戦国異伝
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第百六十一話 紀伊へその五
「わかったな」
「わかりました、それでは」
「これまで攻めてくれた仕返しをしましょうぞ」
「それで門徒共を退けましょう」
「是非共」
「ここは紀伊の方に回りましょう」
島が森にすかさず言って来た。
「奴等を後ろから攻め」
「そして奴等の逃げ道を塞ぐのじゃな」
「はい、そうしましょうぞ」
こう言うのだった。
「ここは」
「紀伊に逃げられたら厄介じゃからのう」
「今のうちに敵の後ろを塞いでです」
そうしてだというのだ。
「ここで殲滅しましょう」
「そして後はじゃな」
「石山です」
彼もこの寺の名を出す。
「あの寺を攻めましょう」
「そしてじゃな」
「本願寺との戦を終わらせるのです」
是非共だというのだ。
「そうしましょうぞ」
「そうじゃな、ではな」
「はい、今すぐに」
「我等はこれより敵の後ろに回り込む」
森はすぐに全軍に告げた。
「そしてそのうえでそこから攻めるぞ」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「急ぐぞ」
こうも言う森だった。
「敵の後ろにな」
「ではまずはそれがしが」
長可が名乗り出た。
「先陣となります」
「うむ、ではな」
森も我が子の言葉に頷く、そしてだった。
森は自身が率いる軍を紀伊の方に向けた。信長はその動きを見て会心の笑みを浮かべ傍にいる明智に言った。
「流石勝三じゃ」
「紀伊の方に向かわれたことですな」
「そうじゃ、敵を紀伊に戻らせぬつもりじゃ」
「そしてここで殲滅して」
「そうじゃ」
そしてだというのだ。
「次に石山じゃ」
「そうですな、石山は大軍でなければ攻め落とせませぬ」
あまりにも巨大で堅固だからだ、五万やその辺りではとても攻められるものではないからだ、だからである。
しかもだ、それに加えてだった。
「今の我が軍は」
「連戦でな」
「伊勢から加賀まで行っています」
そしてこの摂津まで来ている、進んだ距離だけでも相当だ。
そこに戦もしてきた、それ故になのだ。
「疲れが溜まっています」
「ここで紀伊に向かうとな」
「紀伊の一向宗を平定せねばなりませぬ」
「つまり紀伊を手に入れることじゃな」
「そこまで力を使えば」
そうなればだというのだ。
「我等の疲れが大きくなり」
「そうじゃな」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「その時は石山を攻めることは難しいでしょう」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「出来ればですな」
「ここで石山を陥としたい」
絶対にだというのだ。
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