聖獣ユニコーンが引く馬車を連れ王女の前に現れると。アンリエッタは馬車からユニコーンを一頭外し、軽やかにその上に跨った。

「これより全軍の指揮をわたくしが執ります! 各連隊を集めなさい!」

 アンリエッタの声に、今この国の置かれている状況を知っていた魔法衛士隊の面々が一斉にアンリエッタに敬礼した。
 ユニコーンはアンリエッタに腹を叩かれ走り出した。
 その後を幻獣に騎乗した魔法衛士隊が大声で叫びながら続く。

「姫殿下に続け!」
「続け! 姫殿下に遅れれば家名が泣くぞっ!」

 アンリエッタの後ろを次々と貴族達は追いかけていく。
 そんな光景をマザリーニは複雑な表情で見つめていた。
 いずれアルビオンとは戦になるとは思っていたマザリーニであったが、国内の準備が整っていない今では戦っても負けるため、どうしても回避したかったのであった。
 だが…… 

「しかし、姫殿下の言うとおりだな」

 そう……どうしても戦争が回避できない今、あんな無駄な会議をする前にすることがあったのだ。

 天を仰いで目を閉じているマザリーニに、一人の高級貴族が近づいて耳打ちをする。

「枢機卿、特使の派遣の件ですが……」

 マザリーニは話しかけてきた貴族の顔に被った球帽を叩きつけると、アンリエッタが自分に投げつけたドレスの裾を頭に巻き。

「おのおのがた! 姫殿下一人を行かせたとあっては、我ら末代までの恥ですぞ!」

 後ろを振り向き訴えかけると、マザリーニはアンリエッタに向かって駆け出していった。
 
  
 
   
 

 
後書き
アンリエッタ 「萌え系フィギュア百体完成っ! 早く店に出しなさいっ!!」
士郎     「クッ! さすが大手は地力が違う……だがっ! まだだっ! まだ終わらんよっ!!」
アンリエッタ 「ちっ……さすがは『無限の萌製』のエミヤと言うところか……個人でありながらこの作成速度……奴は化物かっ!?」
士郎     「やられはせんっ! やられはせんぞおおおォォォォッ!!!」
アンリエッタ 「くっ、まだ粘るか、ちっ、何やってんの! エロ系フィギュア品薄だよっ!!」
士郎     「俺は欲望を殺さない……その奥の萌えを打ち抜くッ!!!」

 ますます戦争は加熱する!! 萌え上がる欲望っ!! 飛び交う紙幣(弾丸)ッ!!
 世界に満ちる萌えを撃ち抜けッ!! エミヤシロウッ!!!  
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