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違った生き方

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第三章


第三章

「それが俺の商売なんだよ」
「モンゴル人にはなんだ」
「同じモンゴル人にはそうするさ」
 まけるというのだ。要するにだ。
「だからこれ位でいいさ」
「悪いね、何か」
「いいさ。まあうちの店でも何か買ってくれればいいしな」
 この辺りは現金なトウルイだった。そんな話をしてからだ。
 彼はだ。テルグをウランバートルのあちこちに案内しだした。一応トウルイも馬に乗って町の中を進む。彼がまず案内した場所はというと。
 やはり白い建物が並んでいる場所だった。そこは。
「ええと。ここは」
「俺の家、店もある場所でな」
 見れば色々な人間が行き来していた。草原では有り得ないまでに多い。
 しかも明らかにモンゴル人でない者も多い。鼻が高く目が青い者やモンゴル人よりも身体が細い者、そうした人間も実に多い。
 その彼等も見ながらだ。テルグはトウルイの話を聞いた。
「商店街って場所だよ」
「商店街!?」
「そのな。商いしている奴が一杯いる場所だよ」
「それが商店街なんだ」
「そうさ。はじめて見るんだな」
「うん、町に来たのもはじめてだし」
 それでだとだ。トウルイも答える。
「ううん、何でいうか」
「はじめて見た気持ちはどうだい?商店街ってのを」
「人が多いね」
 まずはこう言ったテルグだった。
「それに何かその人も」
「色々な奴がいるだろ」
「モンゴル人以外にも」
「ロシア人に中国人にな」
 トウルイは彼等を挙げていく。
「それに時々日本人もいるぜ」
「ああ、相撲をやってるっていう」
「その日本さ」
 トウルイは日本のところで笑ってだ。テルグにこんなことを話した。
「御得意様だぜ。店に来たらすっごい色々なものを買ってくれるんだよ」
「へえ、日本人ってそうなんだ」
「金払いがいいぜ。いいお客さんだよ」
「お金持ちって聞いてるけれどね」
「そうだな。お金持ちでしかも人がいい」
 それが日本人だというのだ。
「いや、もっと来て欲しいよ」
「成程ね。それと」
「それと?」
「あの鉄の。丸いのが四つ足みたいについてるのは何かな」
 丁度二人の前を通り過ぎるだ。四角く大きい、中に人がいる動くものを指差してだ。テルグはトウルイに尋ねたのである。
「あれは一体」
「ああ、車だよ」
「車!?」
「他には鉄道ってのもあるけれどな。中に人が入って動かしてな」
「それでああしてなんだ」
「馬みたいに行き来する為に使うものさ」
 トウルイは車についてだ。こうテルグに説明した。
「それが車なんだよ」
「ふうん、何か凄いね」
「草原にいたら見ないんだな、車も」
「今はじめて見たよ」
 目を丸くさせて話すテルグだった。
「あんなのは」
「最近増えてきたけれどな」
「車が?」
「俺の小さい頃は殆どなくてね」
 トウルイはこうテルグに話す。
「あっても古いソ連の車で」
「ああ、ロシアの」
「そうさ。けれど最近はああした日本のとか韓国の車が増えてきたよ」
「そっちも日本なんだね」
「そうさ。相撲をやってるのも日本でだし」
「日本との付き合いがあるんだね」
 これもテルグには今一つわからないことだった。
 
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