White and Black
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第一章
第一章
White and Black
ロバート=スタッドマンは住んでいるカンサスを出てだ。ロサンゼルスに出た。理由は簡単でそこで成功して金持ちになる為だ。彼はカンサスを出る時にこう周囲に話した。
「まああれだよ」
「あれって?」
「何で成功するっていうんだ?」
「俺の歌でな」
実は彼はハイスクールの頃からカンサスで有名な歌い手だった。その評価はかなり高くロサンゼルスに出るのも実はスカウトされてのことなのだ。
「これで成功するからな」
「それで金持ちになるんだな」
「アメリカンドリームを実現するって訳だな」
「ああ、そうさ」
彼はその屈託のない明るい笑顔で答えた。ブラウンの髪に緑の目、それに彫のある顔に高い鼻。何処からどう見ても白人である。イングランド系である。
その彼がだ。同じく白人である友人達に話すのだった。
「そうするからな」
「ロスなあ」
「結構色々な人間がいるらしいよな」
友人達はそのロスの話もはじめた。
「何かあれだろ?アジア系もいて」
「アフリカ系もいるよな」
「ヒスパニックもな」
「それでそうした系列の音楽もあるよな」
彼等のその音楽の話にもなる。アメリカは多くの民族で構成されているだけあって様々な音楽が存在している。ロバートのやっているその音楽の話になっていったのだ。
「御前がやってるカントリーロックだけじゃなくてな」
「他にもな」
「ははは、そういうのには負けないさ」
ロバートは笑ってそのうえで負けん気を出した。
「俺のカントリーロックはな。そうした音楽にもな」
「勝てるっていうんだな」
「それにも」
「ああ、勝ってやるさ」
友人達に笑顔でこう言うのであった。
「それでな。金持ちになってやるさ」
「ああ、それじゃあな」
「頑張れよ」
こうして彼はカンサスを出てロサンゼルスでの活動をはじめた。最初から幸運なことにCDがそこそこ売れ順調に進んでいた。ところがだ。
彼はだ。カントリーロックだけではないことをだ。ロスで知ったのだった。
店に行けばだ。そこには。
ロックもある。彼のジャンルのカントリーロックもだ。しかしだ。
それ以上にだ。他のものが多かった。
ポップスがある。ジャズにゴスペルにラップにだ。とにかく様々な音楽がある。アメリカそのものと言っていい状況になっていた。
しかしそれを見てだ。彼は言うのであった。そのCD達のジャケットを見てだ。
「何かな」
「アフリカ系ばかりだっていうのかい?」
店の者がここで出て来て声をかけてきた。アフロの痩せたアフリカ系の青年だった。店の中は赤や青や黄色でかなり派手だ。店の内装もそうだがそれ以上にCDのジャケットの色が目立った。目がちかちかせんばかりの極彩色の店の中にいる店員はだ。ジーンズにシャツというラフな格好だ。しかし赤いシャツがやけに目立つ。店員自身もピアスにブレスレットにとだ。極彩色の店の中に負けない格好である。
その店員がだ。彼に声をかけてきたのである。こう。
「この店にあるのは」
「いや、それは」
「まあジャズとかラップが人気あるからな」
店員は特に悪い顔をするでもなく彼に言ってきた。
「そういうのはな」
「アフリカ系の音楽か」
「伝統的にそうだろ」
「そうだよな。どっちもな」
「それでだよ。他の音楽だってな」
そのロックやポップスもである」
「多いよな、どうしても」
「アフリカ系がな」
「アメリカの音楽界ってそうなってるからな」
スポーツの世界もそうだが音楽もだ。アメリカのそうした世界はアフリカ系が多い。これについては身体能力や音楽センスが影響していると言われている。
「あんた別に人種差別とかはないよな」
「人種差別?」
「いるからな、どうしても」
店員はここでは真面目な顔になっていた。
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