美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六話 水と氷その九
「絡み取られる恐れがあるわ」
「ああ、あの鞭でな」
「そこは気をつけて。けれど」
「それでもだよな」
「貴女の棒は普通の棒ではないわ」
菖蒲は薊にこのことも言った。
「そのことも考えて」
「だよな、あたしの棒はな」
「七節棍には七節棍の戦い方があるわ」
それでだというのだ。
「それを使うのよ」
「そうだな、じゃあな」
「私にも私の戦い方があるわ」
菖蒲は怪人を見据えつつ薊に言った。
「ではいいわね」
「二人で息を合わせてな」
「見せてあげるわ」
こう言ってだ、そして。
菖蒲は構えている剣に目をやった、すると。
その剣の色が変わった、これまでの白銀から。
青くなった、その青くなった剣を構えつつ言うのだった。
「ではね」
「水かよ」
「水、そして氷よ」
この力もだというのだ。
「私の力はね」
「そうか、水と氷か」
「貴女とは正反対の力よ」
薊の炎とはだ、このことも言う菖蒲だった。
「その力をね」
「今から使うんだな」
「そうするわ、では二人でね」
「ああ、こいつを倒してやるか」
「そして灰を」
このことも忘れていない菖蒲だった。
「手に入れましょう」
「それもな」
「覚えていたわね」
「学校の勉強はともかくとしてな」
ここでも自分の学校の成績のことは笑って言う。
「それでもな」
「覚えることはなのね」
「結構自信があってな」
「では覚えているわね」
「ああ、そうさ」
「ならいいわ」
覚えているのなら、というのだ。
「それではね」
「倒して灰をな」
「手に入れましょう」
「そうしような」
「面白いことを言う」
二人のやり取りを聞いてだ、怪人の方は声を笑わせて言ってきた。
「我を倒すというのか」
「ああ、そうだよ」
「そのつもりよ」
「二人共ジョークが上手いな」
こうも言う怪人だった。
「我は貴様等を倒すことが仕事だ」
「だからかよ」
「倒すのはそちらというのね」
「我の灰を手に入れることはいい」
怪人はそれはよしとした。
「しかしその為にはだ」
「あんたを倒せ」
「そういうことね」
「そうしてからにしてもらおう」
こう言うのだった。
「話はそれからだ」
「まあそうだけれどな」
「貴方の灰を手に入れることはね」
それはその通りだとだ、二人も頷いて返した。薊も菖蒲もその話をしてからあらためて構えを取った。そうして。
ページ上へ戻る