兄弟星
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四章
「今度は犬達を使ったんだな」
「ああ、こいつ等に薬の素を教えてな」
彼が集まるべきそれをだというのだ。
「それでだよ」
「それでか」
「ああ、それでだよ」
犬に薬を集めさせたというのだ。
「こうしたんだよ」
「犬か」
「犬は頭がいいからな」
トカチの言っていることがわかってだというのだ。
「まあ匂いはな」
「それはわからなくてもか」
「じっくり話をして覚えさせたからな」
「だからか」
「ああ、犬に探させたんだよ」
そうして探させたというのだ。
「こうしてな」
「考えたな、今回も」
「それで御前も全部手に入れたな」
「何とかな」
コンセンはトカチにはっきりとした声で答えた。
「出来た」
「よし、それじゃあな」
「すぐに薬を作るか」
「間に合った、それならな」
こうしてだった、二人でだった。
薬を作り母親に飲ませた、すると。
母は見る間に顔色がよくなり元気になった、二人はその母親を見て満面の笑顔になり互いに喜び合った。そして。
その彼等を見てだ、アイヌの神が喜ぶ二人に言うのだった。
「二人共見ていたぞ」
「えっ、その声は」
「一体」
「わしは神だ」
こう二人に名乗るのだった。
「御前達のな」
「何と、神様ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、そしてだ」
二人にだ、神はさらに言う。
「御前達は自分達の母を救ったな」
「おっかあですから」
「そのことは」
当然だと答える二人だった、しかしその当然のことに対して。
神はだ、こう言うのだった。
「その当然のことがだ」
「それが、ですか」
「そう仰るのですか」
「中々出来ない。御前達は見事だ」
その心がというのだ。
「その心を認め御前達を星にしよう」
「いえ、星になるなんて」
「とても」
それはとだ、二人は神の言葉に慌てて首を横に振って返した。
「いいですよ、そんなの」
「そうです、恐れ多いですし」
それにというのだ、二人共。
「おっかあの面倒を見ないといけないです」
「それに俺達そろそろ結婚しますし」
「家族のこともありますから」
「星になることは」
「では御前達がそれぞれ今の生を全うしてからだ」
それからだというのだ。
「星になるか」
「そうですね、今の人生を終えたら」
「それなら」
問題ないとだ、二人も答えた。こうしてだった。
二人は星になった、しかし明るさと大きさは弟のコンセンの方が上だった。二人は星の姿で地上から彼等を見上げる神に尋ねた。
「あの、どうしてなんでしょう」
「何で俺の方が大きくて明るいんですか?」
「その理由は」
「どうしてですか?」
「それはだ」
その理由をだ、神は二人に話した。
「弟の御前は自分からせっせと動いていたな」
「はい、それは」
「自分で動いていた、しかし兄である御前はだ」
トカイの星にも話す。
「あまり自分では動かず犬に働かせたり楽をしようとしていたな」
「まあそれは」
「そこだ、その分だ」
兄の怠けていた分だというのだ。
「御前の方が暗いのだ」
「それでなんですか」
「確かに御前の閃きはよかったがな」
「自分から動く方がですか」
「いいのだ」
その考えを二人に話す神だった。
「だからだ、御前達はそれぞれその明るさになっているのだ」
「俺は頭の回転はよくなかったですけれど」
コンセンの星は人間だった頃のことを自覚して神に話す。
「それでもですか」
「頭の回転よりも自分ですぐに動いたからな」
「その分なんですね」
「そうだ、ではこのことを納得したな」
「はい、そういうことなんですね」
「大切なのは動くことですか」
「思いが同じでもな」
それでもだというのだ、神は二人にこのことを話す。そして星になった二人もこのことを素直に納得した。今も兄弟は夜空に二人でいる、それぞれの大きさと明るさで。
兄弟星 完
2014・1・28
ページ上へ戻る