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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第三十四話『思うが故に』

 
前書き
お久し振りです、PCが戻ったことにより執筆を再開させていきます。今までお待ちしていた方々、本当に申し訳ありませんでした。そして今回久方ぶりの執筆ということで、文などおかしいところございますでしょうが、ご了承ください。 

 
「……ここは」


重い瞼を開けるラウラ。真っ先に視界に入るのは夕焼けに染められた天井と白いカーテン。
ラウラはおぼろげな意識の中、自分の状況を把握する。


「私は確か……」

「目を覚ましたか」

「!?」


カーテンの向こうからスウェンが姿を現し、ラウラは疲労によって重く感じる身体を無理やり起こす。


「た、隊長……私は一体……」

「突然だが、ラウラ、VTシステムについて知識はあるか?」

「確か……条約で開発などが禁止されているシステムで……まさかそれがレーゲンに!?」


静かに頷き肯定するスウェン。


「だが今はもう心配は無い、機能が完全に止まったのが確認できた。安心しろ」

「は、はい……」


暗い表情でラウラは顔を伏せる。スウェンはそんなラウラを見ながら覚悟を決めたように


「ラウラ、すまなかった」

「?」


スウェンは当然頭を下げ、謝罪の言葉を口にする。ラウラはいきなりのスウェンの行動に焦りを見せる。


「どうしたのですか、隊長! 隊長が私に謝ることなど……」

「いや、俺は……俺はお前の事を避けていた」

「え?」


何時も以上の真剣な表情のスウェンはまっすぐにラウラを見つめる。


「軍とは……部隊とはどのようであるかは知っていたはずだった。私情を持ち込むなど言語道断、それをわかっていながらも俺は、モンド・グロッソの時あのような行動をしてしまった。俺にとってシュバルツェ・ハーゼは初めて出来た俺の居場所だと感じていた。初めて俺の事を必要としてくれる人間達が居た。俺はそんな場所を壊したくは無かった」


微かに震えるスウェンの拳。搾り出すような声で言葉を続けた。


「俺はあんな行動を犯してしまった。もう、部隊の皆が今まで通り接してくれないのではないかと怖くなった。だから俺は誰にも告げず部隊を去った。そしてラウラ、お前が学園に来るとは予想もしていなかった。何よりも……お前が昔と何ら変わり無く、俺に接してきてくれたことが……嬉しかったんだ。けどそれと同時に最悪な事ばかりを想定してしまい俺は恐怖していた……だが今回の件で気づいた。お前は本当に俺の事を慕ってくれたんだと。そして俺のせいで、お前があんな事になってしまったんだと気づいた。俺は取り返しのつかない事をした……本当にすまない」


再び頭を下げるスウェン。ラウラはそんなスウェンの姿を見て、どう言葉を掛けてよいかわからなかった。だが


「……隊長、頭を上げてください。私があのようになったのは私の責任です。隊長には非はありません」

「ラウラ……」

「安心してください。私、いえ、私達シュバルツェ・ハーゼは隊長がどのような選択をしてもそれが正しいと信じています。私が言うのもなんですが、隊長は深く考えすぎなのですよ。けど、よかったです。隊長は昔と何ら変わりの無い、私達の『スウェン隊長』だったという事がわかって安心しました。私達は何があっても隊長の名の下にあります」


震えていた手をラウラは優しく包み言う。スウェンは微笑を浮かべながら


「……ありがとう、ラウラ。お前が俺の部下で本当に良かった」

「そ、そんな……そこまで言ってくださるなんて……あ、あの隊長」


頬をほんのりと赤く染め、ラウラは視線を外す。


「あの時言ってくださった……その、私の事を『守る』というのは本当ですか?」


その様子は年相応の少女。照れながらに言うラウラをスウェンは新鮮な感覚で見ていた。スウェンの返答は既に決まっていた。



「ああ、俺はお前を守る。絶対にだ……もう二度と、仲間を失いたくは無い」

「え?」


最後の言葉が聞き取れなかったラウラだが、スウェンは背をラウラに向け


「すまないが、俺はそろそろ行く。お前も身体を安静にした後部屋に戻れ」

「はい! 隊長!」

「いい返事だ。それではな」


そう言い残し、保健室を後にするスウェン。残されたラウラはベッドにもう一度身体を倒し


「……~~!!」


先程のスウェンの言葉を思い出し、悶える様に身体を震わせる。


「隊長が……私を守ってくださる……隊長が私の事を見てくださる……こんなに嬉しい事はない。私も隊長の意志に答えねば!!……スウェン隊長」


ラウラは胸に違和感を感じ抑える。だが痛みなどではなく、不快感も感じない。ラウラがスウェンの事を思うたびにその違和感は続く。


「な、なんなのだ……この言いようの無い感覚は……けど、嫌ではない……な」




/※/





保健室から出たスウェンは少し進み、立ち止まる。


「……ネーベル、居るか?」

「此処に」


物陰から一人の少女が姿を現す。


「頼んでいた件についてだが」

「はい、まず結果ですがご安心を。VTシステムがレーゲンに積まれたのは、夫妻がストライカーシステムを搭載させた後のようです。夫妻はVTシステムに一切関与しておりませんので」

「わかった……お前達には苦労をかける」

「……我等、『ガイスト・シュメルツト』を何なりとお使いください。……人が来たようです、私はこれで」

「ああ」


その少女は一瞬にして姿を消し、少女の言葉通り、一人の少年…いや少女がスウェンの方へ来る。シャルルのようだ。


「スウェン、ラウラは大丈夫?」

「ああ、先程まで話していた。身体に異常は無いようだ」

「そっか……ならいいんだ。それよりスウェン!」


突然シャルルはスウェンの手を掴み歩きだす。


「デュノア、一体何のつもりだ?」

「いいから黙ってついてくる!」

「……了解した」


言い様の無い威圧に思わずスウェンは黙りこむ。その道中に一夏が居たが。


「あ、スウェ――」

「一夏! 後でね!」

「お、おう……」


一夏も同様、シャルルの威圧に圧されて一歩引きながらに静まり返る。


「何なんだ……一体」








シャルルに強制的に自室へ連れられたスウェンだが全く心当たりがないため唖然とした表情をする。


「デュノア、一体なんの真似だ。何があったというのだ」

「ほほう、自覚がないみたいだね、スウェン。なら教えて上げる」


シャルルは机をバン!と叩き。


「何であの時通信を一方的に切ったの!!僕だって何か手伝えることあったかもしれないのに!」

「……」


スウェンはその程度の事でか。と思わず口走ろうとしたが、口は災いの元、喉の手前で押し止める。


「……通信を切った事に対しては本当にすまないと思ってる。だが、こればかりは俺とラウラの問題だ。デュノアが関わることではない」

「うっ……それはそうなんだけど……け、けど!少しは頼ってくれてもいいと思うんだ……確かにスウェンとラウラの問題かもしれないけど……それでも僕にも何かできたかもしれないんだ」


俯き、小さな声でシャルルは続けた。


「前に言ったでしょ、友達は支え合うものだって……スウェンが僕の事を支えてくれるのは嬉しい。だけど僕にも、もっとスウェンの事をを支えさせてよ」

「デュノア……」


その言葉を受け、スウェンは


「……俺は確かに考えすぎなのかもしれないな。友人を……失いたくないがために、頼れず、自分一人で抱え込み解決しようとしてきた。俺はもう独りではないというのに……」

「スウェンの気持ちは嬉しいよ。けど頼ってくれないとやっぱり寂しいよ」

「ああ……これからはなるべく抱え込まないよう努力はする。なるべく……友人に頼るようにしよう」

「うん!それが一番だよ!」


満面の笑みでシャルルは言いスウェンはその笑みを見て自然に口を緩ませた。








そして同時刻、ドイツのとある施設にて。


「シュバルツェア・レーゲンに搭載したVTシステム、起動は確認できましたが、例のスウェン・カル・バヤンがシステムの起動を停止させたようです」

「ふん、黒ウサギ……シュハイクのお気に入りは随分と余計なことをしてくれる」


悪態をつく白衣の男。男は再び鼻をふんとならし


「まあいい、システムの研究続行だ。政府とてこの施設を認知することはまず不可能……」


その時、耳をつんざくような音が男の襲う。緊急時に発令するサイレンだ。


「なんだ!何が起きている!」

「施設上空に所属不明の浮遊物体が施設に攻撃しているようです!」

「なにぃ!?」


男はすぐにモニターを見ようとするが、外部のカメラは既に破壊され状況が掴めない。


「どういうことだ!!防衛装置は!」

「ダメです!第三、第四装置も破壊!っ!?ぐわぁぁ!!!!」

「なっ!?ぎゃあああああ!!!!」


天井が崩れ、二人の男は下敷きとなる。天井が崩れたことにより空が見え、月の光が施設に差し込んだ。


「な、なにがぁ……!?」


意識が途切れるなか、男は目にする。月の光よりも更に輝く、その光に。


「て、『天輪』が何故っ……!」


その言葉を最後に男は意識を閉ざした。そして天に瞬く輝きは何処かへと飛び去っていった。



 
 

 
後書き
ラウラとの隔たりを崩したスウェン。そしてドイツに現れた謎の物体。
それは一体なんなのか、次回お楽しみに! 
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