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魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~

作者:白鳥才牙
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『第三十七話』~出現! ヴォルケンリッター!~

 拓斗side

「た、たっくん……」

「大丈夫」


 俺はベッドの上で震えているはやてを庇うようにして抱き、光源である本を警戒する。
 一体何が起こってる?
 寝ていたらいきなり大きな揺れが起こったと思ったら、はやての部屋から大きな魔力反応。
 急いで向かえば何か本が強い光を発している。あれは魔導書の類か?


 しばらくするとその輝きは収まり、俺が振り向くと、
 そこには忠誠を誓う騎士みたいなポーズで4人の人が居た。


「闇の書の起動を確認しました」


 と、桃髪でポニーテールの女性が――――


「我ら闇の書の蒐集を行い、主を守る守護騎士でございます」


 と、金髪でボブカットの女性が――――


「夜天の主の下に集いし雲」


 と、銀髪で獣耳をはやした男性が――――


「ヴォルケンリッター、何なりと命令を……」


 最後に朱髪で後ろ三つ編みの女の子が言った。


「何者だ?」


 話が可能かどうか確認のために話しかけてみる。


「だ、誰だてめぇ!」


 朱髪の女の子が俺に向かって吠えた。
 その手には、何時に間にか機械じみたハンマーが握られていた。デバイスか?


「ヴィ、ヴィータちゃん!主の前でそれはダメよ!」


 金髪の女性が朱髪の「ヴィータ」という女の子を抑えた。

 コイツ等……人間じゃないな。魂はあるが、人間の生命力が全く感じられない。おそらく、光っていた魔導書と思われる本から出現した魔導生命体だろう。


「それはこちらの台詞だ。何が目的だ? 答えによっては――















 ――腕の一本は覚悟してもらうぞ」

「「「「っ!!」」」」


 俺が四人組にだけ殺気を軽く放つと咄嗟に全員が己が武器を構える。
 桃髪の女は片刃の直剣を、金髪の女は指輪を付けている方の手を、獣耳に尻尾を付けた、痛い男は拳を。
 金髪の女が後ろに下がり、他の三人が攻撃を仕掛けてくる















 ――ところで動きが止まった。


「なっ!?」

「か、体が!?」

「動かぬ…!?」

「どうして!?」

「はぁ…弱すぎ。まさか相手の実力も分からずに襲って来たのか?」


 もう少し強いと思ったんだけどな、期待はずれだな……
 俺がそう言うと四人分の殺気が俺にぶつかる。


「ひっ!!」

「おい…殺気の細かい操作もできないのか? はやてに殺気をぶつけるな」

「クソっ! コイツどうやって、魔力は感じないのに……」


 無視かよ、いい度胸してるな……自分達の立場が分かってないみたいだな。


「まぁいい、知りたきゃ教えてやる。周りをよく見てみな」


 四人組が回りを見回し始めた。


「…? なにかしらこれ?」


 一番最初に見つけたのは金髪の女か。
 他の三人もその方向を見ると、そこには光る一筋の線が。


「!? ここだけじゃない…辺り一面が……!!」


 それは一ヶ所だけでなく、辺り全体が四人を囲み、拘束していた。


「これは…ワイヤーか?」

「おしい。これは鋼糸と呼ばれる糸だ」


 俺がいた部屋から飛び出す際、必要になると思い持ってきていたのだ。案の定、使うことになったな。


「使い方次第でこのように拘束することもできるし、丸太を切り裂く事も可能な代物だ。……この意味が分かるな?」


 その途端顔が真っ青になる四人。


「なぁ、たっくん……」


 いきなり、後ろにいたはやてが俺の袖を引っ張る。


「はやて?」

「その人たち、私には悪い人には見えないんよ。まずは話を聞いてみよ?」

「話を? コイツ等はいきなり俺達子供二人に武器を、普通に殺せる物を向けたんだ。殺されたって文句は言えない」

「殺すって……そんなのアカン!」

「例えだ例え。殺すわけないだろうが」

「……せやな、そんなことせーへんよな」


 おい、何だ今の間は。


「たっくん」

「分かってる。その前に、質問に答えてもらうぞ」


 俺は鋼糸を掴んだまま四人に問う。
 すると、獣耳を生やした人(でいいのか?)が口を開く。


「我等は主を護る守護騎士ヴォルケンリッターだ」

「ザフィーラ!?」


 この男はザフィーラというのか。


「構わん。それにこいつは信用に値する。もし我が逆な立場なら同じことをしていただろう」

「なるほど。守護騎士ね。主を護り主の盾となり、主の剣となる者。そんな者が急に現れて俺だけならまだしも、主が傍にいるのに攻撃を仕掛けるんだ」

「「「「うっ」」」」

「たっくん、もうええやろ?」

「あぁ、そうだな」


 俺が腕を一振りすると、四人組(ヴォルケンリッターだったか?)を捕らえていた鋼糸は全て解かれ、俺の元に集まる。


「……それ、魔法か?」

「いや、ごく普通の鋼糸術だ。練習すれば誰でもできるようになる」

「「「「「ウソ(や/だ/だろ/よ)!!!」」」」」


 ヴィータという女の子の問いに答えたらはやてを含めた5人全員に言われた。なぜだ?


「な、なぁたっくん?」

「どうした?」

「ねむなってきたし、今夜はもう寝よ? 詳しい話は朝にすればええやん」


 見ればはやては眠そうに眼をこすって可愛らしい欠伸をしていた。


「そうだな。お前等もそれでいいか?」

「あ、あぁ。それでかまわない」


 桃髪の女は少し戸惑った様子で了承した。
 そんなわけで、この話は翌朝に持ち越すことになり、守護騎士――ヴォルケンリッターはそれぞれの部屋に割り振られてこの日は皆就寝した。















「なるほどな、そのはやてが今抱えているのが闇の書という魔導書。お前等守護騎士はその闇の書の主であるはやてを守るのがお前達守護騎士ということか」

「そう言う事だ」


 俺がまとめた話を桃髪ポニーテールの「シグナム」という女性が肯定した。
 現在は午前9時。全員で朝食を終え、俺とはやてはヴォルケンリッターの4人に説明を受けていた。


「覚醒の時と眠っている間に、闇の書の声を聞きませんでした?」


 金髪セミロングの「シャマル」がはやてに質問した。


「うーん、私魔法使いとちゃうから漠然とやったけどな。で、次はたっくんの番やね」

「は?」


 なんで俺? 俺なんかしたか?


「どうしてあんな簡単に皆を縛ることができたん? 何か秘密があるんやろ?」

「そうですね。魔力は感知できないけど、解析してみたらなにか魔力の膜みたいなものがあるみたいね」

「魔力がないのにか?」

「…やって。実際のところどうなん?」


 ……マジか、いつの間に解析されてたんだ? アレか? 寝ていた時にでもやられたか?
 どっちにしても、話した方がいいかもな。


「分かった、話すよ。俺は死神だ」

「死神? 死神とはあの死神か?」


 シグナムがそう質問してくる。


「多分想像しているので間違いないだろう。やることは少し違うけどな、今は言わなくていいだろう」


 俺はなのはやアースラの奴等に話したことと同じ事を説明した。
 一通り説明を終えると、はやてがウンウンと頷いた。


「つまり、たっくんも魔法は使えるけど、シグナム達のより古い魔法を使うんやね」


 そこだけか、死神云々は置いておくのか。まぁいいんだけどな。


「そんなところだ。ただ、シグナム達より少しファンタジー染みた魔法を使うけどな」

「ふ~ん」


 いや、ふ~んって……俺にとっては結構大事なことなんだけど………


「でも、分かったことが一つだけあるで! 闇の書の主として守護騎士みんなの衣食住きっちり面倒みなあかんゆうことや。幸い住むところはあるし 料理は得意や みんなのお洋服買うてくるからサイズ測らせてな」


 すると、みんなの顔がなにいってるのこの人? みたいな感じになっていた。どうした?


「ならザフィーラは俺が測ろう」

「頼むわ」

「「「「………」」」」





 ~サイズ測定中~





「サイズ測り終えたし、行ってくるわ」

「俺も一緒に行こう」

「では我々も…」

「駄目だ」


 俺とはやてが出かけるので付き添おうとしたシグナム達を拒否する。


「何故だ? 我々は主を守る守護騎士、傍にいないでどうする?」

「お前らの服装は目立つ。目立てば危険がより高まるんじゃないのか?」

「そ、それは……」

「それを改善するために服を買いに行くんだよ」

「……わかった」

「じゃ、安くて良さそうなの買ってくるわ」

「安くなくてもいいぞ?」

「え?」

「金の使い道が生活以外になくてな。金は有り余ってるんだ」


 そう言ってはやてに通帳を渡す。


「おかしいやろ! 何でこんな金額持ってるねん!?」

「そりゃお前、働いてれば普通に貯まるさ。使い道もないしな」

「それでもケタがおかしいわ! 0幾つあんねん! 数えるのが面倒にあるほど並んどるやないか!!」

「認めろ、それしか言えん」


 まぁ、頻繁にボディガードしてるし、今は海外小説の翻訳を8つ掛け持ちしてるからな。










 そんなこんなではやてと買い物に来た。


「シグナムはやはり大人の女性っぽい服装だろうな」

「そやな、ちょっと色っぽく見えるようなのにしよか」

「シャマルは清楚っぽさが際立つようなの、ヴィータははやてのと同じようなのでいいだろう」

「すごい似合いそうなのチョイスすんねんな」

「そうか勘で言ってるだけなんだが」

「もしかしてたっくんの服は………」

「いや違うぞ?」

「やんな! それで勘で選んでるって言わ「着たいやつを適当に着てる」れ…たら」


 はやてが絶句してる。


「適当でその着こなしかい! 似合いすぎやろ!」

「いや、そう言われても」

「なんか敗北感感じるわ………」


 おいおい……










「なぁ、はやてよ……俺はさすがにその領域へは足を踏み入れたくないぞ」

「えー。ええやん。まだ子供なんやし」


 俺が言った『その領域』というのは、ランジェリーショップ――女性の下着売り場だ。


「子供云々の話じゃなくて! 俺は男なの! その領域へはもう踏み込みたくないの!」


 絶対に入ってたまるか!!


「仕方ないなぁ……ほなあそこのベンチで待ち合わせな?」

「わかった……」


 はやてはそう言って下着売り場へと向かった。
 それから数分経ってからはやてが買い物を終えてやってきた。


「おまたせ~」

「あ、あぁ……」

「ほな行こか?」

「うん……」


 なんか……疲れたな………






「ただいまー」

「戻ったぞー」

「主、ご無事でしたか」


 狼状態のザフィーラが話しかけてくる。俺にはないのか。まぁ、はやてが主だからしょうがないんだがな。


「うん、たっくんのおかげで何にもなかったで」

「別に俺は何もしてないけどな」

「ううん、たっくんがいてくれるだけで私は安心出来るんや」


 ニッコリと笑いながらそう言うはやて。
 ……なんか、恥ずかしいな。


「そ、そうか……ま、まぁ皆の服買って来たことだし」

「着せ替えや!」










 女性陣がリビングで着替えるため、ザフィーラは俺と一緒に廊下に出て着替えている。
 その時、いきなりザフィーラが口を開いた。


「月詠」

「なんだ?」

「買い物に出かける前に、我等に話したことは事実なのか?」

「うん? 俺が死神だってことか?」

「一族が裏切りによって滅んだことを含めてだ」

「寂しくはないのか? 裏切りモノが憎くないのか?」


 ? 変なことを言うなコイツは。


「別に寂しくなんてないさ。完全な一人ぼっちになったわけじゃない、それに数える程しかいないが友ができた。はやてとも友になって、さらに新しくお前らって言う友ができた。何処がさみしいって言うんだ?」

「我らを友として見るのか? 我等はプログラムだぞ?」


 ん? コイツ等は自分を卑下する口か?
 そう言えばあの人も言ってた様な気がするな。『家臣は主人に似る』って……まさかな?


「確かにお前等はプログラムだな。これは変えようがない事実だ。だが、それがどうした? プログラムがなんだ? 別に人形じゃないんだ。お前らの中には確かに魂が存在している。そうだろ?」

「生きているかどうか、我にはわからない。だが人形ではない。意志もあり考える力もある」

「ならいいじゃないか。お前等は魂が存在し、命が存在する。闇の書の守護騎士プログラム『群雲の騎士(ヴォルケンリッター)』。それでいいじゃないか」

「そうか……月詠」

「なんだ?」

「……ありがとう」

「……俺は別に礼を言われるような事を言った覚えは無いんだけどな……どういたしまして」

「…それと、後者の問いだが……」

「後者? ……あぁ、裏切り者云々の方か……全く怨んでないし、憎んでない」

「!!?」


 ザフィーラの顔が驚愕の一色に染まる。まぁ、裏切りモノが憎くないなんて言ったら驚くよな。


「何故? 相手は一族を裏切り、滅ぼした張本人だぞ?」

「何処にいるかも分からない相手を憎んでどうなる? 既に死んでるかもしれない相手だぞ? いくら憎んでもどうにもならない」

「………そうか」

「そうだよ」


 しばらくの間、俺達の間に沈黙が続き、その沈黙は、はやてに着替えが終わったと呼ばれるまで続いた。










「皆似合ってるな」


 俺は着替えたヴォルケンリッターにそう言った。


 因みにザフィーラの服はジーンズにタンクトップのシャツ、黒いジャケットで俺のチョイスだ。


「ありがとうございます///」


 妙に顔が赤いなシグナム、似合ってるって言われ慣れてないのか?


「可愛い服ありがとうございます拓斗ちゃん、はやてちゃん」

「男をちゃん付けで呼ぶなシャマル」


 結構傷つくんだぞ。


「ま、普通にいいんじゃねえの?」


 照れながらそう言っても説得力皆無だぞヴィータ。


「感謝します、主」


 普通にホスト並みに似合ってるなザフィーラの奴。
 今度、そっち系の仕事が入ったら協力してもらうか。

 まぁ、これでヴォルケンリッターたちが外に出ても怪しまれないだろうな。


「じゃあ、俺はもう帰るな」

「え!? もう帰るん!?」

「あぁ、俺もそろそろ家に戻らないと」

「なんでや!?」

「いや、仕事あるし。言ったと思うけど、小説翻訳の締め切りが迫ってるんだよ」

「ええやん別に!」

「あ、主、さすがにそれは……」

「お仕事のじゃまをするのはちょっと……」

「どうかと思いますが……」

「うんうん」

「せやけど……」


 ヴォルケンリッターに言われて見るからに落ち込むはやて。


「しょうがないな……」

「…? たっくん?」


 俺がはやての頭を撫で始めた事に不思議そうな顔をするはやて。


「そう落ち込むなよ。もう二度と来ないなんて言ってないんだぞ? いつもとは言えないが、できるだけ来るようにはする」

「……ほんま?」

「本当だよ」

「ん~……分かった! ちゃんと来るんやで!」


 そう言うはやての頭をポンポンと叩き、俺は八神家を後にした。 
 

 
後書き
~あとがき雑談会~

拓「おい、作者」

作「な、なんだい?」

拓「そこに正座」

作「はい?」

拓「正座!!」

作「は、はい!!」

拓「で? 何だこれは?」

作「な、なんだと聞かれましても……」

拓「なんだ今回のグダグダは?」

作「い、いやですね。なかなか思いつかないし、時間迫ってたし……」

拓「それで、今回の結果になったと?」

作「は、はい……」

拓「……よし、許そう」

作「あ、ありがとうございます……」

拓「じゃあ、次回予告」

作「は、はい……





  ヴォルケンリッターが八神家に加わり数か月

  四人の様子が変わっていく

  そのことに寂しさを覚えるはやて

  拓斗は騎士達の隠している秘密を知る

  次回 魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~『いきなり4vs1って卑怯じゃね?』」





拓「次回に向かって」

作・拓「「トリガー・オン!!」」





 なんだ次回のタイトル?

 まぁ、ヴォルケンとの戦闘回かな

 なんで?

 それは次回で 
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