ハイスクールD×D 力ある者
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旧校舎のディアボロス
イッセー初めての彼女
俺――兵藤 一誠は、松田と元浜と共に龍兄さんの申し出を受けた。
「なぁ、イッセー。おまえに兄さんがいるのは聞いてたけど、全然似てないな」
メガネを外し、面を被っている元浜が訊いてきた。
「あれ?言ってなかったっけ?龍兄さんとは家族だけど、血は繋がってないって」
「そうだったのか!?……まさかとは思うが、辰巳ちゃん姉妹もそうなのか?」
防具を全部つけ終えた松田が『いまさら』のことを訊いてくる。
「そうだよ。俺も家族みんな龍兄さんの家に住んでんだよ。……小さい時、色々あってな」
俺がそう言うと、悪友二人は涙を流しながら、俺の肩に手を置いてきた。
「そうだったのか、色々あったのか……おまえは強いな」
「そうだな松田よ。イッセーは強いんだ!そこでだ、こういう作戦があるんだが…」
元浜が俺と松田に耳打ちをする。
「……どうだ?行けると思うか?」
「元浜……おまえ最高だ!」
「……俺もそう思う!」
俺たちはこのあと起きることを、このときは知る由もなかった。
「……四人とも、準備はいい?」
審判には、龍巳が立ってくれている。
「あぁ」
「はい」
「「OKですっ!!」」
全員それぞれが返事をした。
「……始め!」
D×D
私――黒歌は剣道場の隅で四人の試合を見ている。
「……始め!」
龍巳の合図と共にイッセーの友人が龍介の胴と面を狙い、竹刀を横にしてダッシュする。
「「面(胴)いただき!!」」
龍介に逃げ場はない。何というせこ……戦略にゃ。
「……甘いな」
タンッ!
私たち……この場にいる全員が我が目を疑った瞬間だった。
龍介は、その二人の竹刀のわずかな隙間をジャンプして潜り込む。
バシシッ!!
しかもそのときの回転を使い、竹刀を振って二人の竹刀を吹き飛ばした上に、面を叩き込んだ。
「「っぅ~」」
二人は床をのたうち回っている。
「隙ありっ!!」
その直後、イッセーが隙をついて取りにいったけど……。
「……遅い」
龍介はイッセーの竹刀を受け流し、面を叩こうとしたが……。
バシッ!
イッセーはギリギリで振り向いて、龍介の竹刀を受け止めた。
「……危ねぇ~!!もうちょいで地獄行きだった…」
「ほう、俺の竹刀を止めたか」
ギリギリギリ――。
イッセーと龍介が鍔迫り合いになっている。
「白音ちゃんと龍巳の相手をさせられてたから、そう簡単には負けるつもりはないよっ!」
バシッバシバシッ――。
そこからイッセーの猛打になった。
――一分後。
「ふむ、そろそろだな……アクセル」
龍介が呟いた。私はそれを聞き逃さなかったけど。
パーン!!
龍介の姿が少しブレた瞬間、叩いた音がして龍介はイッセーの後方にいた。
トン――カラカラ……。
音がした方向はイッセーと龍介の間、竹刀の先端が落ちていた。
その竹刀の先端は、龍介の持つ竹刀が折れたモノだった。
バッターン!
イッセーが受け身を取らずに前方へ倒れこんでしまった。
ピクリとも動かないイッセー。
「……」
「「「「「……」」」」」
「……動かないにゃ」
私がイッセーを指で突いてもピクリともしない。
「……マジか?」
「……どうやら、屍と化しているようにゃ」
「……っ!!」
冗談なのに、面の中で顔を青くする龍介。
「はぁ、冗談よ。ただ気絶してるだけ」
「そ、そうか……冗談言わないでくれよ。心臓に悪い」
ちょっとだけ龍介を弄ってみたけど……龍介の顔色が青から白に変わりそうだったので、やめてあげたにゃ。……仕返しされたら怖いし。
「……龍介、少しやりすぎ。イッセーが気絶してる」
「…イッセー兄さまを連れて帰ってもらえますか?お仕置きは出来そうもないので」
……ってことは、二人のお仕置きは決定なのね?
「「ギヤァァァァァァ!!!!!」」
……早速、二人のお仕置きが始まってるわね。
「よっと……」
いつの間にか防具を脱いで、イッセーの防具も脱がせた龍介。イッセーを背負い、「先に帰ってるから、白音たちと帰ってくれ」と言い残して出て行ってしまった。私はそのとき、龍介が旅立つ前を思い出した。それは、遊び疲れたイッセーを家まで背負って歩いてた龍介。そのときの光景といま目の前にしていた光景が…重なってしまったの。……懐かしい思い出。それは今でも変わらないと、いまの私はそう信じていた。
D×D
痛てて……頭痛がする。
俺は目を開けると、そこには黒い髪が見える。
――この黒い髪って……。
俺はこの髪に心当たりのある人物に声をかけた。
「……龍兄さん、そろそろ下ろしてくれるかな?」
その人物は、遠山 龍介。……俺の兄さんで、今日帰国してきた。
「ん?起きたのか。…気を付けろ、体が重いだろうからな」
龍兄さんは俺を下ろしてくれたが、俺はよろけてしまう。
「…っと…だから言っただろ。気をつけろと」
「ごめん、兄さん」
俺は龍兄さんの肩を借りて立つ。
「ん?いま俺のこと何て言った?」
「え?兄さんって……あっ!」
俺は自分で言った言葉に顔を赤くした。
「…ハハハ、俺もそっちの呼び方のほうがいい。そろそろ歳だからな」
――歳って、まだ19でしょ?
兄さんは、明るい微笑みを見せてくれた。
出国する前のように。
家に帰る途中、兄さんと俺は近くの公園に寄り道している。
「……痛かったか?」
「……」
俺は無言で頷く。
そう……面をつけているにもかかわらず、鈍器で殴られたような衝撃だった……竹刀だけど。
「……ハハハ。あれでも結構手加減したんだぞ?」
「マジで?……じゃあ、どのくらいの割合でしたの?」
「ん?…そうだなぁ、一パーセント前後か?」
「いやいや。…たったそれだけで、あそこまで強いの?」
「それは、修行の成果だな」
「……」
マジで!?修行すると、そこまで強くなるの?
「ねぇ、兄さん。その修行の仕方お――」
「あの……」
俺がその修行について質問しようとしたところで、見覚えのない女の子が話しかけてきた。黒髪を腰の辺りまで伸ばし、結構可愛い顔立ちで俺より一回りほど小さく華奢な体。でも出てるところはしっかり出てるな。
――こんな女の子、知り合いにいたっけ?龍巳と白音ちゃんたちとの付き合いで女の子の知り合いはいるんだよな。でも、俺嫌われてるけど。………この子には会ったことないな。もしかすると、隣にいる兄さんの知り合い?
俺は目の前にいる女の子について頭の中で模索していると……
「あの……兵藤 一誠くん…ですよね?」
え?俺?兄さんじゃなくて?どっかで会ったことあった?
「あぁ、そうだけど……キミは?」
「あ、はい!私、天野 夕麻って言います。お話があって……少しだけ、お時間をいただけますか?」
「おっと……イッセー、俺は先に帰ってる。お邪魔虫は退散ってな?」
「……ごめんね、兄さん」
そう言うと、兄さんは先に帰って行った。……さてと、俺は彼女の話を聴くとしますか。
「……天野 夕麻さんでしたっけ? 俺に何の用ですか?」
「え~とですね、その前に一つお訊きしたいことがありまして…」
そう言うと彼女は、上目遣いで目をうるうると潤ませながら俺を見てきた。あぁ、白音ちゃんみたいでめちゃくちゃ可愛い!!
「兵藤くんって、いま付き合ってる人とか…いますか?」
「ん?いや、そういった人はいないけど……どうして?」
……しかしなんだろう。さっきからなんか歯切れが悪いな。それにこの雰囲気。まるで……いまから告白でもするかのような――。
「本当ですか!?良かった~!……あの!私と、私と付き合ってください!!」
「ほえ?」
――いま、なんて言ったこの娘?!付き合ってください?俺と?
予想通りきた言葉に、腑抜けた声を出してしまった!!
「私、あなたのことが好きです!私と付き合ってください!!」
今度こそはっきり聴き取れた。――って……えぇぇぇ!!!!?俺いま、告白されたのか?告白されたのなんて、人生始めてだよ!家族以外、親しい女の子なんて……今までいなかったから告白されるなんて、一生無いと思っていた!!
「……あのぅ?」
あ~そうだな。返事か……しなきゃマズいよな。人生初めての告白だし可愛い娘だからOKしよう!!
「その前に……理由を、よかったら聞かせてくれるかな?……無理ならいいんだけど……」
「……そっ、それはですねっ……先ほどの剣道の試合を見てて、その……め……れして……」
「ん?一目惚れって言ったの?」
「っ!!は、恥ずかしいな……女の子にここまで言わせないで下さいよぅ」
……顔真っ赤にしてる。うん、そろそろ返事してあげようかな。
「OK、いいよ。俺は兵藤 一誠。よろしく」
「……!!あわわぁぁ!!私は、天野 夕麻です!よろしくお願いします!」
俺は、夕麻ちゃんとメアドを交換して帰宅した。
D×D
「……何もなかったな」
俺は、イッセーに接触した女性『天野 夕麻』の行動を、ビルの屋上から白眼で見ていた。
――イッセーも帰路についたし、俺も帰るか。
トンッ!タタタタタタ――。
十数階あるビルを走って降りる。もちろん壁面を。
タンッ…タンッ――。
誰の目にも留まらぬ速さで俺は走る。
帰路についたイッセーの後方にある自販機の陰に隠れ、気配を消してイッセーの後をつける。
ガチャ――。
「ただいま~」
玄関に入っていくイッセーを確認した俺は、近くのコンビニへ行く。
――手ぶらじゃ、甘いもの大好きな龍巳と白音に怒られるからな。
菓子を大量に買って家の中に入った。
「ただいま~。龍巳、白音、菓子買ってきたぞ~」
中に入ると同時に、龍巳と白音に菓子袋を持っていかれた。
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