美しき異形達
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第六話 水と氷その六
「何もなりはしないわ」
「手掛かりも何もないからな」
「ええ、今は相手を待つだけよ」
「怪人があたし達の前に来るのをか」
「来たらね」
その怪人が来た時にというのだ。
「その時に闘ってね」
「手掛かりを掴むのかよ」
「彼等自体が手掛かりだから」
怪人の謎は怪人自体が手掛かりだというのだ、菖蒲はこう薊に話す。
「まずは彼等と闘うことよ」
「それしかないか」
「そう、そういえばね」
ここでだ、智和が薊と菖蒲に言ってきた。
「怪人は倒すと灰になるね」
「そうそう、それで風と一緒にさあーーーーーっ、って消えていくんだよ」
「跡形もなくね」
「灰だね」
ここで智和の眼鏡の奥の目が光った、そのうえでの言葉だった。
「灰に謎があるね」
「怪人の灰か」
「それですね」
「うん、それを手に入れられるかな」
「やってみるか、ちょっと」
「そうね」
二人は智和の言葉を受けて顔を見合わせて話した。
「それじゃあな」
「今度怪人が出て来た時は」
「うん、頼むよ」
「じゃあ今度怪人が出て来たらな」
「怪人を倒してその灰を集めます」
「そうしてね。灰は僕に渡してくれたら」
その時はというのだ。
「調べてみるから、生物学的にね」
「先輩生物学についても知識があるんですね」
「うん、そちらにもね」
実際に備えているとだ、智和は裕香に答えた。
「研究の目を向けているよ」
「それなら」
「それに知り合いの生物学者の方もおられるから」
「その人の協力も得てですね」
「調べてみるよ」
怪人の灰が手に入ればその灰をだというのだ。
「その時はね」
「その時は頼むな」
「宜しくお願いします」
薊と菖蒲は再び智和に言葉を返した、そしてだった。
とりあえずは怪人を倒してその灰を手に入れることになった、薊と菖蒲はこの話を終えてから今度は二人で話した。
学園の廊下を二人並んで歩きつつだ、薊は菖蒲にこう言った。
「なあ、怪人が出て来たらな」
「その時のことね」
「あたしかあんた一人だとな」
「倒せはしてもね」
「灰を手に入れるの忘れたりとかあるかもな」
「倒すことに集中していてね」
有り得るとだ、菖蒲もその可能性は否定しなかった。
「私も闘いになるとそれに神経が集中するから」
「あたしもだよ」
「灰を集め損ねるかも知れないわ」
「ああ、だからな」
それでだとだ、薊は菖蒲に顔を向けて話す。
「ここはやっぱりな」
「最初にお話した通り二人で闘うべきね」
「怪人が出て来たらな」
「携帯で連絡を取り合いましょう」
クールな物腰でだ、菖蒲は自分の携帯電話を取り出して薊に見せた、綺麗なコバルトブルーの携帯である。
「怪人が出て来たらね」
「ああ、そうだな」
薊も自分の携帯を取り出した、薊の携帯は鮮やかな赤だ。
「そうすればな」
「若し私達がお互い一人の時に怪人が出て来ても呼び合えるわ」
「だよな、それじゃあな」
「いいわね、これで」
「使えるものは使わないとな」
これが薊の返答だった。
「やっぱりな」
「そういうことよ。技術は使う為にあるものよ」
「使わなかったらか」
「何もなりはしないわ」
だからだというのだ。
「携帯で連絡を取り合いましょう、これからもね」
「今後怪人と闘う時もか」
「そうしましょう」
こう話してだ、そのうえでだった。
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