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美しき異形達

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第七話 三人目その十三

「それではね」
「ああ、さっさと終わらせような」
「そうしましょう」
 こう話してだ、そしてだった。
 薊は一緒に寮を出たばかりの裕香に顔を向けてこう言った。
「ちょっと行って来るな」
「怪人ね」
「ああ、正門の右手の物陰に出たってな」
「あそこね。じゃあ今から」
「すぐに終わらせて部活に出るよ」
 裕香にもこう言うのだった。
「そうしてくるな」
「そう、気をつけてね」
「そうするよ。ただな」
「ただって?」
「いや、怪人ってこれまでは襲い掛かってきたんだけれどな」
 菖蒲から聞いた話をだ、裕香に話すのだった。
「それが違うんだよな、今回は」
「菖蒲ちゃんに襲い掛かったじゃなくて」
「ああ、見掛けたっていうからな」
「何か目的が違うのかしら」
「気になるよな、そこが」
 こう裕香に言うのだった。
「どうにも」
「そうよね、どういうことかしら」
「まあそこは怪人に会えばわかるさ」
 その時にというのだ。
「だからちょっと行って来るな」
「本当に気をつけてね」
「死なない様にしてくるよ」
 薊は裕香に微笑んで言った、そしてだった。
 すぐにヘルメットを被りそのうえでバイクに乗ってだった、すぐに学園の正門を出てそこから右手を見ると菖蒲がいた。それでこう薊に言ってきた。
「あそこよ」
「?あそこは」
「ええ、男子寮の方よね」
「またむさ苦しい方角だな」
 男子生徒達が登校してくる、薊と菖蒲はその中でそれぞれのバイクに乗っているのだ。当然ヘルメットも被っている。
「あたしも人のこと言えないけれどな」
「別にそうは思わないけれど」
「少なくとも女の子らしいとは言われないからな」
 薊は笑って菖蒲に言葉を返した。
「だからな」
「そう言うのね」
「そうだよ、とにかくな」
「ええ、怪人はあちらに消えたわ」
「男子生徒に見つからなかったんだな」
「風の様に動いたわ」
 あまりにも素早く、というのだ。
「物陰から物陰にね」
「忍者みたいにか」
「普通の人には見えなかったわ」
 だが、というのだ。常人には見えずとも。
「けれど今の私にはね」
「視力に動体視力がよくなっているからか」
「ええ、見えたわ」
 今の菖蒲にはというのだ、力が備わっている。
「多分貴女にも見えるわ」
「そうなんだな」
「ええ、ではね」
「行こうか、怪人のところに」
「今からね」
 こう二人で話してだ、菖蒲が案内して怪人が消えた方に向かった。するとそこは。
 男子寮の裏の裏道だった、人通りはなく表の男子生徒達による賑やかさとは裏腹に静まり返っている。そこに入ると。
 怪人がいた、だが。
 二人には向かっていなかった、怪人は二人を振り向いてはきた。その顔はというと。  
 蜂だった、スズメバチだ。その黄色と黒の警戒色の顔と虫の羽根が生えている背中、そして両手両足は人間のものだ。その怪人が二人に言ってきたのだ。 
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