ハイスクールD×D~進化する勇気~
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第二十六話
「イリナ……ヴァーリ……?」
光が二人を包み込むと……その光が弾けて二人が姿を表した。
「っ!この感じ……」
と、アーシアが何かを感じ取ったかのような言葉を発する。
「アーシア、どうした?」
「この感じ、覚えがあるんです……これは、そう……天使を受け取った時の感じです!」
っ!天使だって!?
「ヴァーリちゃん……」
「イリナ……」
二人はそれぞれ顔を向かい合わせると頷き合って
「「いきましょう!!」」
同時にそう言うと、二人共手を振り上げた。
そうすると二人共服装が変わった。
ヴァーリはトップス、ボリュームがある袖にボレロ状の光の帯、光のフリルがあるスカートといった光のドレスを身に纏った、まるで歌手のような恰好だ。
イリナは白いドレスとスカート、頭部を囲う浮遊するリングから流れるベールのウェディングドレスのような服装だ。
「今、ここに契約は成された……来たれ、全てを支配せし歌声よ。我が声で味方には鼓舞を、敵には絶望を……その名は……破軍歌姫!!」
「今、ここに契約は成された……来たれ、天使の象徴。その光は絶望を、そして少しの希望をもたらす物……その名は……絶滅天使!!」
そう二人が唱えると……二人の雰囲気が変わった。
ヴァーリの後ろには光の鍵盤がある巨大なパイプオルガンが、イリナにはいくつもの細長い羽状のパーツで構成される光の王冠が現れる。
「あれが、天使……」
「間違いありません、天使です……!」
「何っ?あの大戦を終結に導いた天使か……面白いではないか!」
そう言うとロキは俺の隣を通りすぎて二人に迫る。
「イリナ、ヴァーリ、逃げろ!!」
「大丈夫だよ、イッセー君!私が相手をするわ!」
イリナはそう言うと……王冠の形を翼に変えた。
そして……イリナの姿が消えた。
「なに、がっ!?」
と、ロキがイリナがいなくなった事に驚いていると衝撃を受けたのか苦しむ声を上げる。
「まさか、高速で移動しているのか!?しかも私の感知出来ない速度だと!?」
ロキの言う通りかもしれない。イリナの姿は見えない。それにイリナの頭上の王冠の形が変わっていた事から……あの天使は王冠の形を変える事によって能力を変えるのかもしれない。
「イッセー君!」
そう言って近づいてきたのはヴァーリだ。
「痛む?」
「いや、平気だ」
「ちょっと待っててね」
ヴァーリはそう言うと鍵盤を操作して歌い始めた。
「破軍歌姫、鎮魂歌!」
その歌声を聞いていると……今までの疲れが一気に取れたような感覚になる。
「ヴァーリ、これって?」
「鎮魂歌は聞いた者に対する沈痛作用のある歌を歌うんだ。といっても沈痛だからね、無茶はしないでよ?」
「ああ、俺も行かないと」
「ダメ、イッセー君はここで待ってて。イリナはイッセー君の為に戦ってるんだよ?」
イリナが……俺の為に?
「だから、安心して?イリナだってもう見てるだけじゃないんだよ?」
「ヴァーリ……わかった」
イリナ、負けるなよ……!
イリナSIDE
すごい……これが、天使の力……!
この絶滅天使、王冠の形を変えて能力を変えてるみたいなんだ。
そして今は翼の形に変えて、高速戦闘を可能にしている。
「くそっ!この僕にも感知できないスピードとは……流石は天使という所か!」
戦っているロキは私の姿を視認出来ない事に苛立っているのかどんどん大雑把な攻撃になっていく。
攻めるなら……ここっ!
私は瞬時に王冠の形を元に戻す。
「っ!そこか!」
ロキが私の姿を視認するけど……遅いよ!
今度は王冠の形を円環状に組み合わさって幾千幾万もの光の粒をばらまく。
「日輪!!」
「?なんだ、これは……」
そしてロキはそれらに触れる。すると……爆発した。
「がっ!?ま、まさか……これら全てが爆発するというのか!?これが、天使の力か!」
「私は負けない……!イッセー君は、私と皆で守るんだから!!」
「がっ!?ぐっ!がはあああぁぁぁっ!?この、人間風情があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ロキは怒り狂いながら私に向かってくる。
爆発には目もくれずに。
(やっぱり、これじゃ倒せないか……だったら!)
私は王冠の形を再び王冠の形に戻す。
そして両手を合わせてロキに向ける。
「イリナ!!私の援護、受け取ってね!」
ヴァーリちゃんがそう言って私の近くまでやってくる。
「破軍歌姫、行進曲!」
その歌声を聞いた瞬間に力が漲ってきた。
ありがとう、ヴァーリちゃん……!
「必ず、決めるっ!」
「うおおおおおおおっ!僕は北欧神話のロキだ、人間如きに負ける筈がないんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「その驕りが貴方に負けをもたらすんだよ!これで、終わり!」
光が収束するのを感じる。
「砲冠!!」
そう叫ぶと私の手から光り輝く砲撃が発射される。
「なっ!?がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
その砲撃に呑まれたロキ。
「す、すごいね、イリナのこれ……」
「う、うん……私もビックリだよ……」
これは、無闇に使ったらダメだね……。
天使の人格になってた人の言う通りだ。
力を持つには覚悟が必要……でも私は力に飲まれたりしない。絶対に……!
「は、はははは……なぜ神は自身を殺す程の力を秘めた神器を……そしてなぜあの者共はこのような絶対の力を残していったのだ……?」
ロキは黒く炭のようになっており……その足元からボロボロと崩れていっている。
「そんなの、わからない。でも天使を残した人に関してなら少しだけわかる気がする」
隣でヴァーリちゃんがそう言う。
「天使を残していった人達は……こんな事が起こる事を予期してたんだと思う、何でかは知らないけど……」
「そしてその対策として自分達じゃなくて自分達の力の源である天使を封印する形でこの世界に残した……」
「…………そうか、あの、時喰みの魔女か……なるほど、奴ならこうなる事がわかっていてもおかしくはない……」
時喰みの魔女?一体誰の事なんだろう……?
「…………これはせめてもの良心だ、教えておいてやろう。天使は全てが全て、優しい物ではない。時を操る天使、奴には気をつけろ、奴は……何を考えているのかまったくわからんからな……」
そう言ってロキは消滅した。
「時を操る天使?」
「そんな天使もいるんだね……」
でも、気をつけろってどういう事なんだろう……。
この時はこうとしか考えられなかったが……でも私は後にこの言葉を自分で実感する事になる。
時を操る天使、刻々帝の事を……。
SIDE OUT
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