魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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ようこそ☆ロキのロキによるお客様のための遊戯城へ~Ⅳ~
†††Sideルシル†††
身長1mくらいの二頭身となったシグナムとアギト、キャロとティアナ、そしてレヴィ。シグナムとアギトは、はやてとシャマルやリインにいいようにされ困惑。半分不機嫌半分嬉しそうだ。レヴィはルーテシアに、キャロはフェイトに「可愛い❤」と揉みくちゃに。
ティアナは、スバルに「ティア、お人形みたいでカワイイ!」と全力の抱きつきと頭撫でまわしを受け、「ちょっとやめなさいよ、スバル!」と振り払おうとするが、体格差と腕力で負けているせいでパタパタ四肢を振るうだけで終わっている。
「では、お次はどなたが賽を振りますか?と、その前に。一つ提案があるので、聞いていただけませんか?」
私の隣に立つセシリスが軽く挙手しただけで、離れた場所にいるコロナとリオがビクッと身構える。それにセシリスがショックを受けたようで、私をチラチラ見てくる。カーネルと同様、自業自得だ。少しは手加減くらいしておけばよかったものを。という事でそっぽを向いてやる。横目でチラリと見ると、「フォロー無しなんて酷い」と項垂れた。
「それで、セシリスさん。提案というのは?」
「あ、そうでした。一人一人賽を振っていてはあまりにも時間がかかりますから、チーム分けをしようと思います」
先を促したなのはに、セシリスは復活してそう答える。ヴィヴィオも首を傾げつつ「チーム分け、ですか? でもどうしてですか?」とそう続く。セシリス曰く、「天の意思です」だそうだ。よく意味は解らんが、時間がかかるのもまた事実。
「私はそれで良いと思うが。みんなの意見はどうだ?」
「サクッと終わらせて現実に帰らねぇとな。あたしはセシリスの案に賛成だ」
「ルシリオンが決めたことならば従おう。好きなようにしてくれ、私を」
八神家代表ヴィータとリエイス(はやてはシグナム達に夢中で聞いてないからな)の了承は得た。リエイスは少々おかしな発言をしていたが、そこの辺りはスルーさせてもらおう。
「ヴィヴィオ、アインハルト、コロナ、リオ、イクス。君達はどうだ?」
キャロとレヴィの元でたむろしていたヴィヴィオ達に声をかける。私に声をかけられるなんて思いもしなかったのかキョトンとして、一泊遅れて自身を指差す。そうそう、と頷き、彼女たちのところにまで歩いていく。
「巻き込んだ形となってしまったが、それでも今は一緒に戦う仲間だ。仲間である君たちの意見を聞く。おかしなことはないと私は思うんだが? なのは達は私の考えについてはどうだ? 私は間違っているだろうか?」
「ううん。ルシル君と同じ意見だよ。ヴィヴィオ、それにアインハルトちゃん達も、何か意見があったらなんでも言ってね」
私はセレスやリエイスと一緒にインターミドル予選から観戦していたようだが、当然記憶操作されていた頃だ。サフィーロとしての仮人格が観戦していたため、全く記憶にないんだが。
「んー、じゃあ。わたしもセシリスさんの提案を呑んでもいいと思う。みんなはどうかな?」
ヴィヴィオがリーダーとなり、アインハルト達へ決を採る。アインハルトの「私もそれで構いません」という返答を筆頭に、コロナもリオもイクスも賛成の意を告げていく。二頭身キャロを全力で可愛がっていたフェイトも、「私も賛成。エリオとキャロはどう?」と決を採り、「僕もそれで良いです」「早くクリアした方が良いもんね♪」とエリオとキャロも賛成。
「セシリス。そういうことだ。チーム分けとやら、受け入れる」
「感謝を、みなさん。ありがと、ルシル。では早速チーム分けを」
サイズが少しおかしい回転式抽選機(商店街のくじ引きでよく見かけるアレ)がドンと出てきた。
「ではお一人ずつ回してください。赤の玉が出た方は赤チーム、青の玉が出た方は青チーム、黄の玉が出た方は黄チームとなります。ゲームはこれより個人個人ではなくチームで進行することになり、手間が色々と省ける、ということで」
セシリスの説明も終わり、抽選機へとヴィヴィオら子供たちがどこか楽しそうに喋りながら真っ先に並び始めた。それに微笑む私たち大人。私たちも並び、抽選機をガラガラと回す。ちなみに取っ手に届かない二頭身sは、シグナムははやて、アギトはシャマル、キャロはフェイト、ティアナはスバル、レヴィはルーテシアが脇に手を通して抱きかかえる。そして、3チームのメンバーが決定。
「随分と何らかの意図が働いているようなメンバーだな」
「はぁ、私はルシルと一緒じゃないんだね・・・orz」
フェイトが引くほど落ち込んでいる。私とは別のチームになったからだが。でもそれはとても嬉しいことで。頬が緩むのを止める事が出来ない。フェイトの頭にポンと手を置き、「ありがとう、フェイト」と撫でる。「えへへ❤」と、それだけで機嫌が良くなるフェイト。撫でられるのってそんなに良いものなのか? 自分の手で頭を撫でてみるが・・・・よく判らないな。
「何してるのルシル? 撫でてほしい? だったら撫でてあげる❤」
セシリスは「んー」と頑張って背伸びして、不器用ながらも私の頭を撫でる。うーん、まぁ気持ち良いな。それは確かだ。するとフェイトが「わ、私も撫でたげる」とこれまた頑張って背伸びして、私の頭を撫でる。
「ど、どうかな? 気持ちいい?」
「あ、ああ。フェイトは撫でるのが上手いな」
セシリスとは違う気持ちよさ。セシリスの撫で方も気持ち良かった。だがフェイトのはもっと良かった。っと、みんなからの視線が気になり始め、フェイトは「あ」と少し頬を赤らめて手を引っ込めた。するとリエイスが大股早歩きで近づいてきて、セシリスやフェイトのように「むー」と背伸びして頭を撫でてきた。
「うむ。満足だ。話を進めてくれ」
リエイスはそう言ってはやて達八神家へと戻っていった。微妙な空気が流れているな。
「あー、コホン。ちょうどいい感じにリーダーが判りやすく分かれているな。じゃあ、赤チームリーダー・はやて、青チームリーダー・なのは、黄チームリーダー・フェイトの元へそれぞれ集合だ」
手をパンパン叩き、チームごとで集合するよう仕切る。
赤チームは、はやて・リイン・イクス・シグナム・アギト・ルーテシア・レヴィ。
黄チームは、フェイト・エリオ・キャロ・シャマル・スバル・ティアナ・ザフィーラ。
青チームは、なのは・ヴィヴィオ・アインハルト・コロナ・リオ・ヴィータ・リエイス、そして私だ。
「それではゲーム再開と行きましょう。どのチームが一番手になりますか?」
フェイトとなのはとはやては何を言うまでもなくジャンケン。その結果は、「青チーム、ということで」となのはがチョキのまま挙手。なのはが青チームリーダーとして、セシリスからサイコロを受け取る。「いきます」と決意に満ちた顔でサイコロを放り、出た数字は3だ。
青チームの私たちは、赤チームと黄チームのメンバー達にそれぞれ「行ってきます」と告げ、なのはとヴィータを先頭に、ヴィヴィオ達、そして最後尾が私とリエイスと続く。3マス目に辿り着く。と、早速ゼフィ姉様のハイテンションなアナウンスが流れる。
『大変大変! 危険生物が逃げちゃったよっ! みんなで協力して、危険生物を捕まえよう! オォーッ!』
ちょっとした戦闘があるかもしれない事を示す内容だった。転送が始まる中、メンバーを見回す。アンスールメンバーでない以上、このメンバーなら余程の事がない限り負けるはずもない。なら、このお題は必ずクリアしてくれる。二頭身の人形みたいな姿にされてなるものか。
†††Sideルシル⇒アインハルト†††
転送された先、そこは青空の広がる平原でした。少し離れたところにはとても大きな城がそびえ立っているのが見えます。それにしても、さわやかな風が心地よくて、空から降り注ぐ温かな陽光も手伝って眠くなりそう。
「ここは・・・グラズヘイム城の北庭園か・・・!」
リエイスさんがそう言って、ヴィヴィオさんのお父様へと向き直る。
「ああ。間違いないな、私の城の庭だ」
ここが、ヴィヴィオさんのお父様の城!? そう言えば、地帝カーネルさんはヴィヴィオさんのお父様をジンギ王などと呼ばれていましたけど・・・。
「えっ!? ここってルシリオンさんのお城なんですかっ!?」
「もしかしてすっごいお金持ちだったりします!?」
コロナさんとリオさんに詰め寄られたヴィヴィオさんのお父様は、「元、だけどね」と寂しそうなお顔で苦笑い。ここで先程までの疑問を思い出す。知らない魔法陣に言語。普通では考えられない現象を起こす魔法の数々。ヴィヴィオさんのお父様、カーネルさん、そしてセシリスさん。どれだけ強い魔導師であっても一人で起こすことがまず不可能な魔法を、何の苦もなく連発するあの発動の速さ、そして異常な威力。
「ルシル君、危険生物っていう話だけど、何か心当たりは?」
「心当たりが多すぎて困るな」
「どんだけ危険なサファリパークなんだよ、おまえんち」
リオさんの二つの変換資質にも驚きましたが、ヴィヴィオさんのお父様の変換資質はそんな比ではなかった。電気、炎熱、氷結。それだけでなく影のようなモノまで。それを同時に扱ってました。多くの謎がある方々です。私は意を決して、先程の聞きそびれたお話の続きを聞きたいがために、
「ヴィヴィオさんのお父様。先程のお話の続きをしてもらっても構いませんか?」
「あ、私も知りたいです。教えてもらってもいいですか?」
「あたしもあたしも! ヴィヴィオは知ってても当然だけど、イクスも知ってるみたいだし」
コロナさんとリオさんもヴィヴィオさんのお父様に歩み寄る。そこにヴィヴィオさんが「えっと、とりあえずはお題をクリアした方が・・・」と言い、なのはお母様とヴィータさんもそれに同意しました。
「そうだな。アインハルト、コロナ、リオ。私の事に関しての話は、お題を行いながらでいいか?」
「あ、はい。ヴィヴィオさんのお父様がそれでよろしければ」
コクリと頷く。話はお聞きたいですけど、お題のクリアを邪魔するのは嫌ですし。ですからそう答えたのですが、ヴィヴィオさんのお父様は左手を顎に当て考え込み始めます。
何か失礼な事を言ってしまったのでしょうか? 心配になり、ヴィヴィオさんに「何か失礼なことを・・・?」と小声で訊ねる。ヴィヴィオさんは「大丈夫ですよ、アインハルトさん」と笑みを浮かべるだけでした。
「アインハルト。私に対するその、ヴィヴィオさんのお父様、という呼称。以前の通信の際でもそうだったが、毎回は面倒じゃないか? 気軽にルシルと呼んでもらっても構わないぞ? コロナとリオもだ」
力なく「はあ」と応えてしまう。あの、真剣な風に考え込んでいたものですから拍子抜けを。コロナさんとリオさんは「判りました、ルシルさん!」と、素直に受け入れて早速呼んでいる。あとは私だけ。えっと、ルシルお父様? それはさすがに照れくさい気が。
妥協案として「ルシリオンお父様・・・」と呼んでみる。これもこれで照れてしまう。ルシリオンお父様は「ああ。改めてよろしくな」と、私とコロナさんとリオさんに笑みを返してきました。それから私たちは周辺の探索を行いつつ、ルシリオンお父様から色々と話を聞いた。
「再誕神話、というものは知っているかい?」
事情を知らない私とコロナさんとリオさんは首を横に振る。
「再誕神話は、今から数千年以上前、次元世界誕生のきっかけ、千年以上続いた世界魔道大戦を神話化したものなんですよ」
ヴィヴィオさんが腰まで伸びる草を掻きわけながら教えてくれました。強い引っかかりを憶える。次元世界誕生。神話化した。それはつまり実際に起こったという事、なんでしょうか?
「あはは、信じられない、といった感じだな。まあ当然の反応だが。ヴィヴィオの説明通り、再誕神話には、次元世界という仕組みを創り出したファクターが記されているんだ。次元世界。元々は全ての次元は一つで、単一世界と称されていた。だが大戦の終戦と同時に起こったラグナロクによって次元は分断され、現在の次元世界という形になってしまった」
事情を知るなのはお母様とヴィータさん、そしてリエイスさんも真剣な面持ちで聴いている。そこには私たちに嘘を吐こうとか騙そうという雰囲気は一切感じられません。再誕神話。それが本当の事だと考えて話を聞かないといけないようです。
「でも、ルシルさんとその再誕神話って関係あるんですか? 数千年前の話なら、今のルシルさんとあまり関連が見えないんですけど・・・」
私と一緒に木々の枝の上を見上げるコロナさんが言いました。私は、自身の事とヴィヴィオさんの事を思う。ヴィヴィオさんは、かつての聖王オリヴィエをオリジナルとしている複製体。私も、覇王家直系の子孫、そして覇王イングヴァルトの記憶と覇王流を引き継いでいる。ルシリオンお父様も、もしかするとそういう類いの御方では・・・?
「ここからが、さらに信じられない話だと思うが、聞いてくれ。再誕戦争は千年続いた大戦を本題としたものだ。で、大戦には大小600の世界が参加していた。その大戦の中心は、アースガルド、ムスペルヘイム、ニヴルヘイム、アールヴヘイム、スヴァルトアールヴヘイム、ニダヴェリール、六世界のアースガルド同盟軍。ヨツンヘイム、ヴァナヘイム、ウトガルド、スリュムヘイム、そしてミッドガルドのヨツンヘイム連合軍。この十一の世界だ」
「ニダヴェリールとムスペルヘイムって、カーネルさんとセシリスさんの・・・」
それもですけど、ミッドガルド・・・。ただ似ているだけ? ミッドチルダと。ルシリオンお父様はリオさんに「実は私の名前、本当はルシリオン・セインテスト・アースガルドなんだ」と言いました。それが示すのは、やはりルシリオンお父様は、再誕神話時代の世界の子孫。ルシリオンお父様が続きを話すべく口を開こうとしたとき、
「ゥゥオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
何かしらの咆哮が轟いた。私は身構え、周囲を警戒。何かに遮られているのか辺りは暗くなる。空に何かいる・・・? 私たちは一斉に空を見上げる。とそこにソレは居た。巨大な黒い影が落ちてきて地面に降り立つ。それは巨大な漆黒の狼。あまりの大きさに、私は息を呑む。
「フェ、フェンリル・・・!」
ルシリオンお父様が絶句。フェンリル。昨日、私たちが演じた劇の中で登場した名前。コロナさんも気付いて、「フェンリルって、演劇の・・・」と劇に参加した私たちを見ます。なのはお母様が「危険生物って、まさかフェンリルさんの事?」と、ルシリオンお父様へ駆け寄りました。ルシリオンお父様もなのはお母様もフェンリルの事は御存じのようです。
「なるほど。確かにフェンリルは危険生物だな」
ルシリオンお父様は小さく呟いて、呆れた風に溜息を吐きました。余程、別の意味で危険な狼のようです。
†††Sideアインハルト⇒ヴィヴィオ†††
ルシルパパとなのはママにフェンリルと呼ばれた大きな狼。“スヴィーウルの詩”の話に出てきていたキャラクターの1つだ。“スヴィーウルの詩”は、ルシルパパが子供の頃のお話だってルシルパパから聞いてる。
それにしても、フェンリルって実際に見ると大きい、本当に大きい。フェンリルは凄く綺麗な女の人の声で「我が名はフェンリル。此度、汝らのお題とやらを手伝うことになった」って言って、全身が光に包まれてく。
そして、
「マァ~~スゥ~~タァ~~~❤」
まだ消えない光の中から、若い女の人が飛びだしてきた。足首にまで伸びる艶やかな黒い髪、蒼い瞳、真っ白な肌、真黒なフリルとレースがたくさんあるドレス姿。頭の上にはピンッと立った犬耳、お尻にもフサフサした尻尾があって、勢いよく振られてる。その女の人が勢いよくルシルパパの胸に飛び込んでいった。
「マスター❤ マスター❤ マスター❤ マスターの匂いだぁ~~~❤ はわぁ~~❤」
女の人がものすごい勢いで頬擦りしてる。フェイトママが見たらどうなるんだろ?
ルシルパパが「とりあえず、さっさと離れろフェンリル」って女の人フェンリルさんの顔を掴んで押し返す。さっきまでの堅苦しい口調が嘘みたいに子供っぽい口調になって、「ふはぁ、満足ぅ~♪」ってうっとりしてる。
「さて。改めて名乗るね。私はフェンリル。マスター・ルシリオンの使い魔ね♪ 気軽にリルちゃん❤って呼んでね♪っと、えーお題は、私を捕まえるって事でいんだよね。ルールの説明をするから、かる~く聞いてちょうだい」
ルール説明を軽く聞いてって。う~ん、やっぱりちゃんと聞いた方がいいんだよね?
ルシルパパを見ると、「すまないが少し付き合ってやってくれ」ってすまなさそうに頭を下げた。ルシルパパ、昔、リルちゃんに苦労させられたんだろうね。何か想像できるよ。リルちゃんは尻尾フリフリしながら説明を続ける。
「今から100個の箱を用意します。私がその内の一個に入って隠れるの。で、マスターたちは頑張って私が隠れてる箱を見つけて、私を捕まえてください。あ、見つけても油断しないこと。大人しく捕まるような私じゃないので、私の居た箱からみんなが開けちゃったハズレ箱へ移動しちゃいます。
そしてシャッフル、振り出しに戻っちゃうってわけなの。だから可能な限りハズレを開けないようにしないと、延々かくれんぼ&鬼ごっこが続くよ。それが嫌なら、箱から箱へと移動中の私を妨害・・・ま、攻撃ありって事で」
それでルール説明が終わったようで、リルちゃんが「何か質問があったら受け付けるよ?」ってわたし達を見回す。ルシルパパが「フェンリル」って挙手すると、リルちゃんは「下着の色? 今日はね~♪」とか言い出して、すぐにルシルパパから「そのネタは古い」って拳骨を喰らってた。
「お前への攻撃はありらしいが、お前からの反撃はどうなんだ? 正直な話、お前の実力はアンスール並に高い。反撃などされては敵わん」
「あー、えっと、出来る限り攻撃はしないけど、防御はさせてもらうから。だって一切の防御もしないでマスターの攻撃を受けてたら、私・・・」
リルちゃんはなんか頬を赤らめて、恥じらいながら自分の体を抱いた。あ、何か嫌な予感。ルシルパパはすでにリルちゃんを叩く体勢に入ってる。リルちゃんはそれも構わずに「服が破けて乙女の柔肌を晒しちゃう、キャ❤」って両手を頬に当てて、イヤンイヤンって首を横に振り続ける。ルシルパパは「さ、ゲームを始めようか、みんな」って無視をしちゃった。
「・・・マスターが冷たいよぉ。でもそろそろ始めないとダメだよね。じゃあ・・・ゲームスタンバイ!」
リルちゃんが右腕を頭上に掲げて高らかに叫んだ。その直後、目も開けていられないほどの突風が起こって、ルシルパパとリエイスさん以外のわたし達は「きゃぁぁあああっ!」って悲鳴を上げて、めちゃくちゃに乱れる髪を押さえちゃう。
そこでふと気付く。ルシルパパは防護服のスラックス。リエイスさんは騎士甲冑のタイトスカート。なのはママとヴィータさんは防護服のスカート。わたしとアインハルトさんとコロナとリオは私服のスカート。そしてこの突風。私が押さえてるのは髪。ハッとして、急いでスカートの裾を押さえる。突風が止んで、ようやく目を開ける事が出来た。
「ねぇ、ルシル君。見た? 見たよね? うん、信じてるよ」
なのはママが、わたし達を見ないように上を見上げてるルシルパパにニコニコ笑いかけてるんだけど、こ、怖い・・・。ヴィータさんも「あーあ、やっちまったな」って“アイゼン”を起動させようとしてる。アインハルトさん達もスカートを押さえたままで、ルシルパパにスカートの中が見られた事が判って顔を赤くしてる。きっとわたしも赤くなってるかも。ちょっと顔が熱いし。
「ま、待て。不可抗力だ。み、見たのも最初だけで、すぐに上に視線を移した」
「じゃあ見たんだよね」「見ちまったんだよな」
「私もひらひらスカートにすればよかったな」
なんかリエイスさんだけおかしなことばっかり言ってるような気が。とにかく今は、全然笑ってない笑顔でルシルパパに詰め寄ってくなのはママ達を止めないと。ルシルパパだってわざとじゃないんだし。わたしと同じ事を思ってくれたアインハルトさんも、なのはママ達を説得しようと動いてくれた。だけど止めに入る前に、
「サクッとゲームを進めたいから、もう始めちゃうよ」
――仔狼モードにチェ~ンジ♪――
リルちゃんがまた光に包まれて、次に姿を現したら仔犬みたいになってた。さすがになのはママ達もリルちゃんが動きだした事で、ルシルパパを許さざるを得ない状況に。全員がリルちゃんを見る。そしてわたし達の周囲、広範囲にポツンポツンとある宝箱のような箱にも。さっきの突風でここまで飛んできたみたい。リルちゃんが「わんっ」って一鳴きすると、全ての箱の蓋が一斉に開いた。
「じゃあ、ゲーム・・・」
――RAD(ラド)――
リルちゃんの目前にRのような文字が浮かび上がった。そして四肢に力を込めて、「スタート!!」と、フェイトママのブリッツアクションみたいな速さでどこかの箱に入りこんだ。そしてまた突風が。今度はすぐにスカートを押さえて収まるまで耐える。うっすらと目を開けると、ルシルパパが必死に両手で顔を覆いながら、100個の宝箱と一緒に風に飛ばされてた。目を隠すのに集中し過ぎて、踏ん張りきれなかったみたい。
(ルシルパパ・・・・ごめんね?)
風が止んで、ルシルパパは三つの箱に押し潰されるように落下。激突直前に何とか抜け出して、両足で着地。何事もなかったようにわたし達に背中を向けた。
†††Sideヴィヴィオ⇒なのは†††
“闇の書事件”でお世話になったフェンリルさんを捕まえる事になった。とりあえずルシル君にデコピンのお仕置きをヴィータちゃんと一緒に済ませて、作戦会議。
「セオリーで言えば、分散して捜しだすのが一番だが・・・」
「あまり箱を開け過ぎると、その分リルちゃんの逃げ場を作っちゃうんですよね?」
「リエイスとコロナの言う通りだな。つっても開けなきゃ捜せねぇし。この数じゃ待ち構えんのもムズいし。どうするよ、セインテスト。フェンリルの思考はお前がよく知ってんだろ。お前の使い魔だし」
「アイツの思考を完全に読むなんて神でも無理だ。私がどれだけ苦労したか」
ルシル君が袖で目を何度も拭う仕草をする。記憶の中じゃそういうのは無かったから判らないけど、かなり苦労したっぽい。
「とにかく、だ。まずは様子見。適当にやってみよう。感覚を掴まないと対策も立てられない」
「私もルシリオンお父様に賛成です。リルさんがどういった風に動くのか見ておきたいです」
「それじゃあそれで行こうか。ヴィヴィオ、コロナちゃん、リオちゃん、アインハルトちゃん。みんな、防護服着用。どんなことにもすぐに対応できるように、ね」
「「「「はいっ!」」」」
「クリス!」
「ティオ!」
「ブランゼル!」
「ソルフェージュ!」
「「「「セーットアップ!」」」」
ヴィヴィオ達が防護服を着用し終え、一番近くにある箱に歩み寄る。で、誰が開けるかなんだけど。全員が全員の顔を見回す。そしてある一人に集中。
「ま、男の私が行くべきだよな。判っていたさ。言いだすタイミングを逃しただけだ」
そう、ルシル君だ。この青チームで唯一の男性。こういう場合でのレディファーストなんて言わせないよ?
ルシル君が箱の蓋に手をかける。そこにリエイスさんが「私も付き合おう」ってルシル君の横に並んだ。頷き合って、ガッと箱を開けた。その瞬間、箱の中からボクシンググローブ2つが勢いよく飛び出してきた。ルシル君とリエイスさんが首を逸らして避け・・・あ。
「「い゛っ――へぶっ!?」」
ルシル君は右、リエイスさんが左へと同時に首を逸らした事で頭がゴチン☆と衝突、すぐさままともに顔面にパンチを食らっちゃった。どうして逆に避けなかったのか。パンチはそれをさせないような軌道で飛んできたから。どれだけの威力だったのか二人は空高く舞い上がって、ドベシャって落ちた。
「ぅぐ、パンチ事態は痛くはないが、ルシリオンの頭突きは効いた・・・(涙目)」
「ハズレだから何も無い、と思ってはいなかったが、やはりこういう類いのトラップがあったか・・・」
ぶつけた頭を押さえて、呻きながら立ち上がるルシル君とリエイスさん。思いっきりぶつけてたし、それは痛いよね。ヴィヴィオ達とヴィータちゃんに心配されながら、ルシル君とリエイスさんが戻ってきた。
「つ、次は・・・なのは、ヴィータ。大人の君たちが開けるべきだよな」
「そうだな。子供にさせるようなことではないな」
ちょ、ちょっとルシル君、リエイスさん、目が据わってるよ? ジリジリとにじり寄ってきて、ルシル君が私の肩を、リエイスさんがヴィータちゃんの肩をポンと叩いた。でも一理あるのかな? チラッとヴィータちゃんを見る。すると「しゃあねぇな」って肩を竦めながら歩きだして、閉じられた箱へ向かう。私たちも続いて、私はヴィータちゃんの隣へ。ヴィヴィオ達はルシル君とリエイスさんが守るように一番後ろ。
「開けるぞ、なのは。覚悟はいいな?」
「いつでもいいよ」と答えて、一緒に蓋に手をかける。「せぇーのっ」と警戒しながらも勢いよく開く。するとモクモクと煙が出てきた。バックステップで後退。その煙の中から、大きく真っ白なユキウサギが二羽出てきた。
「「「かわいい❤」」」「可愛いですね」
ヴィヴィオとコロナちゃんとリオちゃんが黄色い声を上げる。アインハルトちゃんもほわぁっとなってるね。うん、確かに可愛い・・けど。ドスンドスンと二足歩行で歩いてくるんですけどっ? これは逃げちゃダメなんだよね? 反撃しそうになるのを耐えて、ただじっと待つ。2m近いユキウサギが前脚をバッと広げて、
「「わふっ?」」
いきなりのハグ。わっ、フカフカだぁ❤ 背中に回された前脚がポンポンと優しく叩いてくる。もしかして私たちもユキウサギの背中に手を回さないとダメって事?
これはハズレじゃなくて別の意味でのアタリかな。私も腕を背中に回して、フカフカの背中をポンポンと叩く。このフカフカ加減がなんとも。夢心地でいると、ちょっと息苦しくなってきた。ハグの力加減が強くなってきた? 離れようと動くけど無理。
――ベアーハッグ――
「あがっ!?」「ぐへぇっ!?」
ヴィータちゃんと二人して呻き声を漏らしてしまう。ユキウサギが一気に力を強めてきた。思いっきり締めつけられてる。これ、子供の頃、シャルちゃんがアイアンクローと同じようにやってきた・・・
「ベ、ベアーハッグ・・・! 痛たたたたたたたたっ!」
今の私はかなり海老反ってる。背骨や肋骨がミシミシ軋みを上げて・・・る。横ではヴィータちゃんが「ギブギブギブギブギブっ!」ってユキウサギを思いっきり殴ってる。ま、まずい。窒息しそう。胸が潰されて息が出来ない、けほっ。私もユキウサギの背中を全力で殴り続ける。そうしてユキウサギが煙となって消滅、やっと解放された。
「はぁはぁはぁ、死ぬかと思った」
「二個目でもう挫けそうだ」
「なのはママ、大丈夫?」
「ヴィータはなのはより胸が無いから、さほど苦しくはなかっただろ」
「うっせぇよっ、リエイス! なのはもテスタロッサもデカくなりやがってよっ! 大きけりゃいいってもんじゃねぇんだよっ。それに無くても十分苦しかったっつうの!」
「ちょっ、ヴィータちゃん! やめっ、あん❤」
「ヴィータ。私の胸はお前に揉まれるためにあるのではないぞ?」
「くっっそぉ、久しぶりに触ったけどめっちゃ柔らけぇっ! なんだよコレ!」
何を思ったのかヴィータちゃんが私とリエイスさんの胸を揉んできた。男のルシル君が居るのに酷過ぎる! 問題のルシル君は、
「さて、次は誰が行こうか? あそこのお姉さん達はちょっと忙しそうだから、先に行って箱を見てみよう」
ヴィヴィオ達を連れて別の箱のところへ移動中。思いっきりスルーされてる!? 助かるような、でももう少しリアクションがあってもいいような。何とかヴィータちゃんの行為をやめさせて、ルシル君たちを追いかける。
「待たせたな。それで、今度はそれを開けるのか?」
ルシル君たちはすでに狙いを定めていて、一つの箱の前に並んでいた。
「うん。みんなで決めたから。あ、開けるのもわたし達がやりますっ」
「私たちは仲間なのですから、子供だからと言ってやらないわけにはいきません」
「うんっ。なのはさん達にばかり任せるわけにはいかないもんね」
「そうゆうことですっ。なのはさん達は見ててくださいっ」
そこまで決意が固いんなら、見守るのが大人、だよね? ルシル君たちを見てみる。ヴィータちゃんは「ま、見せてもらおっか」って見物モード。
リエイスさんも「フォローが必要だと判断すれば手伝えばいいだろう」と同じく見物モードになっちゃってる。
「なのは。彼女たちの意思を尊重しよう。なに。それほど危ないトラップはないだろ」
「うん・・・。じゃあ任せるね」
私も見物モード。万が一のためにすぐに動けるように力を抜かない。ヴィヴィオ達が箱の蓋に手をかける。私の隣にいるルシル君がいつでもフォローに入れるように身構えるのが判った。
「「「「開けます」」」」
ガチャリと音を立てて開く蓋。そして勢いよく開け放つ。箱から何かが飛び出してきた。ヴィヴィオ達はすぐさま飛び出してきた何かを迎撃。ボチャッと地面に落ちる何か。ものすごい見憶えのあるソレ。子供の頃、アリサちゃんの家でやったゲームに出てきた、それは有名な植物。
「「「パックンフ○ワー・・・」」」
丸く大きな赤い頭に白い斑点模様。大きく開く口にはギザギザの歯が並んでるアレ。ガジガジしてるパ○クンフラワーを初めて見たヴィヴィオが「気持ち悪い」って引いてる。
「なぁ。こういうのって避けていいもんなのか?」
ヴィータちゃんがパックン○ラワーを興味深そうに眺めながら漏らす。どうなんだろう? さっきの私とヴィータちゃんは何もせずに耐えたけど。ヴィヴィオ達に迎撃された○ックンフラワーがしおしおと枯れていくのを見ていると、
「「っ!」」「「みぎゃっ!?」」
ヴィヴィオとアインハルトちゃんが立っていた場所から勢いよく跳び退いた。そしてコロナちゃんとリオちゃんの頭には、コントの様な金タライが落下。ゴワン、と音を立ててコロナちゃんとリオちゃんの頭に落ちたタライが地面に落ちる。
「「痛っったぁ~~~い!(涙)」」
「やっぱりちゃんと受けなきゃいけねぇみてぇだな」
「みたいだね。大丈夫二人とも?」
「「はいぃ・・・(涙)」」
頭を押さえてる二人の頭を撫でる。パ○クンフラワーを迎撃して、タライを回避したヴィヴィオとアインハルトちゃんの方を見る。きっと何かしらの追撃があると思っていたんだけど、何も起りそうにない。ルシル君も周囲を警戒しているけど、何も無いのか首を傾げてる。
「わたしとアインハルトさんは二重で避けたからもう打ち止めなのかな・・・?」
「油断はできませんね。気を抜かないようにしましょう」
「二人だけ何も無いなんてズルい」
リオちゃんが恨めしく言う。いやぁ、避けたら避けたであとが怖いよ? もしまだ終わってなかったら、もっと痛いのが待ってるかも。
「とりあえず次の箱へ行こう。このまま居て、別のトラップがヴィヴィオとアインハルトに襲いかかるのを待つのも馬鹿らしい」
「うん、そうだね。それじゃ気を取り直して次へ行こう」
警戒しながら、いざ次の箱へ、という時にそれは起こった。ガブッ、と何かが噛まれた音。ヴィヴィオとアインハルトちゃんがピシッと硬直してる。
「「~~~~~~~~~~~~~~~~っっ!!?」」
二人が声にならない悲鳴を上げる。よく見ると、二人のお尻に黒い鉄球のようなモノがある。さらによく見る。こ、これはパッ○ンフラワーと同じゲームに出てくる・・・
「「ワン○ン!!」」
ヴィータちゃんと重なる。顔が付いてるよ、やっぱり。地面に鎖で繋がれてるワ○ワンが、なんとヴィヴィオとアインハルトちゃんのお尻に齧りついていた。これは痛いっ。しかもワンワ○の齧りつきはまだ終わってなくて、ガジガジとお尻を噛んでる。さすがにこれはまずい。
私は「引き剥がすの手伝って!」とお願いする。ヴィータちゃんは“アイゼン”でボッコボコに殴りつけ、ルシル君とリエイスさんは魔力で槍を創り出して○ンワンの口の中に突っ込んで、てこの原理を応用して無理やり開けさせた。それで何とか二人を助け出すことに成功。でも歯型が付いてる二人のお尻がなんて言うか痛々しい・・・(涙)
「傷つきし者に、汝の癒しを」
とりあえずこの中で治癒が出来るルシル君が、遠隔でのラファエル発動(当たり前)。治癒も終わって、さっきの事は全て忘れようって流れになって次の箱へ。なかなか見つけられなくて手分けして探索。しばらくして、
『なのは、ヴィータ、アインハルト、コロナ。6つ見つけた、来てくれ』
ルシル君からの念話。早速指定された場所に行くと、ルシル君とヴィヴィオ、リオちゃんとリエイスさんが箱の前で待っていた。周囲にはあと5つの箱があるんだけど、ルシル君がヴィヴィオ達に訊いたみたい。この中のどれにフェンリルが入っていると思う?って。で、全員が迷うことなく指差したのが・・・
「てか思いっきりコレがアタリって書いてあんじゃん」
箱には確かに、コレがアタリ、って書いてある。全力で罠だと本能が告げてくる。これを開けるのにはちょっと勇気が要るかも。
「ルシルさんが、リルちゃんはとってもバカでアホでボケでマヌケでノー天気な雌犬だけど、でも嘘は吐かない雌犬って教えてくれたんです♪」
リオちゃんがキラキラ笑顔で凄い事言っちゃってるよ! ルシル君をギラッと一睨み。「子供に何言わせてるの!」って怒鳴る。め、雌犬って、そんな、子供が知っていいような・・・・。
「なぁ、なのは。君は一体何を連想したんだ? オス犬、メス犬。これの何がおかしい?」
「察してやれよ、セインテスト。なのはのやつ、きっと年齢制限が掛かるような――」
「ぎゃぁぁぁあああああああああああっ!!」
悲鳴を上げてヴィータちゃんのセリフをかき消す。わ、わわわ私、今、すごい事を一人で勘違いして考えて・・・!
ヴィヴィオ達が私の様子を見てちょっと引いちゃってる。あぁ、なんてことorz
ルシル君のバカ! 普通に狼って言えば良いのに、わざわざ雌犬って。ズーンと落ち込む。ヴィヴィオが「なのはママ?」って声をかけてきてくれた。でもヴィータちゃんが「今はそっとしておこう、な?」ってヴィヴィオを止めた。うぐっ、その優しさが今はちょっと辛いよ。
†††Sideなのは⇒ヴィータ†††
「で? 今度は誰がその箱を開けるんだ?」
なのは達とアイコンタクト。うん、と頷きあって、「最初はグー!」とジャンケン。とそこに、アインハルトが「待ってください」と入ってきた。
「もしルシリオンお父様の言う通りリルさんが嘘吐きでなかったら、間違いなくこの中にリルさんが居るって事ですよね。なら、捕獲する人が多い方がいいんじゃないでしょうか」
「「「「あ」」」」
アインハルトに言われて気付く。そりゃそうだ。あたしら、気付かない内に仲間を陥れようとか考えてた。やばい、これはかなり反省するべき思考だ。
「アインハルトの言う通りだな。ヴィータ、四方400mで封鎖領域を頼めるか?」
セインテストが役割を決め出す。ま、文句はねぇが。あたしは「任せろ」と、“アイゼン”を待機からハンマーフォルムにする。セインテストは続けて「なのははレストリクトロックを。バインド関係を一手に引き受けてもらう」と告げ、なのはも「了解」と返す。
「ルシリオン。私はどうすればいい?」
「リエイスはフェンリルの防壁破壊に務めてもらう。シュヴァルツェ・ヴィルクング。その効果を障壁破壊としてほしい」
リエイスは精神を集中するためか両拳を打ち合わせて気合を入れている。セインテストは「私とヴィヴィオ達は、フェンリルへの攻撃組だ」と続ける。それを聞いたコロナとリオが目に見えてビクッとした。
「君たちを巻き込んでしまうような術式は使わないから安心してくれ」
セインテストに優しく言われたコロナとリオは「はい」と頷く。確かにカーネルとの戦闘を見りゃ、誰だって巻き込まれてしまうかもって思うわな。役割分担も終わり、いざ、箱を開こうとなる。
「アイゼン。封鎖結界を展開、四方400mだ」
≪Jawohl. Gefängnis der Magie≫
まずセインテストの指示通りに封鎖結界を張る。これで結界外へは出られねぇ。と思う。フェンリルの出方によっちゃ抜かれるかも。なのはは結界内にバインドをいくつも設置していく。発動はなのはの意思だから、間違ってもあたしらに発動することはない。
「各自、戦闘準備を。準備が終わり次第、箱を開ける」
セインテストが告げる。それを聞いたコロナが「創主コロナと魔導器ブランゼルの名の下に・・・!」と詠唱。
「叩いて砕け、ゴライアス!」
コロナの背後にゴーレムが生成されていく。これで全員の準備が終わったわけだ。それを確認したセインテストが箱の蓋に手をかける。「いくぞ」と、セインテストが一拍置いて・・・・開けた。開けた瞬間に「だぁいせ~~~か~~~いっ♪」ってフェンリルが飛び出してきた。あたしとなのはは結界維持とバインドに力を注がねぇといけないから、戦闘はヴィヴィオ達に任せるしかねぇ。
「って! なにコレ!? 結界が張ってあるじゃない! ズルイ!」
フェンリルがあたしの結界に気付いて、抜ける穴が無いか探しているのかキョロキョロ周辺を見回す。そこに、ヴィヴィオとアインハルトとリオが突撃。セインテストとリエイスとコロナは待機だ。フェンリルが人間形態に戻って「一発目から戦闘を仕掛けてくるなんて・・・!」とヴィヴィオ達を迎撃するために向かって行く。
「アインハルトさん! リオ!」
「はいっ!」「おおっ!」
――ソニックシューター・アサルトシフト――
ヴィヴィオが急停止して、周囲にスフィアを十基展開。アインハルトとリオはそのまま突っ込んでいく。フェンリルはドレスの裾をビリビリ破いてスリットを作る。動きやすくするためだな。けど、それって反撃するのか? まずはアインハルトの、
――覇王断空拳――
足先から練り上げた力を拳足に乗せて撃ち出す打撃。フェンリルの表情がニコッと笑みに変わる。
――FEOH(フェオ)――
フェンリルは余裕を持ってアインハルトの右二の腕を掴んで攻撃を止めた。間髪いれずにリオの攻撃。足に雷撃を纏わせての蹴り。
――轟雷炮――
タイミングは完璧だった。だけどフェンリルは雷撃が纏っているのも構わずにリオの足首を掴んで止めた。雷撃を纏った足首を掴んでいてもビクともしないフェンリルに、リオが愕然とする。
「リオさん!」
――覇王空破断――
アインハルトの檄にリオは再起動。そして一撃は見事にフェンリルの腹に決まった。フェンリルが苦悶の呻き声を漏らしてよろめく。それでもアインハルトとリオを掴んで放さない。
「見事! ですが、今ので私を捕まえたのならクリアでしたのに」
「「あ」」
二人がしまったっていう風にポカンとした。おい、そりゃダメだ。思いっきり隙を作っちまった。フェンリルが二人を振り回して投げ飛ばす。そこに、ヴィヴィオのシューター十基が襲いかかる。
「シエル様の武術、カノン様の射砲撃に比べれば、児戯に等しいですね」
――CEN(ケン)――
フェンリルは両手に炎を纏わせて、シューター十基を拳打で砕いていく。ここでセインテストが動いた。コロナのゴライアスの対角線上へ移動、フェンリルを挟み打ちする構図だ。
「ゴライアス! パージブラスト!」
――ロケット・パンチ――
「屈服させよ・・・汝の恐怖!」
セインテストの両サイドに蒼の円環が展開、そこからゴライアスの腕と同じくらい太い左右一対の銀色の腕が出てきた。ロケット・パンチとイロウエルによる挟み撃ち。そこから離れようとしたところに、なのはのチェーンバインドが発動、フェンリルの胴体と四肢を拘束した。
「こいつは決まったか・・・?」
――EOLH(エオロー)――
フェンリルが指を鳴らすと、半透明の球体状の膜が展開されてフェンリルを覆った。直後に二つの巨大な拳が膜に衝突した。ガァン!と轟音と衝撃波。ロケット・パンチとイロウエルが弾かれる。けど左のイロウエルがすぐに膜にぶつけられる。
「さすがルーンの力か。全ての魔道の原型。並の防御力じゃないな。だが、この世界ではその優位性も意味はない。コロナ!」
「はいっ! ゴライアス、連続パーンチ!」
再生した腕でゴライアスが連続で障壁を殴り続ける。セインテストもイロウエルでボッコボコに殴り続ける。あんな攻撃を防御も無しで食らったら一溜まりもねぇな。セインテストが「リエイス!」と合図。「ああ!」とリエイスは黒い魔力を両拳に纏わせた。
「シュヴァルツェ・・・ヴィルクング!!」
リエイス、セインテスト、ゴライアスの三方からの連続拳打が始まる。リエイスを中心に、徐々に結界にヒビが入っていく。そして完全に砕け散った。フェンリルが「わぁお」ってまったく焦ってない風に肩を竦め、
――IS(イズ)――
フェンリルを縛るなのはのチェーンバインドが一瞬で凍結、粉砕。迫るゴライアスとイロウエルを、「それゆけ私のナイスパンチ!」って両腕をグルグル回して、
――TIR(テュール)――
拳を打ち込んで迎撃しやがった。衝撃が全部に伝わったのかイロウエルが根元まで粉砕、ゴライアスも同じように粉砕。破壊された衝撃に吹き飛ばされたコロナを、アインハルトとリオがナイスキャッチ。そしてフェンリルへはリエイスとヴィヴィオが突撃していく。
「好きにやれヴィヴィオ。私とルシリオンが合わせる!」
「えっ、あ、はい!」
「はい、ごめんね❤ サクッと結界を突破させてもらうから」
リエイスの連撃を右手で捌きながら左手を空に掲げた。その隙に飛び付いて捕まえようとするヴィヴィオだったが、フェンリルはよほど気配察知が上手いのか軽々避けやがる。
「アイゼン、出力を最大! 何があっても結界を突破させるなっ!」
カートリッジをロード。封鎖結界の出力を上げる。魔力の大半を持っていかれちまったが、サクッとお題をクリアするにはこの一発目で決めなきゃな。ヴィヴィオの腕を掴んで投げ飛ばし、リエイスの蹴りを掴んでまた投げ飛ばす。
――レストリクトロック――
なのはの最強のバインドがフェンリルを拘束する。「今だっ!」ってセインテスト達が一斉にフェンリルに跳びかかるが、フェンリルは「やめてよして触らないでビビデバビデブー♪」なんてアホな歌を歌いながら、
「お願い、私を助けてぇ~アル○ック~♪」
――NYD(ニード)――
異変。指一つ動かせねぇ? なのは達もそうなのか口々に動けないって言ってる。
「対象を拘束するルーン、ニードだ。私の記憶の中のフェンリルは使えないはずだが」
セインテストが悔しげに呟く。そしてまたフェンリルは自分を拘束してるバインドを凍結させて破壊した。
「ゆるりと結界破壊をさせてもらおっかなぁ・・・て、あれ?」
――アクセルシューター――
――ソニックシューター――
――ブラッディダガー――
――双龍円舞――
――創成起動――
ま、体が動かなくなっても魔法が使えなくなるわけじゃないよな。なのはとヴィヴィオのスフィア計三十一。リエイスのダガーが二十。リオの炎龍と雷龍召喚。コロナもまたゴライアスを創り出した。セインテストは何もしねぇが。なにか企んでるって感じだな。
「でもでもぉ、動けない以上は私を捕まえるなんて夢のまた夢のお話、でっす!」
フェンリルが大きく跳躍。それに合わせて、
「シューーーット!」
「ゆけっ!」
「いっけぇーーっ!」
「もう一回ロケット・パーンチッ!」
一斉に攻撃がフェンリルに向け射出。フェンリルはお構いなし。振り切るつもりかそのまま真っ直ぐ上に伸びていって、
「リルリルキィーーーーッック!!」
――UR(ウル)――
宙返りして結界に蹴りを一発。ガシャァァン!と結界を蹴り割られた。たったそれだけで、あたしと“アイゼン”の全力の封鎖結界が貫かれた。そしてフェンリルに追いついた攻撃。でもフェンリルに焦りは一切ねぇ。
――EOLH(エオロー)――
また展開される半透明な球体状の障壁。なのは達の攻撃は全て弾かれて無力化された。ここでようやくセインテストが動く。あたしらの周囲にアースガルド魔法陣が三つ展開される。
――破り開け、汝の破紋――
――懲罰せよ、汝の憤怒――
三つの魔法陣から、炎龍、雷龍、光龍が飛び出してきて、そのままフェンリルを覆う膜に巻きついていって締めつけていく。
「ルシルさん、リルちゃんの結界を破るにはやっぱりリエイスさんの魔法じゃないと・・・」
「いや、大丈夫だよリオ。三頭の懲罰の龍マキエルには、障壁・結界を破壊する効果のメファシエルを付加させているんだ」
セインテストがそう答え、リオから視線を逸らして俯く。ボソボソと呪文のようなものは詠唱してんな。そう思っていたら、体が自由に動くようになった。どうやらセインテストはあたしらの拘束を解くために何かしてたみてぇだ。
「ルシル君!?」「ルシルパパ!?」「「ルシルさん!?」」
悲鳴を上げるなのは達。セインテストの体が傾いて、ゆっくりと倒れていこうとしてた。
†††Sideヴィータ⇒ルシル†††
「大丈夫ですかルシリオンお父様!」
倒れそうになったのを、一番近くにいたアインハルトが支えてくれた。彼女に「ありがとう、大丈夫だ」と礼を言い、自力で立とうと試みる。が、やはりニードの解呪とユルの障壁を突破するためのメファシエルに、気力体力が根こそぎ奪われ足に力が入らない。
普段のメファシエルなら大した消費はないが、やはり神秘は無くとも強力なルーンを対象とするとどうしても消費が高い。また倒れそうになり、今度はなのはとリエイスが私を背中から支えてくれた。
「あ、ルシル君、危ないって」
「無茶をするな、ルシリオン」
「ああ、すまない。だがまだ落ちるわけにはいかない」
マキエルに締め付けられ軋みを上げているフェンリルの障壁を見上げる。「粉砕粛清」と指を鳴らし、マキエルの締め付け力を一気に高める。しばらくの拮抗の後、ガシャン!と障壁を粉砕、フェンリルはマキエルに呑みこまれた。これで気を失ってくれていれば助かるんだがな。だが、その願いはもろくも崩れ去る。
「どっっっせぇぇーーーーいっ!」
マキエルを中から粉砕して姿を現したフェンリルは、本来の姿たる巨狼だった。落下中、なのはの空間に設置されていたバインドがいくつも発動していくが、フェンリルの巨体の前では意味をなさなかった。ズドン!と大地を揺るがして着地。高みから私たちを見下ろしている。
「あっぶなかった~。マスター、本気で私を墜とそうとしたでしょっ。このお題は私を捕まえるんであって倒すんじゃないよっ。忘れてないよねッ?」
再び人型へと戻るフェンリルが、怒りの所為で赤みを帯びた頬を膨らませながらジト目で睨んできた。
「憶えているとも。だが、これくらいしなければお前を捕まえるなんて無理だ」
とは言え、もう私は一歩も動けないうえ魔術を使う事も出来ない。なのは達に任せるか、それとも奥の手を使うか。出来ればなのは達に任せたい。フェンリルが「まぁいいか。じゃ、もう一度、私を捜しだしてね」とウィンクし、先程開けた二つの箱の方角へと視線を向けた。
「させません!」
――覇王空破断――
アインハルトの放った一撃を裏拳で弾き飛ばし、
「リボルバー・・・スパイク!」
ヴィヴィオの打ち下ろしの回し蹴りを頭突きで弾き、
「うぉおおおらぁああああっ!」
――テートリヒ・シュラーク――
ヴィータの一撃を人差し指と中指で受け止め、デコピンの要領で弾き飛ばし、
「雷神装!」
リオのアレは確か加速魔法だったか。だがフェンリルはしっかりとリオを捉えており、放ってきた拳打を掴んで思いっきり投げ飛ばした。私を支えていたなのはとリエイスも攻撃に参加、というところで、
――RAD(ラド)――
高速移動のルーンをまた発動した。今回フェンリルを見つけられたのは運良く判りやすい箱を見つけたからだ。次も同じ箱があるかどうか判らない今、ここで逃せば一体どんな苦労が待っているか。仕方ない。こうなったら奥の手だ。
「フェンリル! 散歩に行こう!」
そう叫ぶ。なのは達が「はい?」と首を傾げつつ私を見てくる。災厄を呼ぶ最悪のワードを言ってしまった。ドドドドドと地鳴りのような音と振動が。
「マァ~~スゥ~~タァ~~~❤」
ハートマークを振りまきながらフェンリルが戻ってきた。しかも最悪な事に狼形態ではなく人間形態で、だ。以前、人間形態のフェンリルに押し倒されもがいていた時、シェフィに見つかって酷い目に遭った。フェンリルが全力ダッシュの勢いのまま、ジャンピング抱きつきをしてきた。
「うごぉっ!」
顎に頭突き。視界が揺れる。ただでさえ体が動かないのに、今のがトドメとなった。完全に仰向けになって倒れる。それに気付かないのかフェンリルはなんの謝罪も無しに頬擦りを続ける。
「マスター❤マスター❤マスター❤ マスターとお散歩だぁ、やったぁーーーっ♪」
嬉しさからの興奮で顔を赤くしながら満面の笑みを向けてくるフェンリル。フェンリルに良い様にされている間、とりあえず視線でなのは達に合図を送る。なのは達は察してくれて、ゆっくりとフェンリルと私を包囲するように移動。それぞれは右手を伸ばし、フェンリルの肩や背中をポンっと叩く。
「「「「つ~かま~えたっ」」」」
よしっ、クリアだ。フェンリルもハッとして、キョロキョロとなのは達の顔を見回す。
「さ、退いてくれフェンリル。私たちの勝ちだ」
「ほえ? 散歩は?」
そうフェンリルに告げると、この子は呆然とそう訊いてきた。もちろん、するわけない。フェンリルを逃がさないための嘘だ。だから「嘘だ」と告げる。ボケーとしたフェンリルの大きな瞳からポロポロと大粒の涙が溢れて零れてきた。
「あ、ルシル君がフェンリルさんを泣かした」
ボソッとなのはが私を非難する声色で呟いた。それだけでなく、ヴィータも「ひでぇ、女を騙して泣かせるなんて」と冷たい視線を。リエイスですら「今のはないな。謝れ、ルシリオン」と一睨み。あれ? 何故非難されているんだ? お題を無事、そして早急にクリア出来たのに。
「ルシルパパ。リルちゃんが可哀想だよ」
「ルシリオンお父様。いくら何でも今の嘘はいけない気が・・・」
「クリアするためだからと言って、リルちゃんを泣かせちゃうような嘘はちょっと・・・」
「うん。謝った方がいいとあたしは思う」
気が付けば私は女子たちの敵になっていた。何、この理不尽さ。「ひっく、うっく、うぅ、ひぅ」と嗚咽を漏らし、こぼれる涙を何度も拭おうと袖で目を擦るフェンリルを見る。こっちが泣きたい気分だよ。ギシギシ軋む左手を何とか上げ、フェンリルの頬に添えて指で涙を拭いさる。
「ぅっく、マスター・・・?」
「もう泣くな、フェンリル。すまなかった」
「じゃあ散歩は?」
「なしだ」と返すと、フェンリルはヒクッと引きつり、また泣きだした。そしてまた注がれる非難の冷たい視線。どうしろっていうんだ? なのはが「もう。散歩くらいしてあげなよ、ルシル君」と私を見捨てる発言をしてきた。
「マスター。私、散歩、行きたい」
フェンリルの散歩。諸君、フェンリルと――そんな美少女と二人っきりでの散歩くらいどうってことないだろ、逆に嬉しいだろ、とか思っているだろ? だが、それは真実を知らないからこそ言える意見。そう、フェンリルの散歩=トライアスロンなんだよっ! 数十分で終わるような優しいものじゃないんだよ。あと、どれだけ可愛くても実際は途轍もなく大きな狼だしな。
「なぁ、セインテストが泣いてんぞ」
「ええっ!? ど、どうして!?」
昔を思い出してつい涙が。フェンリルが「泣いちゃヤダ」と袖で私の涙を拭った。「じゃあ散歩も無しでいいよな」と言うと、「好きなだけ泣いていいよ❤」と頬を思いっきり引っ張られる。数分後、なんとかフェンリルを落ち着かせ、妥協案を提示する。
「あーもう好きなだけくっついていろ。散歩をするよりかは果てしなくマシだ」
抱きつかれている方が何倍もマシ。そう、ただ抱きつかれているだけなのだから。それで満足したのかフェンリルは小さく可愛らしい声で「うん」と頷いた。大人しければ何も問題ない子なんだがな、本当に。本っっっ当に! 少しばかりの抱擁の後、ようやく転送が始まる。フェイト達の待つボードフィールドへの帰還だ。
「じゃあここでお別れだな、フェンリル」
視界が白に染まる中、フェンリルの寂しそうな顔を見た。ヴィヴィオ達が「バイバイ、リルちゃん」と手を振り、フェンリルはコクリと頷く。フェンリルが離れていくのが判る。大丈夫だよ、フェンリル。必ず、お前の元に帰る。それまでは待っていてくれ。
「またな、フェンリル」
†††Sideルシル⇒フェイト†††
3マス目に光が生まれる。なのは達が無事にお題をクリアして帰ってきたんだ。まずなのはの姿。次いでヴィヴィオ、ヴィータ、アインハルト、コロナ、リオ、リエイスと出てくる。そして最後にルシルが・・・・・・あれ? なんか女の人に押し倒されてない?
「わっぷ? ちょっ、なんでついて来ているんだお前!」
ルシルに馬乗りになってる女の人が「行っちゃヤだぁ~」てルシルの胸に何度も頬擦りを・・・!
その上、何を考えているのかルシルの首筋や頬をペロペロと舐め始めた。プッツン。頭の中で何かが切れた音がしたような気がするけど、うん、気のせいだよね。
「フェ、フェイトさん? え、ちょっと、どこ行くんですか?」
エリオがそう訊いてきて、「ちょっとそこまで」笑みを浮かべて答える。エリオはそれっきり訊いてこなくて、ただ「いってらっしゃい」と送りだしてくれた。うん、良い子だねエリオ。
「うわぁ、何やルシル君。めっちゃすごい事されとるなぁ」
そ、そうだよね。すごいよね、あれは許せないよね。というかリエイスもなに黙って見てるの? そこは止めようよ。ルシルにそんな、ちょっと、えっと、Hなことしてるんだから。“バルディッシュ”を起動させて、ルシル達のところへ向かう。
「フェイト!? 待ってくれ! これは違うんだ! 憶えているよな、コイツ! フェンリルだよ! 狼、いや犬だよ! これはそう、犬なりのスキンシップなんだって!」
やだなぁ、ルシル。そんな言い訳みたいなこと言わなくてもいいよ♪
狼、犬、うん、どう見ても女の人だね。耳とか尻尾はあるけど、でも今は人だ。フェンリル。憶えてるよ。“闇の書事件”のときにお世話になった恩人だ。でも今はちょーーーーーーーっと許せないかなぁ。うふふ。
「フェイトちゃん、落ち着こう、ね?」
なのはが立ちはだかる。私は「大丈夫、落ち着いてるよぉ」と答える。するとなのはは「そうですか」って敬語を遣って、私の前から退いてくれた。
「マスターにチュー❤」
そこから先、私は何をやったか憶えてない。
†◦―◦―◦↓レヴィルーのコーナー↓◦―◦―◦†
レヴィ
「結局バトルじゃん!」
ルーテシア
「はい、始まっちゃった今日のレヴィルーのコーナー」
レヴィ
「バトルだよっ! 結局バトルだよっ! しかもわたし達出番ないよっ!」
ルーテシア
「そんなに叫んじゃ頭の血管が切れるってレヴィ! それに、出番なら前回あったよ。無いのはわたしの方だよ」
レヴィ
「はぁはぁはぁ。そうだよね、うん、ごめんね」
ルーテシア
「判ってくれればいいよ。さて、今回もANSURのキャラクターが活躍したよね」
レヴィ
「ルシリオンの使い魔、フェンリル。なんて言うかバカな娘?」
フェンリル
「バカって酷い。貴女も十分バカって話じゃない。ボケ担当の剣神の後継だっけ?」
レヴィ
「なにおう! ルシリオンに頬擦りして舐め回して、挙句の果てにはチューしたくせに! そっちの方がバカじゃん!」
フェンリル
「使い魔としての愛だよ。別にチューくらい普通だって。何をそんなに怒って・・・あ、あーそうゆうこと。貴女、そうゆう経験が無いんだ」
レヴィ
「それが何!? リリカルなのはじゃそれがノーマルなの!
リリカルなのはをANSUR(番外編限定)のノリに染めるんじゃねぇーーーっ!」
フェンリル
ピク「ていうかぁ、貴女も元は第三章・界律の守護神編の専用エネミー・アポリュオンじゃない。なのに、それを言っちゃう? 言っちゃうんだぁ。チッ、お前、どこ中だよ」
レヴィ
ピク「残念、わたしは学校に通ってないも~ん。あと今はしっかりリリカルなのはキャラだもん」
フェンリル
ピク「あっそう。それはともかく、あーだから教養の無い顔してるんだね。ごめんね、おバカさんだから学校に行けない、っていうか入れな――」
レヴィ
プッツン「表出ろやぁーーーっ!」
フェンリル
プッツン「じょうとーだっ!」
ルーテシア
「今日はこれにて! うわっ、危ないって二人とも!」
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