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ストライクウィッチーズ  扶桑海軍119航空隊

作者:stk
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105航空隊

1944年7月
世界はネウロイとの戦いによって窮地を迎えていた。最前線では多くのウィッチ達が奮闘し、ネウロイの進行を遅らせていた。



1944年6月
来月に赤城が最前線に向けて出港することになり、扶桑海軍は新たな部隊を作った。その部隊はウィッチだけを集めた精鋭。105航空隊。通称、扶桑の魔女。部隊の戦闘員は10名。最年長が16歳で、最年少は13歳。全員が10代という平均年齢が若い部隊。集められた戦闘員は全員が士官であり、かなりの経験を積んできている。戦果はあまりないのだが、勲章の所持量だけで言えば扶桑海軍のなかではトップである。
そんな彼女たちに与えられた任務は、『501統合戦闘航空団に出向し、援助せよ』という奇妙なものであった。501統合戦闘航空団は最前線で戦っている部隊の中でも一際目立っており、ウィッチのなかでも選りすぐりのエリートしかいないこの部隊のことを私たちは『ストライクウィッチーズ』と呼んでいる。


ストライクウィッチーズ
扶桑海軍105航空隊


「えりか~。海行こうよ~」

「片原。任務中だぞ。」

「ええー。海行きたい!」

あの二人は片原知香少尉と桐島恵里佳大佐。この部隊に所属するウィッチである。この二人は前部隊から同じらしく息があったコンビらしいのだが、戦闘時以外はあまりコンビとは思えない。

「ねえ、理恵。海、行きたいよね!」

「う、うん。そうだね。」

そして知香は泳ぐのが大好きなんだって。訓練でも泳ぐのだけは誰に負けてことがないらしい。それにしても海か。私からしてみれば訓練以外で海にいくのは何年ぶりかわからない。

「そういえば理恵。圭は?」

「圭はね、あそこに・・・いない?」

「ここにいる。」

「うわぁ。」

私の後ろにいたのか。
彼女は大崎圭少尉。私とコンビを組むウィッチなんだけど、私自身は圭のことをあまり知らない。彼女は戦闘時以外はどこにいるのか把握できないことの方が多い程に影が薄い。まぁ、戦闘時では誰よりも早くネウロイを撃墜しているのだけどね。

「理恵。私、海は苦手。」

「えっ、そうなの?」

圭にそんな弱点があったなんて知らなかった。でも前の訓練で海に落とされたときはなんともなかったように見えたのだけど?

「だから海に入るときは一緒に入ってね」

「わかったよ。一緒に入ろうね」

「うん!」

圭がかわいいよ。上目遣いで頼まれたら断れないよ。しかも、あの信頼されている感じもたまらない。

「大崎。お前、普通に潜れたよな?」

「矢沢さん。いたんですか」

「ああ。さっき来たばかりだがな」

「・・・面倒なのが来た」

矢沢愛少佐。前部隊では圭とコンビを組んでいたのだけど、今回は圭が嫌がったらしく現在は違う人と組んでいるらしい。ちなみに私は矢沢さんが誰と組んでいるかは予想は出来ているが、実際には見たことがない。

「理恵、またあとでね」

「うん。またあとで」

矢沢さんはそこまで悪い人には見えないのだけど、どうして圭はあそこまで嫌ってるのかな?ちょっと気になるかも。

「根岸。大崎を甘やかすなよ。」

「はっ、はい。」

甘やかすなって言われても、圭のことはどうにもできないし。矢沢さんは今の圭が気にくわないのかな?
確かに前部隊のときより撃破数は減っているけど、以前より部隊には溶け込めていると思うけど。

「やはり大崎は私とコンビを組むべきだった。・・・根岸。今からでも私と変わらないか?」

矢沢さんも圭に執着しすぎでしょ!

「お断りさせて頂きます」

私は今の、圭とのコンビで満足しているもん。

「そうか。だが私は諦めないぞ!」

矢沢さん、しつこいと嫌われますよ。とくに圭から。

「矢沢さんは圭のことが好きなのかな?」

「知香!まだいたの?」

何時もなら、どんな場面でも五月蝿い知香がこんなに静かなんて珍しい。矢沢さんになにか言われたのかな?

「理恵。ひどいよ~」

「ごめんごめん」

「うん。いいよ~」

かるっ。そんな簡単に許してもらっていいの?

「理恵。それでさっきの質問に対する返答は?」

「さっきの質問?」

ヤバい。聞いてなかった!

「まさか聞いてなかったの?」

なんか知香が怒りそうなムードなんですけど。桐島さん、助けてくださーい。
私は期待の眼差しを桐島さんに向けたがスルーされてしまった。
仕方がない。素直に謝りますか。

「ごめん。聞いてなかった。」

「もぅ、聞いててよ!」

「本当にごめん。だからもう一度、言ってもらえないかな」

「今回だけだからね!」

よかった。話す気になってくれたみたい。今度はちゃんと聞いておかないと。

「矢沢さんは圭のことが好きなのかな?って言ったんだよ。」

矢沢さんが圭のことを?いや、それはないでしょ。たぶん矢沢さんは、圭の軍人としてのセンスをかっているんだとおもう。

「矢沢さんは以前から圭を知っているから、圭に期待しているのだと思うよ。」

「本当にそれだけかな?」

いや、実際のところなんてわからないし、気になるようなら直接聞けばいいのに。それとも上官だから遠慮してるのかな?

「まあいっか。」

「えっ?」

「だからもういいの。調べるのはめんどくさいから。」

自分勝手だな。まあ、知香らしいと言えばそれで終わりなんだけどね。

「知香と理恵さん?なにか考え事ですか?」

あれ、この声はたしか

「楓!」

彼女は大島楓少尉。夜間警邏を担当している。
楓が夜間警邏明けに顔を出すなんて珍しい。何時もだったら茉耶と一緒に寝ているはずなのに。
茉耶というのは、楓と一緒に夜間警邏をしている少女で、この部隊の最年少でもある。

「大島さん。もう少し静かに起きてくださいよ」

おっ、眠そうな茉耶が来たよ。
彼女は赤王茉耶少尉。楓と同じく夜間警邏を担当しているんだよ。

「それは気を付けるよ」

「根岸さんと知香さん。おはようございます」

「うん、おはよう」

「おはよー」

二人は仲はいいけど、コンビを組んでいるわけではない。なぜかと言うと、楓が「夜は一人で仕事をしたい」といったからである。楓は扶桑皇国のウィッチのなかでもナイトウィッチとしての活躍が多く、他のウィッチとは夜間警邏をおこなわないようにしている。

「大島さん。まだ昼なんですから寝ておいた方がいいのでは?」

「楓。寝ておきなよ。」

「そうだよ。今日も夜間警邏をやるのだから、十分な休息を取っておかないときついよ」

最近は夜間警邏中に応援要請がくることが多い。そのため、夜間警邏はかなりの体力を必要とするのです。また楓は一人で戦うことが多いので、人一倍体力が必要なのです。

「理恵さん。それは命令ですか?」

「命令じゃないよ。ただのお願いかな」

「楓。理恵はね、あんまり命令とかしないんだよ。命令するのが好きじゃない。とか言ってね♪」

そう、私は命令はあまりしない。たしかに、命に関係するときは命令するかもしれないけど、あとから事情は説明している。

「わかりました。自室に戻ります」

「ありがとう。しっかりとからだを休めてね」

自室に戻る楓を見て、ホットしている私のうしろに楓と同じく夜間警邏をしている茉耶が、外出しようとしていた。

「茉耶。どこにいこうとしているのかな?」

からだを振るわせながらこちらを向く茉耶は少しだけ怯えているようにも見えた。

「茉耶も夜間警邏があるでしょ」

そう。茉耶も夜間警邏に行かなければならない。夜間警邏は普段は一人で行うのだけども、最近は緊急の応援要請が多くなってきたので二人に任せている。

「なら茉耶も自室に戻って寝ないとね♪」

「・・・はい」

私と知香に攻められる茉耶を見ているとかわいそうにも見えるけど、これは茉耶が起こした事なので仕方がない。

『根岸理恵大尉、副司令室に来なさい。繰り返す。根岸理恵大尉、副司令室に来なさい。』

「理恵、なんか悪いことでもしたの?」

そんな記憶はないけど。でもなんか行きたくはない。私の本能が行ってはいけないと考えている。私は何か問題を起こしたことがあったか、再確認し始めた。だが、私の思うところでは問題などなかった。

「理恵。除隊なんてないよね?」

「大丈夫だよ」

私にも何が言われるのかはわからないけど、除隊までにいたる問題なんてなにもしていない。

「とにかく行ってくるよ」




~移動中~




副司令室についた私を、副司令の早水紗耶香中佐はただの話がしたいだけと言いながら部屋のなかに連れていかれた。

「理恵。我が隊は来月の初旬にブリタニアへ出向することになっている。それは聞いているな」

「もちろん、聞いております。」

そんなことを知らせるためにわざわざ呼んだの?ビックリさせないでくださいよ。

「我が隊は、空母加賀を使いブリタニアへむかうのだが、理恵と圭に空母赤城の護衛を頼みたい」

「空母赤城ですか?たしか赤城には第24航空戦隊288航空隊の坂本少佐が乗っているはずですけど」

赤城は扶桑皇国海軍の主力空母の一種で、扶桑皇国海軍の航空隊の発進にも役立っているのです。そして最前線欧州に向かうはず。

「たしかに坂本がいるかもしれないけど、もしものことがあっては困るの。意味はわかるわよね」

「はい」

「それと、盗み聞きしているオオカミさんもつれていっていいわよ」

やっぱり知香は盗み聞きしていたんだ。それにしても紗耶香さんはすごいな~。壁越しでも誰がいるか見れるんだ。それにしても知香は懲りないね。前も盗み聞きしていて怒られたのに、今回も盗み聞きするなんて。

「わかりましたね、片原少尉!」

「りょ、了解しました」

壁越しで返事をするくらいならなかにはいってくればいいのに。それに、、知香のことだから深々と敬礼しているのだろうね。

「根岸海軍大尉、大崎海軍少尉、片原海軍少尉は現時刻より護衛開始日までの間を特別休暇とします。」

「えっ?」

特別休暇?なんでそんなものをこの時期に?私はあと一週間も休暇を取らないといけないの?

「やったー。きゅうか!、きゅうかー!」

知香。もうバレバレだよ。何処も隠そうとしていないじゃん。それにはしゃぎすぎだよ。休暇といっても何かあるはずだし。それにただの休暇をもらえるわけがない。なにか理由があるはず。

「その間に、第12航空戦隊147航空隊の宮藤愛少尉を迎えにいってくれ。」

「宮藤少尉ですか?資料はありますか?」

宮藤と聞くと、ストライカーユニットを開発した宮藤博士を想像してしまう。私からしてみるならば、それだけ宮藤博士の印象が強いと言うこととしか説明できないのですけどね。

「これが資料よ」

どれどれ。あれ?父親が宮藤博士!?
昭和5年8月18日生。
双子の妹で次女。
軍に入隊したのは12歳のとき。
階級は少尉。
治癒魔法の使い手。
なんかすごい人材じゃん。まさかこんな人が軍にいたなんて。でも宮藤博士のお子さんが軍に入隊していればもっと有名になってもいいと思うのだけど。

「それと理恵。宮藤少尉も空母赤城に乗ってブリタニアに来てもらうことになっている。」

「えっ?」

それはつまり、

「超重要任務じゃないですか!」

「今ごろ気づいたのか。だが断ることは出来ないからな」

迂闊だった。でもなんで宮藤博士のお子さんを欧州につれていくの?あんな危険なところに連れていくなんて私なら止めそうなんだけどね。

「宮藤少尉は自分から我が105航空隊に転属願いを出したのよ」

「おかしくないですか?」

この部隊は最前線で戦うことはあまりないけど、色々と危険な道に踏み込むことが多い。とくに来月の任務は欧州の最前線にいくのでいままで以上に危険になると思う?

「理恵。気にするな」

気にするなって言うのは無理でしょ。私だって気になることの1つや2つは持っているのですから。それに、あの宮藤博士の娘さんだよ。気にするのは当たり前ってものです。

「根岸大尉。宮藤少尉の待遇については、ブリタニアに着くまでは客人として扱うようにしなさい」

「はい。了解です」

「それと、今回は汽車を使ってもらう」

「えっ?汽車ですか?」

汽車で行くなんて珍しい。何時もなら、移動用トラックの荷台に乗っての移動なのに。

「そうだ。今回の任務は本当に大切なの」

「余計に緊張するのですが」

私は自分なりにルートを考えた。そこでわたしが考えたのは、河津、天城を通るルート。そして修善寺へと抜けて駿豆鉄道と国鉄を利用して箱根にある第12航空戦隊147航空隊に出向き、そのまま横須賀にある軍港に行き、坂本少佐と合流し、空母赤城の護衛任務。結構ハードなスケジュールじゃん。これじゃあ海にはいけないな。

「なにか質問はあるか?」

「一点だけよろしいですか?」

どうしても聞いておきたいことがある。

「拒否権はありますか?」

この任務は私には重すぎる。

「先程も言ったが、断ることはできない」

「了解しました。それでいつ出発すればいいのでしょうか」

「明日なのだが、準備はできているか?」

明日って。まだ501統合航空隊に行く準備すらしていないのに。それにストライカーユニットの調整もしてない。明日行くのは厳しいと思う。

「部屋の荷物は気にしなくてもいいぞ。すべて持っていくからな!」

「そうですか。では貴重品のみ持ち歩くことにします。それでストライカーユニットはどうすればいいですか?」

私が自分で持っていくのは結構厳しいものがある。

「ストライカーユニットだけは赤城に送っておく。ついでに新たに支給されるであろう物も送っておく」

「わかりました。105航空隊第一航空分隊は明日より宮藤少尉の護衛任務につきます」

「頼む」

それでは第一航空分隊を収集して作戦会議をしないと。でも、護衛任務に作戦がいるかはわからないけどね。私は作戦なんてたてることが出来ないけどね。

「それでは失礼します」

私は敬礼をしてから退室すると、そこには敬礼をしている知香がいた。

「聞いていたから分かるよね」

「うん。海、行けないね」

「そうだね。でも、|むこう«ブリタニア»に行けば入る機会もあるよ」

「大丈夫。海に入れなくても平気だよ」

知香の笑っている顔を見るのは大好きなんだけど、自分の本心を隠して笑っている知香を見るのは辛いよ。本当に知香は海に行くのが楽しみだったのがわかるよ。

「それじゃあ、圭にも伝えて明日の準備をしますか~」




~休息中~




「理恵。こんな朝早くに行く必要はなかったんじゃない?」

「知香。私、寒い」

圭の言う通りたしかに寒い。でもこの時間帯に出ないと予定時刻を軽く過ぎてしまう。それだけは避けないといけない。

「もうすぐで峠を越えるから我慢してね」

汽車乗場まではトラックに乗っていっているから横風が冷たいし、気温も寒い。

「こんな寒さは我慢できないよ」

「私も無理」

こんなときに矢沢さんがいてくれれば、「シャキッとしないか!」と言ってくれそうなんだけど。生憎なことにこの中での最高位の階級保持者は私なんだよね~。

「理恵~。もう無理だよ~」

「私も」

二人とも我慢してよ。私だって本当はかなり寒いのだから。それに毛布も二人に取られちゃったし。そう言えば、温かいお茶を持ってきていたんだった。
私はお茶をコップに入れて二人に渡した。二人はコップを持つとゆっくりと飲み始めた。

「おいしい~。理恵、ありがと」

「ありがと」

二人が喜んでくれたのなら持ってきたかいがあったと思えるよね。

「理恵。見て!日の出だよ」

知香の言う通り、たしかに太陽が登り始めた。それはいつも見ているよりも綺麗に見えた。

「キレイ。理恵?」

「なに?」

「ブリタニアでも日の出は見れるのかな?」

「きっと見れるよ!」




~トラックにて移動中~



修善寺に到着
修善寺汽車乗場

「着いた!」

私たちは汽車乗場に着くとやっと一息つくことができた。

「それでは急いで乗ろうか」

「うん」
「はい」




~汽車にて移動中~




箱根に到着
第12航空戦隊147航空隊詰所

「御苦労様です。私が今回、第24航空戦隊105航空隊に転属願いを出した宮藤愛です。階級は少尉です」

「私は第24航空戦隊105航空隊の根岸理恵です。階級は大尉です。ヨロシクね♪」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。」

なんか緊張しているのかな?まあ、私も軍に入りての時はこんな感じだったような気がする。
私は辺り一面を見てから、

「結構静かなところですね」

軍の基地にしてはかなり静かだった。それは人がいるのかさえわからないほどのものだった。

「そうですね」

宮藤さんも賛同していたが、悲しそうだった。その理由を気になっていたが、なぜか聞くことはできなかった。

「それではいきましょうか」

私は宮藤さんをエスコートしながら詰所前に止めている車までエスコートした。車が見えてくると敬礼をしている知香と圭がいた。いつもは敬礼なんかあまりしない二人だが、初めて会う人にたいしてだからかキッチリとしていてた。

「あの~。お二人は?」

そうか、挨拶をしてないもんね。

「私たちから見て右側にいるのが片原知香少尉。そして左側にいるのが大崎圭少尉です」

敬礼をやめて順番に頭を下げる二人。いつもこれなら私も楽なんだけどね。

「片原知香です」

「大崎圭少尉です」

挨拶をし終えると早速だけれども横須賀に向かうことにした。 
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