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妻の正体

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第五章

 シャラーナはベッドから起き上がった、そして寝室の窓のところに向かい。
 その窓を起きてだ、そうして。
 窓からベランダに出てだ、思わぬことになった。
 首が抜けた、しかも食道を付けたままで。
 抜けた首は宙に舞う、するとだった。
 胃も腸も抜けていった、そのうえで内蔵を全て首の下に垂らし血まで滴らせてだった。
 シャラーナは身体を置いて首と内蔵だけになって夜空を舞い何処かに消えていった、マヤリームは叫び声をあげそうになるのを何とか堪えながらベッドの中でその一部始終を見た。
 それからは驚きと恐怖のあまり眠れなかった、そのまま起きて窓の方を見ていると。
 シャラーナの首と内蔵が戻って来た、黒い筈の目は禍々しく紅く光り口元は赤く濡れていた、そのうえで一旦ベランダの端に消えて。
 暫くして戻ってきて身体の中に帰った、そのうえでベランダのところを丹念に拭いてだった。
 ベッドに入る、その後は変わらなかった。
 だが、だった。マヤリームは朝必死にそれこそ何とか日常生活を装って演技をしてから会社に行ってだ、社長に彼が昨夜見たものの一部始終を話した。
 その話を聞き終えてだ、社長は自分の席から腰を浮かしてマヤリームに対して驚愕の顔でこう告げたのだった。
「それはまずい」
「どう考えてもですね」
「君の奥さんは明らかに人間ではない」
「妖怪ですね」
「吸血鬼だ」
 それに他ならないというのだ。
「その吸血鬼の中でもとりわけ厄介な奴だ」
「何ですか、あいつは」
「ペナンガランだ」
 ここでこの名前を出した社長だった。
「夜に外に出て人間の血を吸うとんでもない奴だ、その性格はかなり狡猾で残忍だ」
「性格もですか」
「まずい奴だ、妖怪といっても色々でな」
「性格のいい妖怪もいるんですね」
「そうだ、しかしペナンガランはだ」
「悪質ですか」
「吸血鬼の中でもな」
 またこう言う社長だった。
「内蔵から血が滴り落ちていたな」
「はい」
 マヤリームはこのことも既に話した、社長はその血についても言うのだった。
「触ったら熱病になる、それで人を病気させて楽しんだりもするからな」
「血を吸うだけじゃなくてですか」
「それが趣味でもある」
「人、死にますよね」
「熱病だからな」
「じゃあ余計に」
「危ない、このままだと御前もな」
 何時血を吸われて殺されるかわからないというのだ。
「だからだ、今日にでもだ」
「倒さないといけないですか」
「俺も行く」
 社長は青ざめた顔でこうマヤリームに言った。
「一人じゃまずい、御前だけだとな」
「返り討ちに遭いますね」
「そうだ、一人より二人だ」
「わかりました、じゃあお願いします」
「相手はベランダに戻った時に一旦ベランダの端に消えるんだな」
「そうです」
 そこは家の中からは死角になって見えない、マヤリームは家事はしなくなったのでベランダに出ることはない。だからそこに何があるかは知らない。
 しかしだ、社長はそのベランダの端に何があるのかをだ、マヤリームに言った。
「そこに酢が入っている壺があるぞ」
「酢、ですか」
「そうだ、ペナンガランは血をたらふく吸って自分の身体に戻るがだ」
「その時にですか」
「一旦酢の壺に内蔵を入れるんだ」
「それはどうしてですか?」
「酢で消化を早めてから身体に戻りやすくするんだ」
 社長はその為だとだ、マヤリームに話した。 
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