とある科学の第六位
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第一話『紫の第六位』
前書き
『とある科学の第六位』始まりました!
この話は、小説情報に書いてある通り、第六位の視点で始まる物語です。
では よろしくお願いします!
1月1日
学園都市・第七学区には『窓のないビル』がある。
窓のないビルは、統括理事長アレイスターの鉄壁の要塞&居城となっていて、その名の通り窓がなく、ドアもない。
「いやー、疲れた疲れた。何年ぶりだろうね。外の世界は♪」
中性的な声だった。
声の持ち主は、見れば目が痛くなるほどの白い病衣を着ていて、紫色の腰まで伸びた長い髪の毛が異質さを漂わせている。肌は白く、目の色は紫色で、表情は柔らかいが、それが逆に恐ろしさを感じさせる。
優美な少年のような顔立ちをしている。一人称は『私』が似合いそうなものである。
私は今、とんでもない事をしているのだろう。
私はたった今、窓のないビルの壁を溶かし、”破壊”し終えたのだから。
『溶解性毒素』を使って……
ちなみに私は『学園都市・レベル5・第六位』だ。
だが今まで、窓のないビルに幽閉されていた。窓のないビルで、暗くて音も聞こえない世界に閉じ込められていた。
退屈だった。つまらなかった。何も見えなくて、聞こえなくて、触れなくて、匂いがなくて、舐めても味がしない、そんな世界だった。
でも私は、あるとき暗闇の中にまばゆい光を見た気がした。その光は暗闇を自由に飛び回っていて、
その光は、私に自由を教えてくれた気がした。
だから私は窓のないビルの外に出てみようと思った。”思い立ったが吉日”ということわざがあるから、私は、大好きな『溶解性毒素』を使って、暗闇に穴を開けて、窓のないビルの外に出ることにした。
そして今、ついに私は壁を溶かし、破壊して、外に出る事に成功!
ついにアレイスターの監視下から抜け出せた!
と思ったのも束の間、学園都市がアレイスターの監視下にある以上、私は学園都市を抜け出さなければならない事に気付く。
というわけで、私は学園都市の外壁に向かってテクテクと歩き出した。
商店街を歩いて、何処ぞの学生寮の前を通って外壁に向かって歩くのだが、ふと周囲の人々の視線が自分に集中していることに気付く。
最初は気づかなかったが、自分は病衣を着ているわけで、周りとは違う雰囲気を纏っている事に気付き、私は近くにいた学生から”強引に制服を奪い取り”さも自分の物であるかのように着用した。病衣は近くの草むらに放る。
制服は女性用だった。『常盤台中学』と刺繍がほどこしてある。
一方、制服を奪われた女学生は突如現れた『制服奪い去り魔(私)』に戸惑いながら下着一丁で泣き叫んでいた。
だが私はそんなのお構いなしに歩みを続ける。
しばらく歩いて、私は重大なミスをおかしてしまった事に気付く。
ーー私は迷子になってしまった。
気が付くと周りには女学生ばかり
で、男が一人もいなかった。
女学生で賑わう広場にいた。
現在、私は『学舎の園』にいるようだ。
迷子になって立ち往生していると、
茶髪のツインテールの女学生に声をかけられた。
「ちょっと。そこのあなた、何をしているんですの?名前は?」
鈴の音のような声だった。
「天野 叢雲。それが私の名前です」
それを聞いた茶髪ツインテールは、ギョッしたように言った。
「す、すごい名前ですわね。”天叢雲剣”って……三種の神器!?(漢字見えてない)」
茶髪ツインテールが頬をピクピクと引きつらせながら言う様は、私には不思議に思えた。
けれど、私は茶髪ツインテールに名前を聞いみた。
「あなたの名前は……?」
すると茶髪ツインテールは疑念を振り払い、腕を組みながら自慢げに言い放った。
「私は風紀委員の白井 黒子ですのよ!」
「風紀委員なんですか?すごいですね!尊敬します!」
風紀委員という言葉に聞き覚えはあった。確か『学生たちによる学園都市の治安維持機関』みたいなモノだった気がする。
白井黒子は思う。
(この”天叢雲剣”さんは、怪しいところが多すぎますの。
普通なら風紀委員と聞いても驚きはしないし、何より、わたくしの腕章を見れば一目でわたくしが風紀委員であることはわかるはず。
そして男なのか女なのか分からない中性的な声。やや声の高い男子か、やや声の低い女子か。
そして妙に制服のサイズが身体に対して小さい。
極めつけに、”天叢雲剣”と言う名前!
怪しすぎますの……!)
白井黒子と名乗る茶髪ツインテールは私に生徒手帳の提示を要求してきた。
私は制服のポケットを探り、生徒手帳を差し出した。
すると白井黒子は生徒手帳に素早く目を通し、額に汗を浮かべて言った。
「あなたは一体、誰ですの!?」
生徒手帳に記載されていた顔写真と私の顏が違うのと、生徒手帳に記載されていたは生徒名と、私の名前が一致しないためだろう。
叢雲は「ですから私は……」と右手を白井黒子に向かって伸ばし、
「天空の”天”に野原の”野”に天叢雲剣の”叢雲”で、天野叢雲ですよ」
と言い終えた直後、
叢雲の右手の指先から紫色の物体が鋭く伸び、白井黒子の左肩を貫いた。
「な……んで……すの……?」
白井黒子の左肩から真紅の血が噴き出していた。
私が少し右手を動かすと、白井黒子の左肩は深く抉られ、彼女の顏が苦痛に歪む。
「白井黒子さん……でしたっけ?」
叢雲はつまらなさそうに言った。
「職務質問は必要以上にしないことです」
その言葉を最後に、叢雲は右手及び紫色の物体を引き抜いた。
左肩から紫色の物体が引き抜かれてもなお出血は止まらない。
もう白井黒子は不思議と痛みを感じていなかった。理由は分からないが、天野叢雲の何らかの能力が影響していることは確かだった。
私は白井黒子の出血の様子を見ると、迅速にその場から立ち去った。
やや足早に道路を歩き、思考を巡らせる。
(白井黒子は恐らく死なないだろう。彼女は現役風紀委員だし、周りに女学生がたくさんいたから、誰かが救急車を呼んで彼女は助かる。
そして私は学園都市から脱出し、万事解決……)
***
細い路地にいた天野叢雲はふと足を止めた。気がつけば叢雲は第10学区にいた。もっとも、本人はその事に気づいていないようだが。
ちなみに第10学区とは、原子力研究施設や細菌関連研究施設など、様々な研究所が集約されていて、大規模廃棄物処理場や実験動物処分場なども存在している学区だ。学園都市唯一の墓地もこの学区にあり、少年院もこの学区に設置されている。
叢雲が足を止めたのはもっと別の理由だった。
(尾行されている……)
叢雲はため息をつくと、ゆっくりとした動きで後ろを振り返った。
「どなたですか?さっきから私の後ろでチョロチョロしているのは」
叢雲の視線の先、数10メートル離れた交差点。
一台の軽トラックが左折し、叢雲のいる方へ前進し始めた。
そして、あろうことか躊躇なく速度を上げる。叢雲は軽トラックを睨みつけ、
「無人トラックか……」
その間も、軽トラックは速度をあげる。
軽トラックが叢雲に触れるその瞬間!軽トラックが霧散した。一欠片も残さず。だが叢雲は指一本動かしていなかった。
叢雲は涼しげに微笑む。そして口を開く。
「学園都市第一位、一方通行」
「いつから気づいてたンだ?」
気が付くと、叢雲の背後に1人の少年が立っていた。
そう、
一方通行《アクセラレータ》が。
後書き
この物語は、第六位視点で描かれています。
第六位『天野叢雲』 プロフィール
性別 『男女という枠に当てはまらない。第3の性、あるいは中性であると思われる』
職業 不明
身長 168cm
年齢 17歳
出身地 日本
所属サイド 科学サイド
レベルは 超能力者(レベル5)
能力 不明
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