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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第87話 少女たちは踏んだり蹴ったりなようです


Side 夕映

『では!栄えあるオスティア記念式典警備隊選抜試験を始めまーす!まず志願者の紹介を!

3-C委員長エミリィ・セブンシープと書記ベアトリクス・モンロー!』

『委員長がんばってーー!!』


試験当日。全校生徒が観客と成した中、出場するペアが紹介されて行きます。

中でも委員長ペアが紹介された時の盛り上がりが一番です。伊達にこの学園の生徒で一番の

態度の大きさと自尊心と実力を持ち合わせていないです。


『さぁそして最後に!3-Cユエとコレットの落ちこぼれチーム!どこまでやれるのかー!?』

『ちょっとー、ホントにやるのー!?』『コレット、やめときなー!』

「うぅう、どこまで行っても落ちこぼれ……。」

「心配ないです、コレット!この試験で委員長達に勝てればそんな汚名を返上する事は朝飯前です!」

「そ、そうだよね!ここまで来たんだもん、当たって砕いてやるよ!」


私達の紹介にコレットの心が折れかけましたが、持ち前の根性でなんとか持ち直したです。

・・・こちらを見て不敵に笑った委員長には気づいていないようなので、私だけ笑みを返してやります。

余裕でいられるのも今の内です。見せてあげましょう・・・・・。


「じゃあ私は後衛だね!」

「ハイ、私は前衛で!コレットは盾役に徹してくれればOKです!」

『では各選手!位置についてぇ!!―――スタートッ!!』
ドン!


あなた方が、最強最悪と呼ぶ英雄に培われた私の力を!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

subSide ツェラメル

「ぐぉぉおおおおおあああああああああああああ!」

「くぅううううううううううううううううううう!」

「が、は、あ……!……暫く回復させて。私は集積した情報を人形へ蓄積させるわ。」

「ツェル、休まないと!もう何日無理し続けてると思ってるんだ!」


最終策とナギ・エルザとの共有作業を並行し続けて約三ヵ月。無理が祟ったのか、勝手に造物主姿が

解除されてしまう。こんな事は初めてね・・・。

世界が終焉に向かっている事で魂達の声もかつてより大分強まって、シュウマにも1/3を頼んでいる状況。

でも、今休む訳にはいかない。彼の話が本当ならば、あの英雄の子が一ヵ月足らずで私達の前に立ち塞がる。

・・・普通であれば、あんな子供を気にする事は無いんですけれど。


「いいえフェイト、休めないわ………。主神の"修正力"とか言う力があるのは確かよ。

このままでは私達はあの子とその仲間に倒される。……それに抗う術を、私達は持たないの。

だから、シュウマの策を完成させる以外に方法が無いの。」

「……それは、理解しているよ。けれど君が倒れてしまったら意味が無い。

あと少しだからこそ、休んだらどうかな。シュウマの様子を見に行くのもいいだろう?」

「ふぅ……ええ、分かったわ。少しだけね。」


フェイトがあまりに必死なので、根負けして一緒にシュウマの様子を見に行くことになってしまったわ。

何となく転移魔法を使わずに静かな宮殿を二人で歩く。

・・・こうした時間すら、最近は取っていなかったわね。でも、どうせ一緒に歩くのなら街が良いわ。

そう、フェイトと一回くらいデートと言うものをしてみたい―――


「ね、ねぇフェイ(ドンガラガッシャァァアアーーーーン!!)

「あーー!また負けたぁ!!」

「ホンマにもみじは弱いなぁ、落ち着きが無いにも程があるで~。」

「そうそう。そんなんだと、またノワールさんにお説教を食らうよ?」

「ぬぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!も、もっかい!もっかいだ「お前ら遊ぶんなら他所行けつってんだろうがぁ!

いい加減怒るぞ!」

「……………休憩を入れたのは正解だったかな?」

「そ、そうね……。あぁ、一人で塞ぎ込んで作業していたのが馬鹿みたい………。」


どれだけ真面目にやっているかと思ったら・・・いえ、真面目にやってはいるのだけれど。

皆がジェンガやっている横で、膝にアリアちゃんを乗せながらだけれども!


「ふ、ふふ、ふふふふ。あはははははははは!あーおかしい。私達ってホントバカみたいね、フェイト。」

「ああ、そうだねツェル……。それで?具体的にこれからどうするんだい?」

「どうって言われても、今までと変わらないわ。計画が終わるまで休みは無いわ。」

「ツェル、いい加減に「だから!」え?ちょ、どこに行くんだい!?」


怒りだしたフェイトの手を握って、オスティアへ続く転移門へ引っ張って行く。

そして有無を言わさず転移した先は・・・オスティアの下、魔と死が広がる旧王都の中心。

色々と問題の多い場所なんだけれど―――まぁ、今は置いておきましょう。さぁ!


「フェ~イトっ!」

「うわっ!?え、ツェル、どうしたの?」

「私とデートしましょ♪」

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

『さぁオスティア記念式典警備兵の三年生選抜百キロレース、スタートから3分!

僅差で現在一位はエミリィ&ベアトリクス組!二位はフォン&デュ・シャ組!そしてなんと三位には!

落ちこぼれコレット・ユエコンビぃ!』

「意外としつこいですわね、ユエさんコレットさん!」

「しつこいとは失礼だね委員長!私達だって頑張って特訓してきたんだよ!」


学園を出発したレースは眼下に広がっていた街中へと舞台を移し、先に言われた三チーム以外は

500m以上後方に遅れています。となれば、この委員長・犬猫ペアをくだせば優勝は見えますです。

何故なら、このレースは・・・!


「行くですよコレット!"フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ"!!」

「任せてユエ!"アネット・ティ・ネット・ガーネット"!!」

「む…!"パクナム・ティナッツ・ココナッツ"!!」

「"ハイティ・マイティ・ウェンディ"!!」

「『風花・武装解除(フランス・エクサルマティオー)』!!」「『熱波・武装解除(カレファキエンス・エクサルマティオー)』!!」
ボッ!
「「キャーーー!!?」」

「やたっ!徹った!!」


私とネコ娘が同時に撃った武装解除ですが、向うのはコレットの障壁を超えられなかったです。

・・・その結果は、麻帆良でよく見た例の服脱がしが炸裂。街の男共は大喜びです、まったく。

ですがこれであの二人は暫く動けないです。つまり、直接攻撃魔法が禁止されているこのレースで

妨害が許されている理由はコレ。脱がし合いと言うだけではなく、良い模擬戦でもあるのですが。


「少々離されました!打ち合わせ通りですよコレット!」

「あいあい!」

「「『重加速(トゥント・アクケレレット)』!!」」

『おぉーーっと落ちこぼれコンビ!一組沈めた上にスタート早々仕掛けた!速攻ーーーッ!?』

「くっ……この!」

「お嬢様!?」


委員長達との距離を縮める為に加速すると、委員長は案の定箒を停止させ、その上に立ち上がりました。

流石プライドが高いだけあるです。ここで受けてくれなければ少々困っていました。

私達の箒の速度では、加速を5分間続けなければ委員長達に勝てません。それは少し厳しいのです。


「素人が調子に乗って………いいでしょう転校生!その勝負、受けて立ちましょう!!

"タロット・キャロット・シャルロット"!」

「狙い通りです!二重障壁展開、プランAです!!」

「了解っ!」

「無駄な事ですわ!『氷結・武装解除(フリーゲランス・エクサルマティオー)』!!」
パキィィン!


委員長の撃った氷の武装解除が私の障壁を貫いて、コレットの張った障壁に当たりました。

流石委員長、ただの武装解除が攻撃魔法みたいな威力です。ですが――


パンッ!
「弾いた!?くっ、煙が……!」
ボッ!
「"アネット・ティ・ネット・ガーネット!『風花(フランス)』"―――」

「ふ……。」
パチンッ パキィィン!
「ひゃぁっ!?」


障壁に組み込んでおいた発火術式が氷の武装解除と反応して、発生した煙からコレットが強襲。

単純ですが、学生相手なら十分な策。ですがそれは私の浅慮でした。彼女は"普通"の学生では

ありませんです。まさか無詠唱魔法を使えるなんて・・・!


「小賢しい真似を!浅はかですわね、そんな単純な策にこの私が……ん?ユエさんは!?」
ヒュッ
「『風花・武装解除《フランス・エクサルマティオー》』!」
ズバァァッ!
「な……!なな……!」

「慢心したですね、委員長!っとわっ!」
バシッ バシュバシュッ
「お嬢様!」

「コレット、引くです!!」

「が、合点!」


作戦通り、後ろに回った私の武装解除が委員長の服を吹き飛ばして、上半身を下着姿にしました。

ですがベアトリクスさんが(恐らくは水の)武装解除を放って来たので、私達はスタコラと逃げます。

目標は十分に果たしましたですからね!コレットは上半身裸にされましたが。


『さぁ都市外壁を出た時点でトップはコレット・ユエコンビ!これは予想外!』

「確かに予想外だよ大成功!委員長に勝っちゃうなんてすごいよ!」

「不意打ちですから成功は当然です。それにコレットが反撃を受けましたし完璧とは……。

と言うか私の魔法も少し障壁に阻まれましたし……。」

「こんなもの安いもんだヨ!あの委員長に勝ったんだよ!?」

「いえ、次に戦う時はベアトリクスさんも加えて正面からですから厳しいです。

出来れば逃げ切るですよ!」

………
……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
subSide ―――

『さぁレースも後半!コースは魔獣の森を大きく回り10のチェックポイントを通過し、再び

市街に戻ります!そしてこの時点で、依然トップはコレット・ユエコンビ!

二位のエミリィ・ベアトリクスコンビに徐々に距離を詰められながらも、これは大健闘!!』

「ぐぐぐ……!ユエ…ファランドール~~~~~~~!!」

「お嬢様……。」


初衝突から少々、高速で飛ぶ間も委員長・エミリィの怒りは治まらず、自分を引ん剝いた夕映を

目指して最初よりも早く箒を飛ばす。しかし中々追い付けず、マップを見た委員長は急に立ち止まる。


「ここね……!」

「え……『魔獣の森』、ですね。」

「ここを突っ切りますよ!!近道です!」

「えぇっ!?確かに違反ではないですが……で、でもお嬢様。私達の力では危険では…?」

「魔獣など、出会わなければどうと言う事はありません!!」


目先の欲と焦りと怒りで、エミリィはベアトリクスを伴ってチェックポイントへ直進する。

思いっ切りフラグを立てて。その見立て自体は正しく、僅かな時間差を経て夕映達に追いつく事となる。


「コレット!この森を突っ切る事は出来ないんですか!?」

「えぇーーっ!?無理無理!ヤバい魔獣にでも遭ったら命がマズいよ!

そ、それよりユエ待って、速すぎるよ!そんなに飛ばしたら魔力切れちゃう!」

「む、スミマセンです。先程から魔力が溢れて来るような感じがありまして……。

それよりも今は先を急ぐです!いつ追い付かれるかわかりませんです。」

「そ、そうだね!……ん?」


再び飛び出した二人だったが、コレットが羽織る夕映のローブのポケットに入っていた仮契約カードが

淡く光り出す。記憶が戻っている為、既に絵が完全に復活している。

この現象は夕映のアーティファクトと、それによる現状の危機に起因する。


「ユ、ユエーー!なんか光ってるよー!……うぇ?」
メキメキメキ!

バキバキッ!
「―――お嬢様しっかり!」

「委員長!?まさかショートカットして来るとは「ユエだめっ!右!!」―――っ!」


魔獣の森からベアトリクスがエミリィの手を引いて飛び出して来た事に驚いた夕映は反射的に速度を上げる。

しかし次の瞬間、夕映の真横に現れたのは―――


バガァッ!
「まじゅーーー!?って、"鷹竜(グリフィン・ドラゴン)"!?あの人達近道しようとしてどんでもないの

拾ってきちゃったのね!ってか血まみれ!?」

「くっ、違います!こいつも私達と一緒に――」
――ズルズルズルズル!!
「な、ななな、なになになに!?」


現れたのは低級の竜種"鷹竜"であったが、そちらはボロボロの姿で、正に命辛々という風であった。

そしてそのすぐ後ろ。何かが這い回るような音と共に、その原因が飛び出て来た。

―――ShuurrrAhaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!
「な、な、な、な、な、"蛇人竜(ナーガラージャ)"ぁああああああ!?

ちょっとなに変異中級種連れて来てるのぉぉーーー!!」


コレットの叫びと共に、"鷹竜"を遥かに凌ぐ中級竜が咆哮を上げた。

Side out
 
 

 
後書き
連休?休み?知らない子ですね・・・ 
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