ハイスクールD×D~進化する勇気~
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第二十三話
「え……?」
『ああ、すまんな。何しろ適合者が現れるのが初めてでな。それで?お前には守る覚悟はあるか?』
「守る覚悟……」
私には覚悟なんてわかりません。
でも……
「私には……大好きな人がいるんです……その人は自分を傷つけながら私たちを守ってくれる……その守る対象に自分を入れてないんです……」
『………………』
十香さんは私の話を黙って聞いてます。
私は話しつづけます。
「私は……今までずっと守られてばかりでした……私が日本に来た時にも……その人は自分の命を掛けて戦ってくれた……でも、もう守られるのは止めます」
そして私は十香さんの顔をちゃんと見て言います。
「私は……あの人……イッセーさんの力になりたい!それが、私の覚悟です!」
これが私の正直な気持ち。私は今まで守られてばかりだった。
私には戦う力がなかったから……でも私だって守りたい。
皆と一緒に……イッセーさんを!
『……そうか、だったら行かなければな』
そう言って十香さんは手を空中にかざす。
すると、何やら映像が流れ出した。
そこにはイッセーさんの姿と……黒い龍のような何かが相対していた。
「イッセーさん!」
『何かを成すには覚悟が必要だ……どうやらお前にはその覚悟がきちんとあるようだ』
『さあ、行け』
「……はいっ!」
そして気がつくと……私は元々いた空間にいました。
「あれ……?ここって……」
「うん?なんでこんな所に人間がいるんだ?」
「グレートレッド……彼女……イッセーの友達…」
「なに?」
そして私の目の前には……大きな赤い龍と小さな可愛らしい女の子がいました。
SIDE OUT
「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「これは……さすがにヤバいんじゃないか?」
「あれはただの怨念に突き動かされて動く龍……いや、もう我を忘れて暴走した獣と一緒だよ……」
隣でもヴァーリが額に汗を流しながら見ている。
先ほどからどこでもいいから破壊しているみたいな感じだ。
「ドライグ、あれを止める術はないのか?」
『無茶言うな。ああなったらもう止める事は出来ん。俺というストッパーもいなくなったいま、あれを止めるには……宿主を殺すか、あいつ自身の命が燃え尽きるまで止まる事自体ありえん』
元々宿っていたドライグでさえもこういうのか……もう殺すしかないみたいだな。
「イッセー君、私もやるよ……いくらイッセー君でも一人じゃ」
「いや、俺がやる……汚れ役は俺一人で充分だ」
俺はそう言ってソルブレイブを出そうとするが
『その必要はないぞ』
そんな聞き覚えのある声がした。
「っ!上か!」
俺は慌てて上を見上げる。そこには……次元の壁を突破してこちらに目を向けているグレートレッドの姿があった。
「グレートレッド?」
「ああ、イッセー見つけたよ。ほら、イッセーがいたから」
「はい、私からも見えました、イッセーさぁん!」
そう言ってグレートレッドの頭の上に乗っている人物が俺に手を振ってくるが
「あ、アーシアっ!?」
そう、アーシアなのである。
「今から降りますね~」
そう言ってアーシアは……飛び降りた。
「ああああ、アーシア!?」
ちょちょちょ!?
そしてアーシアの落下点を予測してその場に立ったのだが……アーシアは普通に着地した。しかも超静かに。
「あ、アーシア?大丈夫なのか?」
「はい、問題ありませんよ。それよりも……あれって?」
アーシアはそう言って所構わず破壊を繰り返す黒い龍を指差す。
「ああ、神名だよ。暴走してるんだと」
「そうだったんですね……私がやります」
「私がやるって……アーシア、戦う気か!?ダメだ、お前戦う力を持ってないだろ!」
俺はアーシアを必死に止める。
「大丈夫です、もうイッセーさんに守られ続けるのは嫌なんです」
そう言ったアーシアの瞳に……俺は覚悟を見たような気がした。
「アーシア……」
「大丈夫です」
そう言ってアーシアは目を閉じる。
すると、アーシアの服装が変わった。
今までシスターの服を着ていたのだが……それらが違う服へと変わっているのだ。
材質は不明だが…お姫様が着るようなドレスを着ている。そのドレスのつなぎ目、インナー部、スカートは物質とは思えない光の膜でおおわれているのが特徴的だ。
靴も変わっている。
そしてその靴で地面を数度蹴り叩くと……地面から玉座のような物が飛び出してきた。
「今、ここに契約は成された……来たれ、全てを両断する剣よ。我に仕え、我に仇名す者に鉄槌を……その名は……」
そこまで呟いた所でアーシアは背もたれにある剣の柄のような物を握り。
「鏖殺公!!」
一気に引き抜いた。
それは幅広の両刃の大剣だった。幻想的な光を放っており普通の両刃の大剣とは違うとすぐにわかった。
「アーシア、それは……?」
「イッセーさんは……守ってみせます!」
そう言ってアーシアは飛び上がると
「ええええええええいっ!!!」
剣を神名に向かって振り下ろす。
するとアーシアの持つ剣から紫色の衝撃波が現れてそれが地面を、いや神名諸共吹き飛ばした。
「「………………」」
俺とヴァーリはそのまま立ち尽くす。
「な、なあヴァーリ……あれって……」
「何なん……だろう……」
「ぐぎゅああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
さっきの衝撃波を受けてもなお、起き上がりアーシアに飛びかかる神名。
「負けません!」
アーシアも剣をしっかりと構えて斬りかかる。
「まさか……アーシアが適合者とはな……」
「アザゼル……適合者?」
アザゼルがやってきてアーシアの事を適合者だと言った。
「ああ、あれは鏖殺公……天使の一つだ」
「サンダルフォン……?」
ヴァーリがそう聞き返す。
「そうだ、鏖殺公は剣の形をした天使でな。そして天使を使う者は専用の装備……霊装を纏う、鏖殺公を振るう者が着るのは神威霊装・十番。まさかあの子がな……」
アザゼルも予想してなかったみたいだな……にしても
「戦闘とは無縁だと思ってたアーシアがな……」
向こうでは果敢に立ち向かうアーシアの姿がある。
「天使を使う奴が……暴走した状態になっている奴如きに負けるはずがない…!」
「これで、終わりですっ!」
そう言うと再び玉座を呼び出し、それを剣で粉々に砕く。
すると、それら粉々になった玉座がどんどん剣と融合していく。
「鏖殺公、最後の剣!これで、最後です!」
そう言って振り下ろした巨大な剣は……寸分違わず神名を切り裂いた。
「あ…………ぐっ…………」
神名の纏っていた黒い鎧は消えた。
「やっぱり止めはさせないか……」
アザゼルの言う通り神名は生きていた。
アーシアはやっぱり優しい。神名を斬るのではなく神名が纏っている鎧だけを切り裂いたのだ。
「とりあえずは……これで一件落着って所かな」
あの後の話をしよう。
ディオドラ・アスタロトは全ての権限と上級悪魔としての全てをを剥奪。下級悪魔へと下がり、今は牢獄の中だ。
シャルバ・ベルゼブブに関してだがあいつは今でもどこかで生きているという。
「アーシア、何もおかしい所はないか?」
「はい、大丈夫です」
アーシアはアザゼルの所で精密検査を受けている。
天使を使用して体に何か異常がないかを確かめるためだ。
「今の所は何もない、安全だ。しかし何しろ不明な点が多すぎる天使だからな。あまり不用意に使わないようにしろ」
「わかりました」
「それじゃ、今日はもう帰れ。送る」
そしてアザゼルに送られて俺とアーシアは家に帰ってきた。
「アーシア、おかえり」
俺は先に家の敷地内に入ってそう言った。アーシアは本当の意味で帰って着たんだと伝えるために……。
「……はいっ!ただいまです、イッセーさん!」
アーシアは笑顔でただいまと言い……抱きついてきた。
アーシアは本当の意味で自由になれた瞬間だった……。
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