万華鏡
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第六十八話 秋深しその二
「相当おかしな作品かも知れないわよ」
「そうなのね」
「正直どの作品もお勧め出来ないわ」
景子は真顔で琴乃に告げた。
「私としてはね」
「じゃあ全部一旦しまって」
「別の作品選んだら?」
「そうね、それじゃあね」
琴乃は景子の言葉に頷いた、そしてだった。
まずはだ、里香に尋ねたのだった。
「ねえ里香ちゃん、どんな本読んだらいいかな」
「どんなのって言われても」
「わからないの?」
「本っていっても色々だから」
それでだというのだ。
「長い本もあれば短い本もあるじゃない」
「まあそれはね」
「明るい作品もあれば暗い作品もあって」
「言われてみればそうよね」
「琴乃ちゃんがどんな作品を読みたいかよ」
大事なことはだ、このことだというのだ。
「それでその本を読んでね」
「読書感想文書くべきなのね」
「そう、それが読書感想文だから」
まして今回はどの本を読めとは指定されていない、読む本は完全に自由とされているのだ。それで里香も琴乃に話すのだ。
「琴乃ちゃん次第よ」
「じゃあシリアス?」
「シリアスな作品なのね」
「ライトノベルでもあるじゃない」
ここで琴乃はライトノベルを例えに出した。
「ほら、シリアスなファンタジー」
「ファンタジーなのね」
「騎士とか王女様が出て来る」
「それだったらね」
そうした作品ならばだとだ、里香が出した作品は。
「アーサー王かしら」
「あの聖杯とかいう」
「騎士が活躍するし王女様も出て来るわよ」
「魔法使いもよね」
「そう、聖杯も探すし」
騎士もののファンタジーならこれだというのだ。
「いいんじゃないかしら」
「騎士ものね」
「少し長いけれどね」
「長いの?アーサー王って」
「ええ、文庫本で結構分厚いわよ」
ちくま書房から出ている、アーサー王物語とアーサー王ロマンスがある。
「それでもいいかしら。ただ読みやすくて合う人によっては凄く面白いわよ」
「私ゲームでもRPG好きよ」
「その騎士が出て来る作品がよね」
「和風ファンタジーも好きだけれど」
そうした騎士ものもだというのだ。
「大好きだから」
「そうなのね。じゃあいいと思うわ」
「アーサー王ね」
「ええ、アーサー王が駄目だっていうのなら」
「他にもあるの?」
「ワーグナーがいいかしら」
里香が次に挙げたのはこの人物だった。
「リヒャルト=ワーグナーね」
「あれっ、ワーグナーって音楽家よね」
「音楽家だけれど自分の作品の脚本は自分で書いていたの」
「へえ、そうだったの」
「そうなの、だからね」
ワーグナーの歌劇の脚本を読んではというのだ。
「そうしたらどうかしら」
「そうなのね、ワーグナーもなの」
「あの人も騎士ものの作品多いから」
騎士が好きな琴乃に合っているのではというのだ。
「どうかしら」
「そうね、それじゃあね」
「アーサー王かワーグナーにするのね」
「どうせ読むなら楽しいの読みたいから」
「そうでしょ、私もそうよ」
これは里香もだというのだ、読書感想文にしても読むのなら読んで楽しい作品を読みたいというのである。
「今読んでる作品もそうだから」
「ええと、それは」
「若草物語よ」
ウォルコットの代表作だ、南北戦争の頃のアメリカを舞台とした四姉妹と家族の物語だ。続編も有名である。
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