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また夢を

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第二章


第二章

 それで家でもただ沈んで生きているだけだったのだ。優子もそのことは察していた。
 それでだ。今は無理でもと考えだ。玲に言ったのである。
「じゃあいいわね。町に出てね」
「何をするのかな」
「ホテルに行く以外の全部よ」
 とりあえずそれだけはと思いジョークも交えて話した。そのうえでだ。
 玲を無理にだ。今は大学にいるが強引に連れ出しだった。
 町に出た。町はいつもの様に賑やかだった。
 その賑やかな町、人々が行き交うその中でだ。優子は玲に尋ねたのである。
「で、何処に行きたいのよ」
「別に」
 こう答えるだけの玲だった。俯いて。
「ないから」
「だから。何処かあるでしょ。喫茶店なりゲームセンターなり」
「ないよ」
 やはりだった。返事はこんなものだった。
「今は」
「そう。それじゃあね」
「大学に帰るのかな」
「帰らないわよ。じゃあ私がいいと思う場所案内するから」
 こう玲に言うのだった。
「そこでいいわね」
「いいと思う場所って?」
「そんなの適当に見つけるわよ」 
 具体的な考えはなかった。何一つとしてだ。
 だがそれでもだ。優子は先のことは考えずにだ。こう答えてだった。
 玲を引っ張って食堂なり喫茶店なり入りだ。ジュエルショップや本屋も入った。しかしだ。
 玲は何も動かずだ。虚ろな目のままだった。そんな彼を見てだ。
 優子はさらにだった。玲がどれだけ重症なのかを認識した。しかしだった。 
 諦めなかった。それでだ。
 彼にだ。今度はこう言うのだった。
「いい、それじゃあね」
「次は何処に行くの?」
「今から決めるわ」
 今も出たところ勝負だった。
「わかったわね。とりあえずはね」
「ううんと。僕は別に」
「いいのよ。本当にホテル以外なら何処にでも行くから」
「ホテルにこだわるね」
「別にいいじゃない。とにかく行くわよ」
 何も考えずに突っ込む。それが今の優子だった。
 こうしてだった。今度はだった。
 たまたま目に入っただ。駅前のビルの画廊を見てだ。玲に告げたのである。
「今度はあそこよ」
「何処かな」
「画廊よ、画廊」
 そこだというのだ。
「いいわね、そこよ」
「画廊って」
「画廊に行けばやることは一つよ」
 強い目でだ。玲を見据えて言う優子だった。
「絵を見るのよ。いいわね」
「また随分と強引だね」
「強引上等よ」
 優子にも意地がある。というよりか彼女は意地が強い。
 その強い意地故にだ。彼女は言うのだった。
「わかったわね。画廊に行くわよ」
「わかったよ。それじゃあ」
 こうしてだった。玲は優子に連れられてだ。その画廊に向かった。
 画廊の白い壁に絵が一枚ずつ掲げられている。見ればそれは風景画や人物画、それにマグリットやダリの絵もあった。そうした絵を見てだ。
 優子はだ。自分の横にいる玲に尋ねたのだった。
「ちょっといいかしら」
「ちょっとって?」
「こうした絵、わかる?」
 ここでは少し気恥ずかしそうに言う優子だった。これまでの強気とは違いだ。
 
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