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万華鏡

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第六十一話 日本シリーズその十

「まともな政府だとちゃんと動いてくれるでしょ」
「阪神の時は酷かったんですよね」
「それで東日本の時なんて」
「あんなのは二度と政権に就けたら駄目なのよ」
 当時の左翼政権の如きはだというのだ。
「痛い目を観るのは自分だから」
「変な人を政治家に選ぶとですね」
「それで変な政党を選ぶと」
「変な人が監督になる以上にね」
 悪い事態になるというのだ。政治家即ちフロントに碌でもない人間を選んだ場合に起こってしまう惨事というものは。
「原発事故に対応の遅れ、色々あったでしょ」
「しかも辞めるって言って辞めなかったし」
「その間も酷いことになっていましたね」
「あいつは最低の人間よ」
 当時の首相はだ、先生は完全にあいつ呼ばわりだった。
「さらに最悪がつくね」
「確かにとんでもない奴ですね」
「今も責任転嫁ばかり言ってますし」
「絶対に責任取らないですよね、あいつは」
「それで他人を批判する時だけ威勢がよくて」
「よく覚えておくのよ、ああした奴がね」
 まさにだというのだ。
「最低人間よ」
「ですよね、ただ何も出来ないだけじゃなくて」
「何かあると怒鳴り散らすばかりで」
「平気で嘘吐いて責任転嫁ばかりして」
「自分のことしか考えないですし」
「無神経ですし」
「先生からも言っておくわ。あんな人間になったら駄目よ」
 その当時の首相の様な人間にはというのだ。
「その前の奴もだけれどね」
「どっちも最低ですよね」
「人間としておかしいですよね、どっちも」
「何も出来ないし責任は取らないし」
 一方は責任を把握せずもう一方は責任から逃げて回る、しかも反省もせず他人への配慮もない。尚且つ自分のことしか考えないとあってはだ。
「そんな奴を政治家にしたら駄目ですね」
「そういうことですね」
「そうよ、先生もその時によくわかったわ」
 その震災の時にだというのだ。
「人は選ばないとね」
「駄目ですね」
「自分達に返って来るから」
「確かに皆痛い目に逢ったけれど」
 それでもだというのだった。
「この程度で済んでましだったかも知れないわね」
「えっ、あれだけ酷いことになってもですか」
「まだですか」
「そう、日本っていう国はまだあるから」
 有り得ないまでに無能でかつ人格もこのうえなく卑しい連中が政権に就いてもだ。日本という国がまだあるからだというのだ。
「まだね」
「ましですか」
「日本があるだけ」
 生徒達は先生の言葉を聞いてそれぞれ言った。
「震災とか宮崎の和牛とか嫌なこと一杯ありましたけれど」
「それでもなんですか」
「ええ、まだね」
 日本があるだけだというのだ。
「最悪日本が潰れていていたわ」
「文字通りですか」
「そうなっていましたか」
「今の巨人以上にね」 
 記録的な敗北数で最下位になったこのかつての盟主よりもだというのだ。
「酷いことになっていたわよ」
「ううん、じゃああれですか?」
 生徒の一人が先生に言って来た、考える顔で。
「戦車に轢かれながらこんな筈では、って言う羽目になっていたとか」
「そうかもね、空襲を受けるかして」
「そうならなかっただけですか」
「ましだったかも知れないわ」
 確かに様々な災厄が起こってもだというのだ、愚劣極まる政権が三年以上に渡って日本を蝕んでいても。 
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