万華鏡
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第六十六話 ゲリラライブその四
「よし、いよいよだな」
「ライブ開始ね」
「場所はもうわかってるしな」
「今からそっちに行って」
こう話すのだった、それを聞いてだった。
琴乃もだ、自分達の場所に向かいながら四人にこっそりと言った、その言った言葉とは。
「モロバレよね」
「うん、わかってたけれどね」
「完全にね」
「ゲリラじゃなくてね」
この場合はだ、最早というのだ。
「武士っていうか」
「名乗りを挙げてから戦う」
さながら平家物語の様にだ、そうした状況だというのだ。
「そんなのよね」
「誰がどう見ても」
「何かこれでゲリラって」
「どうにも」
ゲリラになってないことを実感するしかなかった、そして。
少し離れた場所を進む部長とそのグループを見るとだ、部長は先頭に立ってだった。
コートを、フードまで被って胸を張って前を大股で歩いている。腕の振りもいい。その威風堂々とさえしている姿を見て琴乃はまた言った。
「隠れてないわよね」
「何処がよ、よね」
彩夏もその部長を見ながら琴乃に応える。
「最早」
「そうよね、明らかに」
「ゲリラライブっていうけれど」
「事前に生徒会と顧問の先生にお話をつけて」
その許諾を取り付けないとならない、学校での行事は。とはいっても殆どノーチェックで通っているのだが。
「それで演劇部とかにも話をして服も借りて」
「だからね」
「どう見てもね」
「ゲリラじゃないわね」
「よくあるみたいなのじゃね」
タレントがする様なものではなくなっているというのだ、こうした話をしつつだった。
一行は先に進む、部長達はもうその持ち場に行って見えなくなっていた。琴乃達は自分達の持ち場にまで来た。
するとだ、そこにもう楽器があった。美優のドラムに里香のキーボードが。その二つの楽器を見てだった。
美優はだ、こう言ったのだった。
「用意いいよな」
「そうね、本当に」
里香も美優のその言葉に応える。
「このことはね」
「じゃあ早速な」
「ええ、楽器について」
そしてだというのだ。
「はじめましょう」
「皆もそれでいいよな」
美優は里香だけでなく他の三人にも声をかけた。
「今から」
「それじゃあね」
「早速」
周りはもうギャラリーで囲まれている、演奏がはじまるのを今か今かと待っている。そして五人はポジションにつき。
そのうえでコートを勢いよく脱ぎ捨てて妖怪の衣装になった、そのうえで。
演奏をはじめる、すると周りは瞬時に活気付いた。琴乃はそのギャラリーに対して笑顔でこう言うのだった。
「皆、じゃあ今からね!」
「ああ、聴かせてくれよ!」
「待ってたからね」
「いや、待ってたはないでしょ」
その言葉にだ、こう返した琴乃だった。少し苦笑いになって。
「いきなりやるんだから」
「あっ、そうか」
「そうした設定だったわね」
「言われてみればな」
「そうだったわね」
ギャラリーも琴乃の言葉に応える、あくまでゲリラライブなのだ。
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