ボロボロの使い魔
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番外『前を向いて、強く』
前書き
番外は基本的に多ライダーを使った一発ネタです
その男には何も無かった
気づけば見知らぬ場所にいた
だが、そもそも『見知った』場所さえ彼はまともに思い出す事が出来なかった
自分は誰だったのか
一体何故こんな所で倒れていたのか
不鮮明で曖昧な記憶は、何も答えてくれなかった
どことも知れない森の中で当ても無くさまよい歩き続けた男はやがて見つけた湖で更なる絶望を 味わう事になる
喉の渇きを癒やすべく膝を突き見下ろした濁り一つ無い湖に映し出された自分の姿
それは『人』では無かった
『人』としての形を成す、それぞれのパーツは彼にもあった
だがその全ては普通の『人』では決して有り得ない歪な形の物で揃えられていた
その姿を一言で表すならば
『奇怪』
微かに残る人としての記憶
しかし人では無い自分
あやふやな記憶
しかし噛み合わない今の現実
自分は一体何者なのか
自身の存在に悩み、嘆いた
絶望と苦悩に打ちのめされ生きる気力さえ失いかけていた彼は野垂れ死ぬ寸前一人の少女と出会う
少女は倒れていた男を介抱し自分が住んでいる、小さな村の家に今は只『怪人』でしかないその 男を住まわせ世話をしてくれた
その少女の慈愛は全てに絶望していた男にとってまさに慈雨と呼べるものであり 再び気力を取り戻すに十分なものだった
そして、もう一つ
男は自身の名さえ失っていた
そんな男の為に少女は考え彼に名前を与えてくれたのだ
失った過去に捕らわれる事無く前を向いて歩けるように強く生きて欲しいと願いを込めて
実際、その男は強かった
常軌を逸した彼の戦闘力は自身に名と安らぎを与えてくれた少女 そして少女が住む村を襲う悪党どもを打ち払い護り続けた
今まさに、そうであるように
幼い子供達を逃がすため自身は逃げ遅れてしまった少女 悪党達は値踏みするかのような視線で少女の容姿を舐め回すように眺め そして低俗な笑みを浮かべ合う
だがそんな彼等の表情は、突如現れた乱入者により全く別のものになった
彼等の顔に浮かぶもの
それは得体の知れない怪人に対する嫌悪と恐怖
しかし、少女の表情はそれとは違う
先程までの不安な表情など、もはやそこには欠片も無い 少女の顔に浮かぶもの
それはかけがえのない友人に対する信頼と親愛
そんな彼女を守るべく背に庇い男は悪党どもに向き直り、対峙する
その男には何も無かった
本当の名前も、体も、過去さえも
何もかもがあやふやな存在
だが、そんな自分を支えてくれた少女との村での暮らしは男の荒み、疲れ果てていた心を潤し癒 やしてくれた
そして、それを護りたいと願った時
男は眠っていたものを一つ取り戻す
『正義』
今の彼に唯一残る確固たる想い
その信念に導かれるまま男は言い放つ
「貴様達に…生きる資格は無い!」
雷光纏いし蹴撃は立ちはだかるもの全てを貫く
砕ける事無き彼の信念そのままに
男は戦い続けている 記憶を失う前も、そして失った今も
ずっと、ずっと独りで
だが、彼の眼差しは強く前を向いている
失った過去にしがみつく為では無く
自分を頼り、支えてくれる者達の未来を護る為に
男は、戦い続けている
男は、今を生きている
ストロンガーキリュウ次回予告
『そんな作戦…無茶よオヤッさん!』
『だが私は謝らない』
『馬鹿な!ライトニングクラウドの直撃を受けて更に加速しただと!?』
『貴様に…俺の相棒は止められない!』
-今、そのダイナモが全開する-
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