| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真剣恋にチート転生者あらわる!?

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第20話

 
前書き
悠斗の倫理観に関しては前作マブラヴを引き継いでますので、分からないかたはスルーでお願いしますm(_ _)m今、キャラクター設定と共に掲載する悠斗のあらすじも書いてますので。 

 
悠斗side



日本に帰国してから2ヶ月が過ぎた。川神市の不動家別荘(別宅)に引っ越して、現在は川神市で生活している。季節は名ばかりの春を迎えていた。(暦の上では立春を迎えてたからだ)
俺は執事服を着て九鬼財閥極東本部施設がある、大扇島へと繋がる連絡地下道を歩いている。川神市に引っ越ししたり、九鬼家侍従隊の仕事などがあり、漸く此方の施設に顔を出すことが出来る。

九鬼財閥極東本部

川神市に存在する人工島、大扇島に存在する施設だ。九鬼財閥が進める武士道計画等の特殊な計画や実験等をしている施設だ。また、九鬼家の方々が別荘として使う家等も存在する。現在は九鬼紋白様が生活なされている。なんでも、政治に関わる勉強をなされているらしい。まあ、専属執事がヒュームさんであるから、他に政治に詳しい人達から政治を学んでいるのだろう。俺は連絡地下道を渡り終え、階段を上がり地上に出る。地上に出ると冷たい海風が吹き付ける。まあ、かつての秘密基地の様な特殊な訓練室が、何故か川神市の別荘に何故か有ったので、10年ほど絶対零度の世界で訓練しながら生活していたので、今さら寒いとは感じない。

(寧ろ、訓練の後の風呂が一番の楽しみだよな。まさか、別荘に温泉が出てるなんて知らなかったからな)

川神市の別荘の風呂は温泉だったので、ついつい長湯しがちだ。たまに長湯し過ぎでなごみに眠りかかる寸前で救助されたことも既に何回かある。そんな下らない事を考えながら、九鬼財閥極東本部を目指して歩く。今は、耳にイヤホンを着けてiPodで、企業戦士アクアビットマンのテーマソングを聞いている。

『ビット! ビット! アクアビットマン!

ビット! ビット! アクアビットマン!

コジマの力使い~ 世界を守る戦士~

ビット~ ビット~ アクアビットマン! コジマの化身! 世界を救う企業戦士!

誰にも負けない コジマの力 世界を守る 企業戦士!

譲れないのさ コジマ粒子

無敵の防御PA 最強の武器はコジマキャノン!

当たれば雷電すら一撃さ~』

相変わらずコジマ粒子全開のテーマソングである。他にも、キャラクターソングも全員分入っている。GAマン、アスピナマン、トーラスマン、アクアビットマン、有澤マン、インテリオルマンレディ、等様々キャラクターソングが販売されているのだ。

(そう言えば、劇場版アクアビットマンの第2段の製作が決定したんだよな。第1段の映画は映画館で見てきたが、あれば面白かったな)

アクアビットマン達、企業戦士達が代表を倒すためにレジスタンスと協力して戦う話だった。
謎の巨大無人兵器が出てきたら所は、流石にヤバいと感じたがアクアビットマン達、企業戦士達の相手に全くならなかったな。
オペレーターの女性が的確な指示をくれたが、企業戦士達がは完全無視。寧ろ、硬い装甲を完膚なきまで叩き潰した挙げ句に、アスピナマンの必殺技のアンサラーのアサルトアーマーで、全て更地に変えたからな。他にも、海上施設でヘンテコなACが出てきて、レーザー兵器を射ちまくってきたが、アクアビットマンのPAを突破する事は無く、逆にフルチャージされたコジマキャノンを両肩から発射されて、哀れに消し飛んだな。
後は、オペレーターの女性の部下がトレーラーで、アクアビットマン達を輸送してたら、いきなりGAマンがトレーラーの前に出て、攻撃を完全に防いだりしてたな。

(アクアビットマン達は強いよな。代表すら瞬く間に死んだしな)

その後は、地下に住んでいた人々と共に環境汚染された世界を少しずつだが、綺麗にして人々が住める様にしていくお話だった。まあ、最終的にはコジマ・マサキ博士の汚染物質除去装置で、空、陸、海、の全てが綺麗になった。そして企業戦士達はレジスタンスの皆に見送られて、コジマ・マサキ博士の次元連結システムを使って、元の世界に帰っていった。
まさに感動ものだった。 そんな事を考えながら歩いていると、九鬼財閥極東本部ビルの前に到着した。 イヤホンをかたずけ、iPodの電源を切る。入口に立っている守衛さんに話しかける。

「おはようございます」

「あ、おはようございます。何か御用でしたら、中の受付に訪ねてください」

「あ、そうですか。じゃあ、失礼します」

守衛さんと軽い挨拶を交わして、ビルの中に入る。広々としたロビーがあり、入口かは入った正面の奧に大きい受付がある。ロビーには、来客が待っている間座ったりするソファーや、簡単な商談が出来るスペースがある。九鬼財閥の社員や来客達が、あちこちにいる。 俺は真っ直ぐ歩いて行き、正面に居た受付嬢に話しかける。

「すいません」

「はい。いらっしゃいませ。本日はどの様な御用件でしょうか?」

「九鬼家侍従隊ヒューム・ヘルシングさんに伝えて欲しいのですが、No.4が来たと言ってください」

「分かりました。少々お待ちください」

受付嬢が受話器を取り、内線ボタンを押して電話をかける。俺は受付から少し離れて、近くにある柱にもたれ掛かる。
のんびりとロビーを見渡していると、先程の受付嬢がやって来た。

「お待たせしました。申し訳ありませんでした。まさか、侍従隊の方とは思いませんでしたので」

「構いません。ヒュームさんはなんと?」

「直に迎えに来られるそうです。もう暫くお待ちください」

「分かりました」

互いに一礼する。受付嬢は職務に戻る。俺はのんびりと待っていると、奥から金髪の執事服を着た男性ともう一人、青髪で執事服を着た細身の男性がやって来た。

「悠斗。久しぶりだな。クラウディオから話は聞いたぞ。随分派手にやったそうじゃないか」

「お久しぶりです、ヒュームさん。まあ、試練である以上派手にやらないと意味がありませんからね。あと、此方の男性は誰ですか?」

俺は青髪の細身の男性を見る。男性は笑みを浮かべた。

「桐山。挨拶しろ」

「初めまして桐山鯉です。序列は42。カポエラが得意です。よろしく」

「初めまして不動悠斗だ。序列は4。メインは拳だ。よろしく」

互いに握手を交わす。
桐山はステイシーや李に比べると、やや弱いが中々の腕前を持っている。 1度手合わせしてみたいものだ。

「悠斗。立ち話はなんだ、着いてこい。奥で話がある」

「分かりました。行きましょう」

ヒュームさんが歩き出す。俺と桐山もヒュームさんの後に続く。暫くヒュームさんに連れられて極東本部の奧に進むと、鍛練場に到着した。ヒュームさんが扉を開けて中に入る。俺達も後に続くいて中に入ると、数人の男女が訓練をおこなっていた。

「中々見所のある男女達ですね」

「気付きましたか。あの体操着を着た男女達が、武士道計画の申し子達です。教官達相手に剣を振るっているのが、源と言う子です。彼方の錫杖を持って戦っている子が武蔵坊。やや奥で弓を射っている男の子のが那須と言います。皆、一流の戦闘能力を秘めていますよ」

桐山が俺に説明してくれる。1対1で実戦稽古を行っている様だ。源と呼ばれた少女が教官相手に剣で戦っている。教官も中々腕が良いようだが、段々と源に押され始めている。教官が横払いした剣を避けて、源がカウンターで教官の剣を弾き飛ばして、蹴りで教官を吹き飛ばした。教官はそのまま壁に激突した。
武蔵坊と呼ばれた少女は、錫杖を使い間合いを取って教官を懐に入れないようにするが、教官は錫杖の攻撃を回避して懐に入った。教官の拳が武蔵坊に迫るが武蔵坊は、教官の拳を受け止める。受け止めた拳を掴んで教官を片手で投げ飛ばす。教官は壁に激突して動かなくなった。男の方を見てみると、いつの間にか教官を倒していた。武器は弓の様だ。教官が気絶した様だ。

「桐山。教官達を医務室に連れていけ」

「分かりました。では、失礼します」

ヒュームさんの指示に従い、桐山は気絶している教官達を医務室に運ぶ為に、先に行ってしまった。

「あの3人をどう思う?」

「中々スジが良いと思いますね。まあ、まだ粗削りですけど」

源と武蔵坊は見ていたから分かったが、彼女達にはまだ隙がある。ある程度の相手なら問題は無いが、李やステイシークラスの武人が相手にると、少し厳しいかも知れない。まあ、訓練を見ただけで直接手合わせをした訳じゃないから、なんとも言ってみようがない。

「そうか。まあ、俺や悠斗クラスの武人が相手になると、あの僅な隙は致命的だな。まあ、後々訓練で矯正すれば問題無いがな」

「そうですね。まさか、あの3人が武士道計画の申し子達ですか?」

「おいおい。桐山が名字を言った時点で気付いてやれ。まあ、あの3人が武士道計画の申し子達だ」

「そうですか。そうなると、源は義経。武蔵坊は弁慶。那須は与一て名前ですかね?」

まあ、有名な人物の名前を上げてみる。ヒュームさんは頷いた。どうやら俺の考えはあっていた様だ。

(ふーん。歴史上の人物達のクローンか。まあ、マブラヴの世界じゃ当たり前すぎたからな。向こうの世界だとオルタネイティヴ計画の第三計画の時に、ESPの能力を持ったクローンの少女達が、前線に投入されたりしていたからな。今さら、クローンや試験管ベイビーと言われても驚くきはしないしな)

向こうの世界だと、倫理観や道徳等と言っている余裕は無かった。
それだけ人類は逼迫した状況だったからだ。
外道と言われれば外道だが、綺麗事だけで戦争には勝てない。逆に綺麗事だけで戦争に勝てるんなら、とっくに人類は勝利していただろう。
そんな事を考えていると、ヒュームさんが歩き出した。俺はヒュームさんの後を追いかけるのであった。




悠斗sideout



ヒューム・ヘルシングside




鍛練場で武士道計画の申し子達の訓練を見ていたが、終わったようなので俺は彼等の元に向かう。 悠斗も俺の後を着いてくる。俺の存在に気が付いた源義経が、姿勢を正して挨拶してきた。他の二人も源義経に続いて挨拶をしてくる。

「あ!ヒューム師匠!お疲れ様です!」

「あら、どうも師匠」

「うん?ああ。師匠お疲れ様です」

「よう。訓練に精が出るな。教官クラスが相手にならなくなったか」

桐山が教官3人を医務室に運んで行ったからな。しかも、教官達は気絶しているだけで怪我等はしていなかったな。

「あの~」

「ん?どうした?」

「隣の男性はどなたでしょうか?」

源義経がおずおずと訪ねてくる。俺は隣を見る。そこには悠斗が苦笑いしながら立っていた。

「お?自己紹介がまだだったな。悠斗、自己紹介しろ」

「はい。ヒュームさん。九鬼家侍従隊、九鬼揚羽様の元専属執事不動悠斗です。よろしく」

悠斗が笑顔で挨拶をする。すると、義経と弁慶の頬がほんのりと紅くなった。那須与一はなんだが不機嫌そうだ。

「あ、義経は源義経と言います。よろしくお願いします」

「私は武蔵坊弁慶と申します。以後、御御知りおきください」

「那須与一のだ。俺に触ると火傷じゃすまないぜ」

義経と弁慶は笑顔で挨拶を交わす。与一はぶっきらぼうに挨拶を交わす。 悠斗は3人と握手を交わした。

「彼等で全員ですか?」

「いや、もう一人居るが今は居ないようだ。今度会った時にでも挨拶をしておけ。それより、義経、弁慶、与一、3人共これから悠斗と戦ってもらう。準備はいいか?」

「え!戦うのですか?」

「・・・・・あら?」

「はっ!30秒もあれば倒してみせるぜ」

義経や弁慶は驚くが、与一は逆に大きく出てきた。

「(悠斗相手に大見得を切るか。まあ、1度殺りあえば実力の差を痛感出来るだろう)そうか。悠斗行けるな?」

「ええ。大丈夫です。武器は無論真剣ですよね?」

「そうだ。刃は潰していない本物の真剣だ。俺が審判をしてやる。お互い構えろ」

俺は両者の間に入る。義経や弁慶は乗り気では無いが、それぞれ武器を構える。与一は既に後ろに下がり、弓を構えていた。

「ルールは簡単だ。相手を戦闘不能にすればいい。武器は真剣だ。金的、目潰しはありだ。だが、相手を殺すなよ悠斗。お前は、キチンと手加減しろ。いいな」

「はい。ヒュームさん。分かりました」

「では、はじめぇぇぇ!」

俺の掛け声と共に戦いが始まった。義経が一番に駆け出し、愛刀の薄緑で悠斗を切りつけた。

「やあぁぁ!」

「甘い!」

悠斗は義経の刀を右指1本で正面から受け止める。義経の表情が驚愕に変わる。左側から弁慶が錫杖で突いて行く。

「はぁ!」

「遅い」

弁慶の錫杖の突きを左足で蹴り払う。悠斗の眉間に神速の矢が迫る。眉間に矢が当たると思われたが、超ギリギリで回避する。わざと矢を引き付けたな。

「おいおい、嘘だろ!?」

「そんなスピードの矢が俺に当たるか!今度は、俺から行くぞ。そらよ!」

「わわ!?・・・う!?」

義経と力比べをしていた指を離す。突然相手の力が消えたので義経が体勢を崩す。悠斗は即座に追撃の一撃を義経の腹におみまいする。義経は握っていった刀を離して悠斗の体にもたれ掛かり、気を失う。悠斗は義経を地面に寝かせて、弁慶と与一と相対する。

「少々なめていました。今から全力で相手をさせてもらいます!」

「次は外さねえ!」

弁慶と与一は、体から常人では耐えられない程の密度の殺気を放つ。だが、それを受けてなを悠斗は平然としている。

(経験の差か。潜り抜けた修羅場の数が違い過ぎる。悠斗は前線で戦い続けていた男だ。対する弁慶や与一はまだ、実戦はおろか訓練以外で戦った事は無い。その差が如実に現れているか)

弁慶が錫杖を構え直す。与一も弓を限界まで引いた。二人とも並々ならぬ闘志を放つ。だが、次の瞬間鍛練場がギシギシと悲鳴を上げた。

「な!」

「う!」

悠斗から鍛練場を覆う程の殺気が放たれる。
建物のあちこちにから鉄骨が軋む音がする。

(む!!危うく、俺まで殺気に呑まれる所だった。たった1年会わなかっただけで、此れ程強くなるか。末恐ろしい男だ)

俺は、自身に気を巡らせる事で気に呑まれる事は無いが、弁慶や与一はそうわいかない様だ。弁慶や与一は自身より圧倒的に強い者の殺気を受けて、完全に呑まれてしまっている。小刻みにだが二人とも震えているが、戦う構えを解いてはいなかった。

「行くぞ。防いでみせろ」

悠斗がそう言った次の瞬間、与一が宙を舞った。 弁慶が全く反応出来ていなかった。与一は顎を打ち抜かれ、そのまま俺に向かって円を描いて落下してくる。俺は与一を片手で受け止める。与一を見ると完全に気を失っていた。弁慶が冷や汗を額に浮かべながら、ゆっくりと左から死角を狙う様に動く。悠斗も反対に右に円を描く様に動く。
弁慶は間合いを詰めようとするが、悠斗は錫杖の間合いギリギリになるように動いているため、下手に間合いを詰められないでいる。

(悠斗はカウンター狙いだな。あえて相手が踏み込めるまであと少しと、言ったギリギリの間合いでいるな。弁慶はカウンターを恐れて迂闊に踏み込めないでいるか。あまり、時間をかけると悠斗が動いて来るぞ)

俺は与一を床に寝かせながら、二人の戦いを見守っている。悠斗はいつの間にか手拭いを手にしていた。

「ふん!」

「な!・・く!?」

悠斗が手にした手拭いが槍のごとく弁慶を突き刺す。弁慶は手にした錫杖でなんとかガードするが、悠斗は隙を作ることなく手拭いを操り畳み掛ける。

「く!・・・はあ!やあ!」

「甘い!その程度の反撃が通用するか!」

弁慶がなんとか錫杖で反撃するが、悠斗に届く事は無かった。逆に悠斗の手拭いに当たりダメージを負った様だ。

(まさか悠斗が布槍術を会得していたとわな。あれでは間合いなど関係ない。全てが悠斗の間合いになってしまったな)

弁慶も奮戦するが、遂に悠斗の手拭いが弁慶の鳩尾を突いた。弁慶はそのまま、床に倒れそうになるが悠斗が倒れる前に抱き締めて、床に倒れるのを防いだ。俺は与一を肩に担いで悠斗の傍に行く。

「どうだ悠斗?この3人の実力は?」

「まずまずですかね。義経は不意を突かれると、咄嗟の判断が遅れるのが難点ですかね。与一は弓の腕前は良いですが、訓練を疎かにしている様に見えました。あれでは才能が無駄になっている。また、自身の腕を過剰に見ている節が見受けられます。弁慶はまあ、あの程度の殺気に呑まれる程度ではダメですね。ですが、あの殺気に呑まれつつも反撃してきましたから、もう少し確り鍛えればかなりの実力者になるでしょう」

「中々辛辣な評価だな。まあ、コイツらには良い薬になっただろう」

「そうですか?まあ、確りと訓練に打ち込めば、今より更に化ける気がしますよ。この3人は」

悠斗が義経と弁慶を肩に担ぎ立ち上がった。

「じゃあ、医務室に連れていきますか」

「そうだな。悠斗。着いてこい」

俺と悠斗は鍛練場を後にし、3人を担いで医務室に向かうのだった。




ヒューム・ヘルシングsideout



源義経side



瞳を開くと清潔感に溢れる白い天井が目に入ってきた。体を起こし辺りを見渡すとベットに横になっていた事に気が付いた。義経は弁慶、与一と共に訓練で教官を倒した後、ヒュームさんが連れてきた不動悠斗殿と手合わせをしたのは覚えている。悠斗殿は義経達に真剣で挑んで来いと言った。 義経、弁慶、与一の3人で悠斗殿と戦ったが、義経の刀の一撃は悠斗殿の右指1本で止められてしまった。

(義経は負けたのだな。圧倒的な力だった。義経の武は悠斗殿に通用しなかった。それどころか、一撃で気を失ってしまった)

悠斗殿は義経を一撃で気絶させたのだ。おそらく、弁慶や与一も頑張っただろうが、悠斗殿の相手にはならなかっただろう。腕を組んでベットの上で悩んでいると、カーテンが開け放たれた。
カーテンを開けたのは医務室の常勤医の女医さんだった。

「あ、気がついた?貴女、随分と長い時間気を失っていたのよ」

「ど、どれくらいですか!?」

「んー、ザッと1時間位よ。まあ、不動悠斗さんの一撃をもろに食らって、1時間なら早い方よ」

「あのお方はいったい何者なんですか!?」

「そうね。纏めて説明してあげるから、此方に来なさい」

そう言って女医さんは奧に向かった。義経はベットから出て靴を履いてカーテンを開けて外に出る。女医の先生が椅子に座っていた。その正面には弁慶と与一が座っていた。

「弁慶!与一!二人とも無事だったのか!?」

「!義経!怪我はなさそうですね。良かった」

「けっ!元気そうで何よりだな義経。だが、俺達は負けたんだよ」

弁慶は義経を見て安心そうな表情をする。与一は不機嫌気味だ。

「与一。義経に対する態度が悪いですね」

「ぎゃあぁぁぁぁ!!ヘッドロックは勘弁してくれ!!食い込んでる!?爪が食い込んでる!?AMSから、光が逆流する!ぎゃあぁぁぁぁ!!」

弁慶が与一の頭をヘッドロックする。与一は痛そうに悲鳴を上げる。
女医さんが咳払いする。

「いい加減にしなさい!!説明を聞かないで、お説教して欲しいのかしら?なんなら、不動悠斗さんに頼んでもう一度戦ってもらう?」

「「ごめんなさい!」」

弁慶と与一が女医さんに頭を下げた。弁慶はともかく、与一が人に頭を下げるのは非常に珍しい光景だ。女医さんに進められて、弁慶の隣に座る。 3人が女医さんと向かい合う形になった。女医さんは口に銜えタバコをしている。

「さてと、あんた達が相手にした不動悠斗さんの事が聞きたいんだろ?」

「はい。彼は何者なんですか?初めて会いましたが、最初は単なる優男に見えましたが」

「そう。あなた達はそう感じたのね。まあ、良いわ。簡単に説明するわよ。不動悠斗。彼は九鬼家侍従隊所属序列4位の執事よ。九鬼揚羽様専属執事でもあるわ。今は、諸事情有って専属を一時的に離れているわ」

「序列4位ですか!?ヒュームさんに近いレベルですよ!?」

「あらあら」

「なに!?クソ!やはり、あの時俺の体の中に居る暗黒竜を解き放たなくて良かった!」

与一が相変わらず意味の分からない事を言っているが、この際無視しよう。女医さんは、タバコの灰を灰皿に落として一通り説明してくれた。今は最後の説明を受けている。

「てな訳よ。あなた達の訓練の教官も担当するらしいわよ。彼の下で確りしごかれなさい。じゃあ、説明は終わりだから帰りなさい」

「はい。ありがとうございました。失礼しました」

「失礼しました」

「・・・失礼しました」

義経達は医務室から出て長い廊下を3人で歩く。女医さんからの説明は、非情に有意義なものだった。

(不動悠斗殿か。優男だと思ったが、どうやら全く違うようだ。それに、あの笑顔を思い浮かべと、何故か胸の奥が暖かくなるのは何故だ?)

彼の笑顔を思い浮かべる。最初に挨拶を交わしたときに胸の奥が熱くなった。今も、何故か胸の奥が熱くなる。

(何故だろう?理由が分からないが、嫌な感じではない気がする)

義経は考えながら他の二人を見ると、弁慶は何時ものように川神水を飲みながら歩いている。与一は暗黒竜がどうした等と言っていた。
それから義経達は宿舎に向かって歩くのだったが、義経の悶々とした悩みは晴れる事は無かった。




源義経sideout 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧