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戦国異伝

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第百六十話 四人の男達その九

「必ずな」
「そう見込んで下さるのですか」
「御主は只者ではない」 
 森は大谷の目を見て言う、澄んでいるが強い目の光だ。
「おそらく百万の兵を率いて存分に戦える」
「ですからそれは」
「買い被りではない、御主ならな」
 百万の大軍を思う存分動かせるというんだ。
「戦える、だからな」
「勝てますか」
「この戦でもな」
「この戦のことはわかるな」
「はい、殿が来られるまでです」 
 大谷もそのことは把握していた、この天王寺の戦は勝つ必要はないのだ。少なくとも敵を退けることはなのだ。
「それまで持ち堪えるだけです」
「それならばわかるな」
「このまま防げば。一日か二日」
 それだけだというのだ。
「守れば」
「そういうことじゃ、わしにとっては近江の時と同じじゃ」
 森はにやりと笑ってこうも言った。
「守ればよいからな」
「殿が来られるまで、ですな」
「殿は来られる」
 絶対にだとだ、信長を完全に信じているからこその言葉だ。
「だからな」
「ここは、ですな」
「守る」
 そうするというのだ。
「一日、若しくは二日な」
「おそらくですが」
 ここで大谷の目が光った、そして言うこととは。
「殿は明日にでもです」
「来られるな」
「こうした時の殿のお動きは特に速うございます」
 これは実際にだ、家臣や弟達、兵達を助けに行く時の信長の動きは驚くまでに速い。大谷もそれを見ているからこそ言う。
「ですから」
「そうじゃな、それではな」
「おそらく明日の昼までには」
 信長は来るというのだ。
「我等はそれまでです」
「守ればよいな」
「それだけです」
 こう森にも話す。
「ですから」
「そうじゃな、それではな」
「守りましょう」
 その明日の昼までというのだ。
「そうすれば我等は勝ちます」
「ではな」
「はい、ただ」
「ただとは?」
「どうもです」
 ここからはだ、大谷は曇った顔で述べた。
「あの者達は逃げるにしてもです」
「紀伊に逃げるか」
「そこから来ておりますし」
 それでだというのだ。
「紀伊に向かって逃げるかと」
「そうか、ではな」
「石山攻めですが」 
 それはというと。
「残念ですが」
「諦めるしかないか」
「そう思います」 
 大谷はその曇った顔で森に述べる。 
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