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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第二十八話  遭遇、脱ぎ女

 騎龍の姿で御坂さん達と怪談話をした翌日、この日は休日ということもあって俺は食材の買出しに出ていた。別に節約意識が高いなんていうつもりもないが、この周辺地域では安くて評判の良いスーパーへ向かっている途中だ。

「あれ、上条さん」

 土御門さんの寮の近辺を通りかかった時に、見たことのあるツンツン頭を見つけて声をかけた。

「あ……ああ、確か……神代……だったか?」

「はい」

 一瞬、もう記憶喪失になっているのかと思ってしまったが、上条さんはただ単に俺の名前を思い出すのに時間が掛かっただけのようだ。

「上条さんはどちらに?」

「スーパーへ買出しに。まあ、ちょっと遠いんだけどな」

 俺が世間話感覚で尋ねてみると上条さんの目的も俺と同じらしい。ちょっと遠いと言っているので恐らく俺の向かっているところと同じスーパーだろう。

「あー、多分俺も同じですよ。安いって評判なんで行ってみようかと」

「それなら多分同じところだな」

 それからしばらく他愛もない世間話をしながら歩いていたのだが、急に上条さんが足を止めた。

「あれ、上条さん?」

「すみません、どうかされましたか?」

 俺が振り返って上条さんに声をかけると、上条さんのほうは女性に声をかけていた。

「いや、別にたいしたことではないのだが」

「なんか困ってるように見えたんで、俺で良ければ力になりますよ」

 確かにスーパーのタイムセールまで時間に余裕は少しだけあるのだが、これでもし遅れてしまったらどうするのだろうかと思わなくもない。だが、こういったところが上条さんクオリティなのだろう。

「それはすまない。実は自分の車を停めた駐車場が分からなくなってね」

「はいっ!?」

「はいっ!?」

 その女性の言葉に俺と上条さんは全く同じリアクションを取っていた。恐らく上条さんのほうは自分の車を停めた駐車場が分からないということに対して、そして俺はその女性が木山春生だったことに対してである。

「おや、君は?」

「あっ、悪い。ちょっとこの人が困ってるみたいだったんでな」

 俺の声に気付いた木山先生に声をかけられると、上条さんも俺のことを思い出したのか謝ってきた。

「ちょっとした知り合いです。で、駐車場の場所が分からないんですか?」

「ああ、困ったことにどこの駐車場だったのかを覚えていないのだよ」

 俺が木山先生に答えつつ話を聞いてみると、予想通りの答えが返ってきた。まだアニメの場面ではないものの、この後アニメの展開を迎えるはずである。

「それじゃー、手分けして探すか?」

「良いのかい?」

「もちろん大丈夫です。あ、神代は大丈夫だったか?」

 上条さんが提案して木山先生が確認したので、上条さんは俺にも確認をしてきたわけだが、その瞬間に木山先生の意識がこちらに集中したのが分かった。これは恐らくレベルアッパー関連で気付かれたのだろう。しかし、気付かれたのが制限をかけた部分までなのか、それともレベルアッパーの使用者という部分だけなのかはまだ分からない。

「俺も大丈夫だけど、上条さん……タイムセール間に合う?」

「あっ……」

 木山先生がどこまで気付いたのかは後でアリスに調べてもらうとして、今は普通に上条さんへの対応をする。俺としてはタイムセールが目的ではないので、木山先生の車を停めた駐車場を探すことに反対はしない。しかし、上条さんがタイムセール目的ということは道中に聞いているので、そのことを確認してみたら上条さんは固まってしまった。まぁ、そういった部分も上条さんクオリティなのだろう。

「それなら君達はタイムセールとやらに向かったほうが良いだろう。なぁに、私の車は逃げたりしないのだから、探し回っていればその内見つかるさ」

「そりゃあそうでしょうけど。……どうします? 上条さん」

「うーん、そうだなぁ」

「あぁー!! アンタっ!」

 木山先生からの提案を受けて上条さんに尋ねてみたら、後頭部に手をやりながら上条さんが困ったように呟いたのだが、その時最近よく聞くようになった声が後ろから響いてきたのである。

「ん? おぉー、ビリビリ中学生」

「ビリビリ言うなっ!」

 御坂さんに上条さんが後頭部に回していた手を振りながら答えると、御坂さんが反射的に反論していた。そして、振り向いた俺の顔を見て驚いたように聞いてくる。

「ってか神代さん、コイツと知り合いだったの!?」

「うん、会ったのは今日で二回目だけど、知り合いといえば知り合いだよ」

 御坂さんから尋ねられたことに答える。すると今度は上条さんのほうから声が掛かった。

「なんだ、お前ビリビリ中学生と知り合いだったのか」

「だからビリビリ言うなっ!」

「うん、会ったのは上条さんよりも後だけど、知り合いというよりは友達かな」

「へー、そうなのか。神代も大変なんだな……」

 上条さんからのほうは尋ねられたという感じではなかったのだが、こちらのほうも答えておいた。そして、俺も上条さんも御坂さんのことを完全にスルーだ。

「けど、神代さんってどうやってコイツと知り合ったのよ」

 ビリビリ発言をスルーしたことは向こうもスルーのようで、御坂さんから上条さんと知り合った理由を聞かれる。

「えーっと、最初に見たのは不良に囲まれてた女の子を知り合いの振りして助け出したところかな、その後で……」

「あ……アンタもあの時居たの!?」

 俺が答えている途中で急に御坂さんが割り込んできた。恐らく御坂さんは自分が上条さんと出会った時のことだと思っているのだろう。

「あー、それはビリビリの時よりも前の話だぞ」

「ビリビリ言うなっ! ってアンタ、他にもやってたのね」

 上条さんからの補足に御坂さんが突っかかりつつ呆れていた。

「しかし……暑いな」

「あっ!」

 なんかキーワードっぽい言葉が聞こえたと思ったら、木山先生がブラウスを脱ぎ始める。

「な……何をしてるんでせうか?」

「いやぁ、しばらく歩き詰めだったからね」

 上条さんがおかしな言葉遣いになりながら尋ねると、事も無げに木山先生が答えた。しかし、やっぱり天下の往来で下着姿って違和感ありまくりだなぁ、なんて冷静に考えてしまうのは俺が女にもなれるからなのだろうか。

「ちょっ、何よこの人っ!?」

「俺も今知り合ったばっかりだから知らないよっ」

 上条さんと木山先生の間に立ち塞がるように立って御坂さんが問い詰めるが、上条さんは当然知っているわけもなくそう答える。当然俺は知っているけど、まだ知っているはずもない段階なので何も言わないでおく。なお、上条さんは両手で顔を覆いながらも指の間からしっかりと見ていた。

「取り敢えず、服着てくださいっ!」

 上条さんが木山先生のブラウスを取り上げて着せようとするが、木山先生のほうは何の行動も起こさないので、ブラウスを着てない女性とその女性のものだと思われるブラウスを持った男、という構図が完成した。

「きゃー! 女の人が襲われてる!?」

「えっ! 何あれ、あの男の人が服を脱がせたの!?」

「うわぁっ! こんなところで堂々と痴漢するなんてっ!」

 この状況を見て周囲の学生が騒ぎ始めた。俺は木山先生のキーワードを聞いた直後から数歩下がっていたので、現在は野次馬として見学している。

「ち……ちがっ……違うんだっ!」

 周囲の反応に気付いた上条さんはブラウスを持ったまま一歩下がってそう言った後、ブラウスを御坂さんに押し付けた。思わず受け取ってしまう御坂さんだが、ここで受け取ってしまったのが運の尽きというわけである。

「誤解なんだっ! 俺は無実だぁーっ!!」

「ちょっと、待ちなさいよっ!」

「ブラウスを持っていかれるのは困るんだが……」

 上条さんが叫びながら走り去ると、それを御坂さんが追いかけようとするが木山先生に止められてしまう。

「あれって、もしかして……」

「えー!? そうなの!?」

「やっぱり居るんだー。女同士で……」

「いや、ちがっ……とにかく服着てください! 見られてますっ! 見られてますからっ!!」

 上条さんが居なくなったことで周囲の反応が変わり始める。特に「女同士で」という言葉は御坂さんにも聞こえたらしく、かなり動揺を見せながら無理矢理木山先生に服を着せていた。

「神代さん、助けてくれてもいいじゃない!」

「いやいや、男の状態で出ていっても事態がややこしくなるだけで良くはならないよ。っていうか、野次馬に混じってなければ多分上条さんと一緒に逃げてたよ」

 御坂さんが俺に不満をぶつけてくるが、俺だってあんなところで痴漢に間違われたくなどない。

「もしかして、君があの雌雄同体かい?」

「いえ、男の時は完全に男だし女の時は完全に女なので、雌雄同体ではありませんよ。しかし、よく分かりましたね」

 木山先生から尋ねられるが、最近は『雌雄同体』に対する答え方が固まってきているので、今回と同じような答え方になっている。なお、『雌雄同体』の命名者は土御門さんだと本人から聞いたので、その時には眼前5cm程度の距離で最大光量のライティングをお見舞いしておいた。

「ああ、そうだったのか、それはすまない。研究者の間では雌雄同体として広まっているのでね。それから、分かったのは神代という苗字でまず何となくそうじゃないかと思っていて、さっきの『男の状態で』という言葉で確信したのだよ」

「なるほど。ということは研究者さん?」

 もしかしたら木山先生が俺に意識を向けてきたのは苗字が『神代』と分かったからなのだろうか。取り敢えず木山先生の出方を見るために探りを入れてみた。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。大脳生理学の研究者で木山春生だ」

「まぁ、知ってるんでしょうけど、神代騎龍です」

「御坂美琴です」

 木山先生が普通に自己紹介をしたので俺と御坂さんも自己紹介をすると、今度は木山先生の意識が御坂さんのほうに向いた。確か、レベルアッパーは妹達(シスターズ)の研究データを参考に作られているはずなので当然といえば当然だろう。

「ほお、君があの超電磁砲(レールガン)か」

「あ、はい」

 木山先生に聞かれて御坂さんが答えるが、かなり精神的な余裕がないようだ。さすが伝説の脱ぎ女、木山先生である。

「やっぱり御坂さんは有名だねー」

「いや、それならアンタも有名でしょうが!」

 俺が茶化すように言うと、すかさず御坂さんのツッコミが入る。これで少しはリラックスできただろう。

「研究者とか一部の人達にはね。一般の生徒で知ってるのって柵川中学を除けば、長点上機とか霧ヶ丘、そんでもって常盤台ぐらいのもんでしょ」

「えっ、そうなの!?」

 俺が答えると御坂さんは驚いていた。どうも御坂さんは自分の常識が一般の常識であると思っているように見える。

「ああ、そうだな。常盤台は一時柵川と交渉していたようだし、長点上機や霧ヶ丘辺りに至っては今の段階から引き込もうと躍起になっているようだから、その学校の生徒が知っていてもおかしくはないだろう」

「うわぁ……そうだったんだ。常盤台までもがねぇ……」

 木山先生から補足された説明に俺も驚く。学校のほうからは特に何も聞いてないので、学校側が全て処理してくれたのだろう。

「しかし、暑いな。どこか涼しい場所にでも移動しないか?」

「あ……そうですね」

「はい、行きましょう」

 このままここで話し続けても、また木山先生が脱ぎ女になってしまいかねないので、俺と御坂さんは即座に木山先生を連れてセブンスミストへと移動することにしたのである。











おまけ

「神代のことは『雌雄同体』で登録しといたぜい」

「なんでまた雌雄同体に?」

「そりゃもちろん、面白そうだったからに決まってるにゃー」

「あー、そうですか……バルスッ(ライティング)!!」

「ぎゃー、目がっ、目がぁー!!」
 
 

 
後書き
お読みいただいている皆様ありがとうございます。
長さのわりに時間が掛かってしまいました。

2014/04/26 ジャンルの中に性転換というのを入れてはいたのですが、タグにそのような記載がなかったため『性別切替』をタグに追加しました。ってか、これはTSになるのかな? 
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