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万華鏡

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第七十話 大晦日その二

「お蕎麦って」
「そうなのyね、お蕎麦ってビールにも合うのよね」
「そうそう、だからいいのよ」
「ヘルシーだしね」
 今度言ったのは彩夏だった。
「お蕎麦って栄養的にも優れているのよ」
「しかもカロリーが少なくて」
「カロリーは凄く少ないのよ」
 だからダイエット食品としても人気があるのだ。うどんと蕎麦を比べると蕎麦のカロリーの少なさは相当なものだ。
「だから余計にいいのよ」
「そうよね、お酒にも合ううえに」
「じゃあ飲もう」
 景子は一升瓶をどん、と出した。
「お蕎麦と一緒にね」
「そうね、それじゃあ」
「一年の終わりにね」
 四人も景子のその提案に頷いた、そうしてだった。
 五人で蕎麦を食べ酒を飲む、この組み合わせに誰もが満足した。それで蕎麦も何皿も食べたのだった。
 食べ終わった頃には相当に酔っていた、ここで美優が景子に赤い顔で尋ねた。
「なあ、元旦からな」
「ええ、お仕事よ」
 美優と同じく赤い顔で応える景子だった。
「巫女さんとしてね」
「だよな。まずいよな」
「新年になったら早速だから」
「お参りの人来るか」
「そう、除夜の鐘が鳴る頃にはね」
 一年の終わりだ、その頃には既にだというのだ。
「神社に人が来てるから」
「それじゃあ今のうちにな」
「お風呂に入ってね」
 ここでも風呂だった、五人は。
「身体を清めるのと一緒に」
「お酒も抜いておくか」
「そうしましょう、今のうちにお風呂に入ったらね」
 時計を見る、見ればまだ夕方の五時だ、とはいっても冬なので外は次第に暗くなろうとしている。冬の夜は足が早い。
「十二時には相当抜けてるから」
「だよな、それじゃあな」
「お風呂入ろう」
 景子は美優に応えながら他の三人に声をかけた。
「今からね」
「巫女さんの服には着替えなくていいの?」
「ええ、まだいいわ」
 景子は琴乃の問いにも答えた。
「十二時近くになってからね」
「着ればいいのね」
「だからまだね」
 お風呂からあがってもというのだ。
「いいから。お風呂入ろう」
「そうね、それでお酒を抜いて」
「巫女さんになろうね」
「神社の元旦は忙しいわよ」 
 それこそ一年の中で最も、というのだ。
「人がわんさと来るから」
「この神社にもなの」
「やっぱり人が一杯来るの」
「そうなの、多いのよ」
 これが実にというのだ。
「普段とは全然違うから」
「それじゃあ本当に今のうちにお酒を抜かないと」
「間に合わないわね」
「そう、だからね」
 それ故にというのだ。
「今からお酒抜いておきましょう」
「それじゃあね」
 琴乃も他の三人も応えてだ、そのうえで。
 五人でお風呂に入った、湯船と水のシャワーで酒はじっくりと抜いた。そうして酒を何とかかなり抜いて風呂から出ると。
 景子の母がだ、娘にこう言ってきたのだった。 
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