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白波

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第七章


第七章

 髷をしている。その髷も整っている。その彼が言うのである。
「ようやく京まで来た」
「青砥殿もですか」
 駄右衛門が彼を見て言う。五人男全員がだ。
 彼に向かい合いだ。夜の皐の中で話すのだった。
「ようやくここに来られたのですか」
「都に」
「御主等を捕らえる為にじゃ」
 まさにその為にだとだ。この男青砥藤綱は言うのだった。
「言ったな。あの時鎌倉で」
「はい、京の都で剣を交えそのうえで」
「どちらが散るか決めようと」
「そう話しましたな」
「確かに」
 四人がだ。その青砥に応える。
「そのこと忘れてはおりませぬ」
「だからこそ今この都にいます」
「そしてそのうえで今」
「この銀閣寺においてでしょうか」
「安心せよ。今はそれはせぬ」
 彼等と剣は交えぬとだ。青砥はそのことを否定した。
 そのうえでだ。彼はこんなことを言った。
「ただ。聞きたいことがある」
「聞きたいこととは」
「何故あの娘を助けた」
 おきよのことをだ。彼等に尋ねたのである。
「それは何故だ。悪党である御主等が」
「外道は好きでありませぬ故」
 駄右衛門がだ。こう青砥のその問いに答えた。
「ですから」
「確かに。聞くところによると越後屋は」
 彼もだ。その越後屋について聞いていたのだ。
「相当あこぎな金貸しだったらしいな」
「その通りです」
「そしてあの娘を女郎に売り飛ばそうとしてそうだな」
 それもだ。詐欺そのものの証文を楯にだ。
「他の娘や顔立ちのいい童達もな」
「そうした外道だからです」
 それ故にだとだ。また駄右衛門が話す。
「ああしたのでございます」
「それだけか」
「左様です」
「娘を助けようと思ってのことではないのか」
「ははは、そのことですか」
 このことについて問われるとだ。駄右衛門も四人もだ。
 今度はだ。こんなことを青砥に述べた、
「我等ああした小悪党そのもののことは許せませぬ故」
「悪党ならばうんと大きな悪事をやる」
「ただ。非道はせぬ」
「それ故にあの娘を救っただけ」
「小悪党に娘が困らせられているのなら」
 それ故にだとだ。五人は言うのである。
「だからこそです」
「まああの娘は助かってよかったですな」
「それは何よりです」
「後は父親共々幸せに過ごせばいいですな」
「それで」
「ふむ。御主等らしいな」
 そうした話を聞いてだ。青砥は。
 満足した顔になり頷きだ。こう五人に述べた。
「それでよい。それでこそじゃ」
「それでこそと申されますか」
「わしも御主等を捕らえがいがある」
 小者ではなく大物だからだ。それでだというのだ。
「ではじゃ。あらためてじゃ」
「はい、それではまた日をあらためて」
「再び会いそうして」
「互いに剣を交えそのうえで」
「雌雄を決しましょう」
「この都で」
「楽しみにしておる」
 その通りだとだ。青砥もまた言ってだった。
 そのうえでだ。彼等は夜の銀閣寺で赤や白の皐達に囲まれそのうえでだ。彼等は今は別れた。再会しその時こそ雌雄を決することを約しながら。


白波   完


                  2011・9・30
 
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