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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第3章
月光校庭のエクスカリバー
  第56話 明日夏の憂鬱な、ドレイクの優雅な一日

 
前書き
今回は明日夏とドレイクのとある一日のやり取りを記載します。 

 
「…………。……はぁぁぁ…」
俺は時計を見て、盛大に溜め息を吐いた。
「……後一時間」
それはおそらく、俺にとっては憂鬱な時間の始まりへのカウントダウンであった。
『た~のしみだな~♪た~のしみだな~♪』
ドレイクがテンションを上げて、何かを待っていた。
『ひっさびっさの~♪シャバのく~き~♪』
シャバの空気と言う単語で分かったかもしれないが、今から一時間後、ドレイクに俺の体の使用権を得る事になっていた。
そもそも何故、このような事になったかと言うと、今から数日前(イッセーの家への部長のホームステイ宣言よりも前)に遡る。


『「ん~、ドラゴン化した腕を元に戻す方法かぁ?」』
「……何か分からないか兄貴?」
俺は旧校舎の廊下でケータイで兄である士騎冬夜と話していた。
会話内容はイッセーのドラゴン化した腕を戻す方法についてだ。
イッセーはライザーを倒す為、一時的な禁手(バランス・ブレイカー)を使用した。
だが、代償としてイッセーは自身の左腕を籠手に宿るドラゴンに差し出した。
それにより、イッセーの左腕はドラゴンの腕となってしまった。
イッセー自身はその事に対して、後悔も左腕への未練も無いみたいだ。
とは言え、そのまま状態では、普段の生活がままならないと言う事でオカ研総動員で元の腕に戻す方法を模索を始めた。
そして俺はいろいろと博識な兄貴に手がかりがないか聞いている訳である。
「今、副部長とアーシアが魔力による一時的な形態変化を試みているが…」
『「たぶん無理だね」』
兄貴が言うには、ドラゴンの腕になったと言う事は左手にドラゴンの気が集中していると言う事になり、力の塊と言われてるドラゴンのものともなると必然的に強い気となる。
その強い気が形状変化の妨げになると言う事らしい。
「……厄介だな」
『「……ごめんね、力になれなくて」』
「いや、こっちこそ時間をとって悪い」
『「こっちは気にしてないよ。明日夏の声が聞けた訳だし。何か分かったら連絡するよ」』
「ああ、頼む」
そこでケータイを切る。
さて、兄貴でもダメとなると、もうあいつに聞くしかないか。
……高く付きそうだが…。
俺は壁に背を預け、目を伏せる。
(聞こえてるだろ、ドレイク?)
『おう!聞こえてるぜ!』
(ずっと見てたんだろ?単刀直入に聞く、何か分かるか?)
ドラゴンの事ならドラゴンに聞くのが一番手っ取り早いだろう、しかし、こいつに聞くとなると、高く付きそうなんだがな。
『分かるぜ♪』
(その方法は?)
『………』
(……取り引きだ…)
『そうそう、ギブアンドテイクは大事だぜ♪』
俺は忌々しげに舌を鳴らした後、交渉に移る。
(………今度の休み、午後十二時から午後六時までの六時間の間、俺の体を好きにしていい…)
『……二十四時間』
丸一日を要求してきやがった!
(……八時間!)
『十八時間!』
(十時間!!)
『十二時間、これ以上はビタ一門まけねえぜ!』
(………。……ちっ!分かった…午前十時から午後十時までの十二時間だ……)
『毎度あり~♪』


……と言う感じで半日もドレイクに体を明け渡す事になった。
ちなみにドレイクが言った方法を行った結果、ドラゴンの腕なのは変わらないが見た目だけはなんとかなった。
ただし、定期的に行わないとすぐに見た目が戻ってしまうがな。
ただ最悪な事に、部長達にその方法を伝えた数時間後に兄貴から全く同じ方法の内容の電話が来た。
……なんとも言えない脱力感と空しさを感じたよ…。
つまり、事実上のギブアンドテイクのテイクしか行っていない事になってしまった。
……溜め息しか出ない。
ちなみにドレイクはその時、大爆笑をしていた。
『安心しろ。時間になったらちゃんと体を返すからよ』
それについてはそれほど心配はしていない。
ライザーの一件でこいつは自分に利益のある約束事は破らない奴だって言うのが分かったからだ。
ライザーの時の賭けはこいつにとって面白そうで実際に楽しめたから、今回は自由に活動できる機会があるからだ。
……俺が心配なのはこいつが俺の体で何をするか、だ。
こいつは自身を遊びドラゴンと自称するような奴だ。
……正直、何をしでかすか不安でしょうがない。
とは言え、こいつは約束を守っているのに俺は守らないって言うのもあれなので仕方がないが。
そうこうしている内に約束の時間が迫ってきた。
『んじゃ、ちょっくら借りるぜ♪』
(……あんまり羽目を外さないでくれよ…)
『へいへ~い』
………不安だ……。


「う~ん♪久々に肉体で活動できるぜ♪」
目の前で俺が嬉々とした表情で今の言葉を口にした。
現在、俺の肉体の主人格がドレイクになっていた。
ちなみに目の色が緋色になっていた。
俺の人格は神器(セイクリッド・ギア)内に存在している。
以前、ドレイクが俺の体を奪おうとした時は自分の人格が消えかける感覚があったが、今回はそう言うのは感じない。
あの時はドレイクが俺の人格を無理矢理に上書きしようとしたからそう感じたらしい。
今回は両者合同で人格を入れ替える要領でやった為、そのような感覚は感じなかった訳だ。
今の俺の視界に映る光景は、普段ドレイクが見ている光景と言う事になる。
「さてと、んじゃ服借りる…ってお前の体だから借りるってのは変か?」
なんて言いながら、俺の部屋のクローゼットを開ける。
外に出かける為の服装に着替える為だ。
「……おいおい!何だよこれ?地味な服ばっかだな!」
手持ちの服の文句を言われた。
確かに俺が所持している服は全て機能性重視でオシャレとは縁遠い物ばかりであった。
俺自身、オシャレとかに興味がないしな。
「しょうがねえ、とりあえずこれでいいか」
そう言って取りだしたのは、黒系のシャツとジャケットにジーンズだった。
俺がよく外出の時に着ていく組み合わせだった。
「……俺的にはもっと派手なのがいいんだけどな」
(……はぁ……少しだけなら俺の通帳から下ろしてもいい…)
「マジで!気前がいいな、おい!」
……グチグチと言われても喧しいだけだからな…。
「んじゃまずは、銀行に出発といきますか♪」



(……そんなに何に使うつもりだ………)
あの後、ドレイクは銀行に向かった。
てっきり近場のコンビニのATMを使うかと思ったが、俺が普段から手数料をケチって銀行のATMしか使わない事を知っていたからか、銀行のATMを使っていた。
大方、俺の文句が喧しいだろうと思ったのだろう。
しかしまさか、十万も下ろすとは思わなかった。
「別に全部使うつもりはねえよ。念のための予備金ってやつさ。つうか、あんだけ大金があるんだからケチケチすんなよ」
俺と千秋は現在、兄貴からの仕送りで生活をしている。
しかも生活費だけでなく、俺と千秋のお小遣いまで送ってきている。
おまけにどちらも一般的に比べればかなりの高額だった。
俺の分は要らないと言ったが、兄貴も譲らず、俺が正式な賞金稼ぎ(バウンティーハンター)になるまでの間と言う事で話に決着を着けた。
俺は必要な分と多少の余分な事への出費程度にしか使わず、残りは貯金している。
おかげでもらってる金額が金額な為、口座の金額がえらい額になっていた。
正直、十万下ろされても特に痛手にはならない。
……久々に残高を見たが……金銭感覚が狂いそうだ……。
てな感じで調子に乗ったドレイクが予備金込みで十万も下ろした訳だ。
「さてと、まずは服だな♪」
ドレイクは意気揚々と服屋に向かった。



「悪くないな♪」
そう呟くドレイクが主人格の俺の服装は、派手な模様をあしらった赤のシャツ、今日着てきた俺のジャケット(どうやらこれは気に入ったらしい)、茶色のダメージズボンと言うものだった。
服屋で服を購入した後、アクセサリー屋に行き、いくつかのアクセサリーを購入し、すでに身に付けている。
身に付けている物は右手の中指にドラゴンをあしらった長めの指輪、その指輪に鎖で繋がっている大きめの指輪を小指に、右手の人差し指と薬指にシンプルな形をした銀色の指輪、右腕にドラゴンをあしらった腕輪、左腕にシンプルな形をした銀色の腕輪、首にドラゴンをあしらったネックレス、ベルトにドラゴンをあしらったバックル、ズボンの左側にチェーンと言うものだ。
アクセサリーにドラゴンがあしらわれている物が多いのは、自分がドラゴンだと言う事へのこだわりなのか?
……しかしこれは……あまり派手なのを好まない俺なら絶対にしない派手なファッションだった。
……今からこの格好で街中を歩くと思うと……憂鬱だった。
……頼むから知り合いに出会わないでくれ!



「お、お前、明日夏か!?」
俺の望みは無惨に砕け散った。
あの後、ファミレスで昼食を食べた後、街中を歩いていたら知り合いこと松田と元浜と鉢合わせした。
二人とも唖然としていた。
付き合いの長い二人からすれば、今の俺の姿は驚愕ものなのだろう。
「よ~♪松田ぁ♪元浜ぁ♪」
「……何だよその喋り方?お前そんなキャラだっけ?その格好も普段のお前ならしないぞ絶対…」
「……何か変な物でも食ったか?…」
「ああ、今日はちょっと思いきってイメチェンを、な♪」
「……そ、そうか…」
……なんだか誤魔化せたのか、誤魔化せなかったのか微妙な反応だった。
「……きっとこいつにもいろいろあるんだろ…」
「……そうだな…」
なにやらコソコソと話して納得していた。
「ところで二人とも何してんだ?」
「あ、ああ、あえて言うなら紳士の必需品を買いに、か」
「うむ」
「あ~!エロディスク買いに行くんだな!」
「失礼な言い方するな!」
「エロに失礼もなんも無いだろ?」
「いや!エロは偉大な物なのだ!!」
「貴様には一生分かるまい!!」
「ほ~」
……嫌な予感がする…。
「ならそのエロの偉大さを教えてもらおうか」
『は?』
(おい!ふざけるなテメエ!!)
俺はすぐさま、ドレイクに制止の声を掛けるが、ガン無視された。
「てな訳で、俺も連れてってくれよ?」
「本当にどうしたんだ明日夏!?」
「マジで大丈夫か!?」
松田と元浜は本気で俺の事を心配していた。
「言っただろ、今日は思いきってイメチェンしたって」
『………』
松田と元浜はお互いに向き合う。
「……どうする元浜よ?…」
「……まあいいんじゃないか。きっといろいろと発散したいんだろう」
「よし!ならば着いてこい!」
「エロの偉大さを教えてしんぜよう!」
「おう!頼むぜぇ♪」
ドレイクは松田と元浜の後に着いていく。
(ふざけるなぁぁぁっ!!)
俺の叫びはドレイク以外に聞かれる事は無かった。


(…………はぁぁぁ………)
「溜め息すると幸せが逃げるぜ?」
……誰のせいだ、誰の…。
……もう俺のHPは尽き掛けていた。
あの後、なにやら路地裏にあった店に入り、そこでで永遠と松田と元浜にエロについて語られ、正直、げんなりしていた。
ドレイクは興味深そうに聞いていた。
その後ドレイクは、松田と元浜と一緒にゲーセンに行ったりし、二人と別れた。
それからは俺の精神的に大変だった。
髪を染めようとしたり、声を掛けてきた不振な女性の誘いに乗ろうとしたり、顔に傷がある明らかにその手の集団に接触しようとしたりとさんざんだった。
……だが、それももうすぐ終わる。
後数分で約束の午後十時になるのだ。
「いや~♪楽しい時間ってのはあっという間に過ぎちまうなぁ♪」
(……こっちは神経が休まらなかったんだがな…)
「慌てるお前は見てて飽きなかったぜ♪」
(………このやろう……)
「ははは♪」
……心底疲れる…。
などと、時間まで会話していると、ふと言い争いの声が聞こえてきた。
「何だ?」
ドレイクがそちらの方を見ると、駒王学園のじゃない学生服を着た女子生徒一人を軽薄そうな五人組の男達に囲まれていた。
「ナンパか?」
十中八九その通りだろう。
女子生徒の方は嫌がっているが、男達はそれを逃さない。
女子生徒は完全に怯えていた。
(ドレイク、替われ!)
放っておく訳にもいかないと、ドレイクに人格の入れ替えを要求する。
「いいや、ここは俺にやらせろ♪」
予想外にドレイクが助けに行こうとしていた。
「その方が面白そうだろ?それにああ言うのは見ててもなんも面白くねえしな」
そう言うとドレイクは駆け出す。


「…あ、あの…やめてください!…」
「いいからさ~♪俺達といいところに…ぐへぁっ!?」
『なっ!?』
「俺、参上!」
男の一人を助走を加えた跳び蹴りで吹っ飛ばし、なにやら登場文句らしき事を言う。
「何だテメエ!!」
「なんのつもりだ!!」
男達はドレイクの行動に激怒していた。
「通りすがりの正義の味方、的な感じ?」
「ザケンじゃねえぞ!!」
「女の前だからって格好つけてんじゃねえぞ!!」
男二人が殴りかかってくるが、ドレイクはそれを易々と避け、回し蹴りと後ろ回し蹴りを叩き込み、男二人の意識を刈り取った。。
「な、なんだコイツ!?」
「めちゃくちゃ強ぇ!?」
「ん♪」
『ひ、ひぃぃっ!?』
残りの男達は一目散に逃げようとする。
「お~い♪」
『ひっ!?』
「忘れ物♪」
ドレイクは倒れている男達を指差す。
倒れた仲間を担いで、男達はその場から逃げ出した。
「大した事ねえの」
「あ、あの?」
「ん?」
「あ、ありがとうございます」
女子生徒が頭を深々と下げる。
「………後は頼むぜ……」
「お、おい!?」
面倒と思ったのか、急に入れ替わり、後処理を俺に押し付けやがった
俺はとりあえず、その場をなんとかやり過ごした。



(たく!急に入れ替わりやがって!)
『ははは♪』
あの後、俺は我が家への帰路についていた。
……今日は本当に疲れた……精神的な意味で…。
『いや~♪それにしても面白い一日…いや、正確には半日か?…だったな♪』
(……俺にとっては面白くもなんともねえよ!…)
『やはは~♪』
「……はぁぁぁ…」
俺は今日何度目かの溜め息を吐く。
『よし!閃いた!』
「……なんだよ?…」
『一分毎に五分だ♪』
「……何がだよ?…」
『俺の力を使う時の代金だ♪』
「……つまり、一分力を使ったら、五分お前に俺の体を使わせろって事か?」
『そゆ事♪』
「……そうか………ならお前の力はもう使わない………二度とお前に俺の体を使わせるか!!」
『ええ~!』
「うるさい!!黙れ!!」
『いや、たぶんうるさいのはお前の方だと思うが? 』
そんな感じで、俺にとって憂鬱な、ドレイクにとって優雅な一日が終わろうとしていた。 
 

 
後書き
今回出てきた明日夏とドレイクのファッションですが、正直自分は明日夏同様お洒落にあまり興味がなく、ファッションセンスに自信がありません。
何か指摘がありましたらどうぞご遠慮なく。 
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