美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五話 二人目の持ち主その十三
しかしだ、ここでだった。
クールな面持ちの黒の、いや青に見える腰までの豊かなロングヘアの少女が三人の目の前に見えた。青いブレザーと青と黒、それに白のタートンチェックの短いスカートに青野ハイソックスを着ている。ブラウスは白だがネクタイはダークブルーだ。
切れ長の黒い目に細長い白い透き通る様な顔、薄く小さな淡い色の唇に細く長い眉。背は一六〇を越えた位ですらりとした身体をしている。
その彼女を見てだ、智和は目をぴくりとさせて呟いた。
「彼女は」
「何だよ、先輩知ってる人か?」
「随分綺麗な人ですね」
薊と裕香はすぐに智和の言葉に応えた。
「はじめて見るけれどな」
「あの人は」
「間違いありません」
「間違いない?」
「といいますと」
「力の持ち主です」
鋭い目での言葉だった。
「あの方もまた」
「力!?」
「あの人も」
「確か二年D組の巨門菖蒲さんです」
智和は彼女の名前も言った。
「フェシング部でした」
「よく知ってるな」
「学園の関係者の名前とプロフィールは全て頭に入れています」
「それ凄くねえか?」
「一度見たものは大体覚えられます」
智和は彼の特殊能力と言ってもいい資質のことも話した。
「ですから学園の関係者のこともです」
「全部頭に入れているんだな」
「プライベートは知りませんが」
そちらはだというのだ。
「私は他の人のプライベートに興味はありません」
「紳士ですね」
「人としての常識です」
智和は今度は裕香に答えた。
「ですから」
「そう言えること自体が紳士ですよ」
実際にこうしたことを弁えられることは紳士の条件だ、世の中には何故か異様に他者の個人情報に興味のある人間がいる。何を目的としているかはわからないが。
「そこは」
「そうなのですか」
「はい、先輩紳士ですよ」
「そうでありたいものですね」
智和派謙遜の微笑みと共に裕香に答えた。
「私としましても」
「それでな、あいつもか」
薊は智和に彼女のことを問うた。
「綺麗だよな」
「そうですね、確かに」
「じゃあちょっと話をしてみるか」
こう話してだ、薊はその少女巨門菖蒲と話そうと思うのだった。炎と氷が巡り合いまた何かが動こうとしていた。
第五話 完
2014・1・30
ページ上へ戻る