万華鏡
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第七十話 大晦日その十
「あそこはね」
「そうなのね」
「そう、まあとにかくね」
「普通はなの」
「そう、日の出と一緒に起きないわ」
景子にしてもというのだ。
「今日はまた特別よ」
「元旦だから」
「そう、だからね」
それでだというのだ。
「今は手を合わせよう」
「こうしてね」
「皆でよね」
四人も景子に応えた、そしてだった。
手を合わせてからだった、そのうえで。
五人共売り場に戻った、それからも色々なものを売っていく。その中で里香はおみくじを売りながら景子にこっそりと尋ねた。
「この神社大凶は」
「おみくじの中によね」
「入ってるの?」
「いえ、大凶はないわ」
それはというのだ。
「凶はあってもね」
「大凶はないのね」
「大凶は大抵の神社ではないわよ」
「そうなのね」
「むしろ大凶をひいたらね」
大抵の神社でないそれをだというのだ。
「運がいいわよ」
「大凶をひいたらなの」
「大抵の神社にないし」
それにというのだ。
「あっても少ないのよ、入っている割合が」
「そうだったの」
「凶も少ないわよ」
このくじもだというのだ。
「実はね」
「へえ、そうなのね」
「吉の方が多いのよ」
実際はそうだというのだ、神社のくじは。
「これがね」
「じゃあ大凶をひいたら」
「かえって運がいいのよ」
希少のくじをひいたからである。
「私もひいたことないわよ」
「そういえば私も」
里香もだった、大凶はひいたことがない。もっと言えば凶もない。
「ないわ」
「そうでしょ、見たこともないし」
「じゃあ大凶は相当レアね」
「極レアよ」
レアもレア、相当にというのだ。
「ひいた方が凄いから」
「そうなのね」
「そう、そもそもうちの神社にはないから」
またこう話した景子だった。
「大凶とかね」
「まずないものなのね」
「そう、凶にしてもよ」
こちらもだった。
「あまり入れてないからね」
「大吉よりも少ないとか?」
「ええ、入れてないわよ」
大吉の方が多いというのだ、本当に。
「まずひけないから」
「そうなの、じゃあひいたらかえって運がいいのね」
「ええ、その一年いいこと尽くめよ」
そこまでだというのだ。
「ある人が住吉大社で凶ひいたらその年阪神日本一になったらしいわ」
「八十五年よね」
「その人が阪神の試合観たら阪神が負けるっていうジンクスがあったらしいけれど」
その人がだ、凶をひいた年にだというのだ。
「その年は観ても負けなくてもね」
「日本一になったのね
「そういうこともあるから」
「というかその人が阪神の試合を観たら阪神が負けるのね」
「テレビでも球場でもね」
「厄病神?その人」
里香は真顔で景子にその人のことを問い返した。
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