聖戦のデルタ
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第七話『ソロ』
前書き
量産軍用人型兵器C-110によって、強制的ワープの被害にあった小鳥遊。
小鳥遊 翔馬は軍事都市アライアより北西に約7kmの位置にある森にいた。
泰河はその後、C-110を撃破。
行方不明の小鳥遊を探すため、奔走する。
恵奈は美弥妃と列車に乗り込み、榊町に到着。榊町で行動を開始。
近未来能力ファンタジー第六話。
***
小鳥遊翔馬はC-110によって”飛ばされ”、その後、森で出くわしたディヌアの兵士と3度ほど戦闘した。
小鳥遊は3度の戦闘を終えてもなお、歩みを止めなかった。
4月4日 22:00
小鳥遊は未だにアサルトライフルを持っていて、森にいた。
小鳥遊は一休みできそうな場所を確保すると腰を下ろし、泰河が無事でいる事を信じ、多機能腕時計を使い泰河に電話をした。
数秒の沈黙が訪れた……。
小鳥遊の脳裏を嫌な予感がよぎる。
だが、すぐに
『もしもし、翔馬か!?』
と泰河の声がしたので、内心ホッとする。
「あぁ、泰河だな。無事で良かった……」
『なんとかな。お前がいなくなって焦ったけど、なんとかなるもんだな』
快活な笑い声が腕時計を通して聞こえてきた。
「泰河、今どこだ?」
『相変わらず森の中だ。一寸先は闇だな』
「俺も森の中だ。多分泰河とはあまり離れてない」
『”あまり離れてない”って、なんで分かるんだよ?』
「敵兵に喋らせた(拷問的な意味で)」
『そ、そうか……』
「……あ、そうだ。あの人型兵器は結局、なんだったんだ?」
『あ〜、やっぱり敵勢力だった。強制覚醒装置っていうのを装着しててだな……』
泰河の言葉を遮り、
「知ってる」
『そっか……って事はお前もあれから戦闘したのか?』
「あぁ、3回。敵の持ってた端末に強制覚醒装置についての資料が載っていた」
『大変だったな……』
泰河の声が一瞬、重くなった。
「大変だった。それよか泰河」
『ん?』
「俺はこのまま榊町に向かうけど、泰河はどうする?」
『えっ!?お前、このままソロで榊町に行けるのか?』
「行ける」
『そ、そっか。じゃあ俺も榊町に向かう。恵奈とは連絡とれたか?』
「いや、さっぱりだな……電話しても応答がない。不在着信みたいになる」
『そっちもか……俺も何回か電話かけてるんだけど、繋がらねぇんだ』
「なるほど。泰河の方は榊町までどのくらい日数かかる?」
『ん〜、2日ぐらいかな。6日には榊町に着くと思うぜ』
「分かった。俺は7日に着くと思うから……」
小鳥遊が少し考え込んでいると
『俺が7日まで待つ。それでどうだ?』
「そうしてもらえると助かる。
っつかありがと」
『んじゃあ決まりだな。7日に榊町で!』
「ああ……」
小鳥遊が頷くや否や、電話がブツッと切れた。
小鳥遊は、黒く染まった夜空を見上げた。
(今日はもう遅い。明日に備えて寝るか……)
小鳥遊は適当に寝転がると早々に寝息を立て始めた。
4月5日 5:30
小鳥遊は、夜明けと共に行動を開始した。
できる限りの全速力で榊町に向かう。多機能腕時計の地図機能を使えば迷子にはならない。
昨日からずっと森の中を移動している。
今日も森の中を移動し続けるのだが。
今日、森の中を歩いていて思ったのだが、
(徐々に敵兵の数が減ってきている)
軍事都市アライアから離れれば離れる程、敵兵の数が少ない。
それに装甲戦車の姿も見えない。
だが敵兵が完全にいない訳ではない。
小鳥遊は榊町に向かう途中、森の中を流れる川にぶつかった。川幅は10mくらいで、川の深さは70cm程に見える。
榊町に行くためにはこの川を越えなければならない。
川の流れは緩やかなため、歩いて渡ることは容易にできるだろう。
小鳥遊が川に片足を踏み入れた時、川の上流からボートが流れてきた。
ボートには6人の武装した兵士が乗っていた。
一目でディヌアの兵士だと分かる格好をしていた。
兵士の1人が小鳥遊の存在に気づいたようで、こちらを指差して喚きながらボートから降りた。
小鳥遊はアサルトライフルを構え、ボートに向かって容赦無く発砲した。
連続した銃声が森に響いた。
銃弾がボートに直撃した。
ボートはゴム製だったようで、銃弾がゴムに複数の穴を空けた。
ゴムボートが気の抜ける音をたてながら萎む。兵士達はゴムボートから急いで降り、各々が銃器を小鳥遊に向ける。だが遅い。
小鳥遊は再び引き金を引いた。
銃弾が兵士達を襲う!
だが兵士達は身体を左右に反らし、銃弾を避けた。
その様子を見た小鳥遊は、引き金に指をかけたままジリジリと後退する。
兵士達は「おとなしく投降しろ!」と言いながら詰め寄ってくる。
「投降すりゃあ、保護するとでも言うつもりか!!」
小鳥遊が怒鳴る。
「そうだ」
兵士の1人が静かに言った。
「戯れるな!!」
小鳥遊がアサルトライフルを構えて突進した!小鳥遊がアサルトライフルの引き金を引く。
兵士達は小鳥遊の突進に少々戸惑いながら、各々発砲した。
小鳥遊の放った銃弾は兵士の1人に直撃し、兵士を戦闘不能にした。
戦闘不能になった兵士に、他の兵士の1人が駆け寄る。
小鳥遊はその兵士の腰に装着してあった手榴弾に注目し、その手榴弾に向けて発砲した!
小鳥遊の銃弾は手榴弾に直撃し、手榴弾の安全ピンを弾き飛ばした!
兵士達は、その事に気づいていない。
4人の兵士達は小鳥遊に対して未だ発砲を続けているが、有効弾は未だ無いようだ。
小鳥遊がほくそ笑むと、兵士の1人が装着していた手榴弾が爆発した!
破片手榴弾だったようで、爆発と共に破片が飛び散った。
爆発は6人の兵士達に襲いかかり、兵士達の身体をバラバラにした。
兵士達の爆散した身体には破片が突き刺さっていた。
小鳥遊にも破片と爆風が襲いかかったが、身体がバラバラになるほどではなかった。
爆風が小鳥遊を4、5m後方に吹き飛ばし、破片は直撃こそしなかったものの服を切り裂き、小鳥遊の頬を掠めた。
辺りには、兵士達の血肉が飛散し、異様な匂いが漂っていた。
小鳥遊は異臭とグロテスクな光景を五感から受け取り、吐き気を感じ川へ歩み寄った。そして屈み込むと盛大に嘔吐した。
小鳥遊は川の水で口元を洗い、血を洗うと、川を渡り榊町に向かって歩みを始めた。
後書き
強制覚醒装置……ディヌアが新開発した、『能力が使えるようになる装置』である。人に装着することも、量産人型能力兵器に装着することも可能。
この装置を付けることで手に入れた能力を『外付け能力』と呼ぶ。
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