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戦国異伝

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第百六十話 四人の男達その十五

「さもなければ石山から出しても同じじゃ」
「力が強いままなら」
「それならですな」
「そうじゃ」
 まさにその通りだというのだ。
 そしてだ、こうも言う信長だった。
「ただ」
「ただ?」
「ただとは」
「本願寺の顕如殿はな」
 彼はだ、どうかというと。
「一度でよいからな」
「一度とは」
「よいとは」
「会いたいのう」
 こう言うのだった。
「是非な」
「何と、あの方とですか」
「お会いしたいのですか」
「そうじゃ」
 まさにだというのだ。
「そう考えておる」
「いや、それは幾ら何でも」
「それは」 
 家臣達は信長のその言葉に疑問で返した。
「どうかと思いますが」
「それは」
 これが彼等の言葉だった。
「顕如殿とは最早宿敵の間柄です」
「織田家と本願寺自体も」
「それでお会いするということは」
「どうにも」
「いや」 
 それでもだとだ、信長は言うのだった。
「あの御仁面白そうじゃ、だからな」
「機会があればですな」
「お会になられますか」
「そうしたいのう、ではな」
「はい、それでは」
「今より」
「勝三達を助けに行くぞ」
 そうするというのだった。
「近江に続いてじゃな、あ奴を助けに行くのは」
「ですな、確かに」
「そうなりますな」
「ははは、これも縁じゃ」
 信長は笑って言った、森を助けに行くことはというのだ。
「あ奴が踏ん張ってくれてわしがそこに助けに向かうのはな」
「それはですな」
「殿と勝三殿のですな」
「縁ですな」
「そうなるやもな。ではその縁をな」 
 天王寺、今戦になる場所でもだというのだ。
「ここでもつなげようぞ」
「はい、それでは」
「天王寺へ」
 信長は家臣達の言葉を受けてだった、そうして。 
 石山の方を振り向いた、そして。
 その石山を一瞥してから天王寺の方に顔を戻した、そのうえで今はそこにいる本願寺の軍勢に向かうのだった。


第百六十話   完


                            2013・11・19 
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