戦国異伝
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第百六十一話 紀伊へその二
「闇じゃな」
「まさにですな」
「うむ、闇じゃ」
それだというのだ。
「どうもな」
「そうですな」
「全くもってわからぬ」
森は顔でいぶかしむものを見せていた、そのうえでの言葉だった。
「何者かな」
「しかし今は」
「うむ、戦わねばな」
あれこれ思うことはあってもだ、今はそうしなければだった。
「さもなければ生きていられぬ」
「生きていなければ」
「何にもならぬ」
だからこそだというのだ。
「生き残る為にじゃ」
「はい、戦いましょうぞ」
「殿が来られるまでじゃ」
信長、彼がだというのだ。
「それまで戦うぞ」
「ではですな」
こう話してだった、そうして。
加藤は自ら敵を倒しつつ踏ん張る、守っているが一歩も引かない。しかし敵は多く幾ら踏ん張ろうともだった。
敵も攻める手を休めない、森もその彼等を見て言う。
「近江と同じじゃな」
「こうした感じでしたか」
「うむ、全く以てな」
こう傍らにいる石田に述べる、二人共刀を手にしている。
「昼も夜もな」
「左様ですか、しかし」
「殿がじゃな」
「必ず来られます」
それ故にだというのだ、石田は今の辛い中でも表情を変えてはいない。
「間もなく」
「そうじゃな、しかもじゃ」
「しかもとは」
「今は皆がおる」
森は笑みを浮かべて石田に返した。
「わしだけではないからな」
「守れますか」
「兵は殆ど減っておらぬ」
闇の服の者達の休むことない激しい攻めを受けてもだ。
「それが何よりの証じゃ」
「確かに。それがしもそう思います」
「我等は死なぬな」
「持ち堪えられます」
こう森に言うのだった。
「ご安心下さい」
「そうじゃな、この中でもな」
「敵は確かに強いです、そして数も多いです」
「しかしじゃ」
「我等は戦える将が揃っております」
それ故にだ、彼等は生きられるというのだ。丁度彼等の左手で長可が果敢に攻め敵を追い返していた。
「あの様に」
「与三か」
「与三殿だけではありませぬ」
他の者達もだというのだ。
「とりわけ左近殿が」
「左近か。よく口説いてくれたのう」
島は石田の言葉に従い織田家に入った、形としては石田の家老だが実質的には織田家の直臣と言っていい。
「その石高の半分を出すとはな」
「そのことですか」
「普通は言えぬぞ」
森の前に敵が数人来た、彼はその門徒達を自ら斬り伏せてから言った。
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