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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第56話 派手なビームとか必殺技がない分は使える物を使って少しでも派手に見せるとか工夫をすればバトルは盛り上がる

 
前書き
【前回のあらすじ】

 突如としてやってきた奉行所と名乗る不法侵入者から逃走を図った銀時達。だが、それを追い駆けてきた殺人メイド達は何故か銀時達が異世界で遭遇した異界の力【魔力】を使って襲い掛かってきた。
 異界の力を駆使する殺人メイド達に翻弄される銀時達であったが、突如としてなのはが同じ力を発揮し難を凌ぎ、更にかつて異界で戦った魔導師【フェイト・テスタロッサ】とその使い魔である【アルフ】との合流により窮地を脱する。
 銀時は源外との合流を優先とし、新八にたまを預け先に行かせる事にしたのであった――― 

 
 銀時達から分かれた新八は、一人生首状態のたまを脇に抱えてひたすらに走り続けていた。息せき切らせ、額から汗を流しながら新八は走っていた。
 
「くそっ!」

 走りながら新八は悪態をついた。殺人メイド達に見つからないように大手通ではなく細い路地裏を選んで走っていた筈だったのだが、それが返って災いしてしまった。既にあちこちで先回りしていたメイド達に見つかり、大勢の殺人メイド達に追い掛け回されていたのだ。
 その姿こそ愛くるしいメイド姿であり、手に持っているモップが更にメイドっぽさをかもし出している。
 其処へ来て「お帰りなさいませ、ご主人様」等といわれれば確実に男は落ちるだろう。
 だが、今新八を追い掛け回している輩は人の姿をした人でない輩だ。故に新八はそいつらに一切萌える気もなければ嬉しくもない。
 何故なら、彼女等に捕まれば確実に殺されてしまうからだ。

「銀時様は貴方に最善の道を示したようですが、どうやら貴方が一番の貧乏くじを引いてしまったようですね」
「び、貧乏くじを引くのは毎度の事ですからね。もう慣れましたよ。それにしても、一体どれだけ居るんだこのメイド達は!」

 行けども行けどもメイド達が沸いて出てくる。後ろから追い駆けて来る者達が主だとして、路地裏の屋根伝いから落ちてくるメイド達。視界の悪い場所から突如として現れるメイド達。
 メイド、メイド、メイド、めいど、MEIDO、冥土、まいど、メイド。
 一部誤字があった様に思えるが、とにかくメイドづくしだった。それこそメイド喫茶でも開けば大儲け出来ると思われる位の量が。

「今の貴方の生存確率を計算してみました。現状のままですと貴方の生存確率はざっと5%程度です」
「嫌な計算しないでくれない! さりげなく傷つくんだけどそれ! ってかその5%って何? 前にも僕銀さんに【新八の95%は眼鏡だ!】って言われた事があるんですよ。何気なく5%ってのに傷つく内容があるんですから止めて下さいマジで!」

 どうやらさりげなく計算したたまの発言が新八のハートにダイレクトアタックを決めてしまったらしい。
 新八のライフポイントに500のダメージが加算されてしまった。

「嫌、ないからね! これ遊戯王じゃないから。ダイレクトアタックもなければライフポイントもないからね!」

 走りながらも懸命にツッコミを忘れず行う辺り、流石は新八と言えた。とにもかくにも新八は急ぎ源外の元へと向わなければならない。しかし、その為にはこの殺人メイド達を振り切らなければならない。
 だとするならば、此処で逃げ続けるままでは一向に状況が好転しない事を新八は悟った。
 ふと、さっきまで必死に逃げていた足を新八は止めた。その場で立ち止まる新八の周囲に殺人メイド達が群がっていく。

「何を考えているのですか? 折角5%あった生存確率が今ではたったの0.5%になってしまいましたよ」
「そうですね。でも、このまま逃げ続けていたら意味ないって事に僕は気付いたんですよ」
「ならば、どうするつもりですか?」
「たまさん、普通の人間だったら、こう言う時どうしますか?」

 何を考えているのか? 
 疑問に思いながらもたまは実直に新八の質問に答えた。

「そうですね、普通の人間ならば此処で私を捨てて無様に逃げ惑うでしょうね。一見愚作に思えるでしょうが、この方法を用いれば現状で0.5%しかない生存確率がおよそ20.5%にまで跳ね上がります。今の貴方にとってはそれが最善の方法だと予測します」
「そうですか、でも……それは一般人の考え方ですね。でも、僕達は……侍は違う!」

 足元に転がっていた鉄パイプを拾い、それを構える。

「侍? 侍とは何ですか? 私のデータベースにはない言葉です」
「それじゃ、データベースに加えておいて下さい。勇者よりも、魔王よりも上に居る存在で、それでいて女の子の涙に弱い者達だと言う事を!」

 その言葉を皮切りに、新八は目の前に居た数体の殺人メイド達に向い鉄パイプを振るった。
 それに呼応するかの様にメイド達もまた新八に向いモップを振るった。新八の鉄パイプとメイドのモップがぶつかり合い金属音を奏でる。その直後に身を翻して新八はモップを持っていた方向とは逆方向に新八は鉄パイプを振るった。それにはメイドは対応出来ず、側頭部に諸に食らいそのまま地面に倒れこんでしまった。
 続けざまにすぐ横に居たメイドのどてっ腹に蹴りを叩き込み壁に叩き付け、そのまま再度走り出した。

「ついでに、侍はどんなに強い相手が目の前に居ても決して諦めない強い魂を持った人達なんです。理解出来ましたか?」
「了解しました。魔王より上、つまり大魔王の配下の者と記録いたします」

 あれ? 何か微妙に違うような。内心そう思いながらも新八は向ってくる殺人メイド達を持っていた鉄パイプでなぎ払っていく。
 幸いなのはこいつらが魔力を用いない事だった。こんな狭い場所で魔力を用いられたら流石に対応出来なかっただろう。
 お陰で、源外の工房が見える辺りに差し掛かった頃には殺人メイド達の姿は見られなかった。

「よし、この分ならもうすぐ―――」

 安心したその時だった。突如として背後から何かが現れる感覚と同時に首筋にゾッとした感覚を覚えた。その感覚に従い新八は後ろを振り向く。
 其処には金髪の男性がこちらに向い飛び掛っている光景が見えた。

「目標確認。これより捕獲に移ります」

 男性の右手首から音と共に薬莢の様な物が飛び出すのが見えた。新八が見る事が出来たのは其処までだった。




     ***




 新八が大変な事に巻き込まれているのとほぼ同時刻。銀時達は突如としてやってきたフェイト、アルフ両名と合流し、粗方殺人メイドの掃除を終えてその場から退散しようとしていた。
 が、そうそう簡単に物事が運ぶ筈もなかった。同じ極の磁石同士が合わさると反発しあうかの様に、同じ人間でも互いに反発し合う者も居たりする。
 この二人の様に―――

「あぁん、てめぇ今何つったぁ!?」

 思いっきりドスの利いた声で銀時は言葉を放つ。その額には大量の青筋が浮かんでおりかなりご立腹だった。しかし、ご立腹なのは銀時だけでなく、その銀時に睨まれている者もまたご立腹状態だった。

「頭だけじゃなくて耳も悪くなったのね? だったら何度でも言ってあげるわ。この主役もどき!」
「てめぇぇぇ! ジャンプ漫画で人気の主人公である俺をよりにもよって主役もどきだとぉゴラァ! 一体何処をどう見て俺が主役もどきだってんだよ?」
「見たまんまじゃない! 私が助けに来なかったら今頃骸になってたでしょう? 主人公ならあれ位自分の力で切り抜ける筈なのにそれが出来ない時点で貴方は主役もどきなのよ!」

 そんな訳で、銀時とフェイトの両者はその場から一向に動こうとはせずに互いに激しくメンチを切りあっている有様であった。
 んで、そんな二人に対して深い溜息を吐いているアルフと呆れ返っている神楽となのはが其処に居た。

「お~い、いい加減にしようよぉ二人共ぉ。でないと本当に面倒な事になるからさぁ」

 これ以上無駄に時間を浪費する訳にはいかない。早くこの場から移動したいとアルフは二人に声を掛けた。

「うっせぇんだよ犬っころが! てめぇはその辺でお座りでもしてろ!」
「アルフは黙ってて! この男の言動だけは絶対に認める訳にはいかないんだから!」

 アルフの静止を無視し、両者は再度睨み会いを始めた。
 駄目だこりゃ、この二人は近づけば回りがどうだろうと構わずに喧嘩を始めてしまう。此処まで険悪なのも案外新鮮かも知れない。
 顔に手を当てて呆れるアルフ。そんなアルフの両肩にそっと神楽となのはが手を置いてまぁまぁと彼女を慰める。
 そんなほのぼのとした光景を見せる三人とは裏腹に例の二人は今にも互いの得物で喧嘩を開始してしまいそうな空気をかもし出していた。
 が、そんな二人の空気など全く読まずに殺人メイド達はぞろぞろと向ってくる。

「ほら、二人共! 急がないとまた奴等が群がってくるよ!」
「ちっ、こいつ一人でも面倒なのに更に厄介な奴等が来ちまったじゃねぇか」

 押し寄せるメイドの大群に銀時が舌打ちを鳴らす。すると、そんな銀時を見てフェイトは鼻で笑って見せた。

「何、あんな機械の塊に苦戦してるの? それってかなりやばいんじゃない? 主人公降板してもおかしくない位やばいんじゃない?」

 口元に手を当てて肩を震わせながら笑うフェイト。心底そんな彼女がむかついたのか、銀時は額に青筋を浮かべながら言葉を返した。

「べ、別に苦戦なんかしてねぇし。只あんだけの奴等を相手にしてたら流石に疲れるだろうなって思ってただけだしぃ。お前こそどうなんだよ? 此処じゃお前が逆に弱体化して返ってきついんじゃねぇの?」
「心外ね。この程度のハンデが何よ! そんなの全く苦にならないわ!」
「言うじゃねぇか、何なら勝負するか?」
「望む所よ」

 互いに目からメンチビームを放ち火花を散らす。最早此処まで来ると止めるだけでも相当苦労しそうだ。もうこうなっては黙って展開を見守るしかない。

「どうする? 黙って見守るしかない?」
「放っとけば良いネ。好きにやらせて置けば良いアルよ」

 アルフの問いに神楽は面倒臭そうに返す。鼻をほじほじしながら視線は明後日の方向を向いている辺り心の其処からどうでも良いと思っているらしい。

「ルールは簡単だ。あいつら殺人メイド達をどっちがより多く倒せたかで競う。文句ねぇな?」
「勿論! 勝つのは私で間違いないから何だってOKよ」
「何とち狂った事言ってんだクソガキ! 勝つのはこの俺に決まってるんだよ! 空気読めよコノヤロー」
「貴方こそ空気を読んだらどうなの? 普通こう言う場面は後から来たキャラクターが目立つ場面だって相場が決まってる筈よ!」
「おめぇなんざサブキャラがお似合いなんだよ!」
「あんたこそこの小説じゃサブキャラ同然じゃない!」

 一向に勝負が開始されず、ただひたすらに醜い口論が展開されるだけだった。しかし、そんな両者の事などお構いなしかの如く殺人メイド達が一斉に襲い掛かる。通常の数倍の破壊力を誇るモップを振り回し、まるで一騎当千の猛将の如き猛々しさで襲い掛かる。

「先手必勝!」

 その言葉と同時に銀時は我先にと襲い掛かってきたメイド達を横一文字に木刀で薙ぎ払った。たまたま銀時に向って来た数体のメイドが胴体から真っ二つに切り裂かれた。切断部分から機械のパーツらしき部品の数々とドス黒いオイルを撒き散らしアスファルトにその骸を落とす。

「あ、せこいっ! 貴方それでも主人公なの!?」
「あったり前だろうが? これは銀魂だぜ? 銀魂が真面目にバトルするとでも思ってたのか? 勉強が足りねぇんだよ」

 そう言ってる銀時の顔はとても下種な笑みを浮かべていた。まるでこの最初で勝ち逃げ確定とでも言いたげな感じで。だが、その下種な笑みと蔑んだ言動が返ってフェイトの闘争心に火を点けてしまった。

「上等じゃない。だったらこっちはこっちのやり方で戦うまでよ!」

 やられたらやり返す。なんともシンプルかつ合理的な答えをフェイトは行った。その方法はと言うと、メイド達が群がっている地点に向い弾丸の如く突撃を行ったのだ。しかもその際に光の速さで移動出来る移動魔法を用いて突撃した為、その様はさながら光の弾丸であった。
 そして、そのままの勢いでメイド達の群れへと突撃した次の瞬間。まるで木の葉でも舞い散らすかの様にその場に居たメイド達が上空へと舞い上がる。無論無傷なメイドなど居る筈もなくどれも皆細切れに切り刻まれていた。どうやら高速移動をした際にそのままのスピードで斬撃を行ったのだろう。それを食らったメイド達は何故自分達が切られたのか理解する間もなく目から光を失い無様に大地に倒れ伏してしまった。

「き、汚ぇぞてめぇ! 一般人相手に魔法で対抗すんのかよ! レフェリー、あの子インチキしてまぁす!」

 明らかに焦っているのか、フェイトに向い野次を飛ばす銀時。が、フェイトにとってそれは返って清清しい言葉にも聞こえた。

「あらあら、負け犬の遠吠えほど惨めなものはないわねぇ」
「んだとぉ?」
「これで私の勝ちは確定よ。潔く負けを認めなさい」
「冗談じゃねぇ! てめぇがそう来るならこっちは―――」

 銀時はそう言うと近場で横転していたタンクローリーへと近づく。そして、それをあろう事か木刀で叩き、遥か遠くへと跳ね飛ばしたのだ。
 上空をまるで飛び魚の如く飛ぶタンクローリーの目下には更に大勢の殺人メイド達が居た。その丁度中心にタンクローリーは落下し、大爆発、そして大炎上。哀れ、天使の笑顔を持った殺人メイド達は地獄の業火で焼かれ見るも無残な姿を晒す事となってしまった。

「な、何て滅茶苦茶な事を……」

 フェイトは唖然とするしかなかった。あんな戦法まず用いる訳がない。最早呆れるしかなかった。だが、銀時のバトルフェイズはこの程度で終わる筈がない。
 続いて銀時は、またその辺にあった極普通の乗用車をまたしても木刀で跳ね飛ばす。しかし、今度放った場所は殺人メイド達の下へではなく、全く別の方向にある高層ビルに向ってであった。
 30~40階立てと思われる高層ビルに向い乗用車は突っ込みまたしても爆発炎上。その爆発の為か高層ビルが斜めに傾く。其処へ追い討ちを掛けるかの如く銀時は突進した。爆発の影響で高層ビルの1階部分は相当破損していた。だが、まだ足りない。倒壊寸前の高層ビル内部へと入った銀時は目の前にあった野太い柱を一本木刀で破壊した。
 すると、傾いていた高層ビルが重力に従い地面に倒れ、倒壊してしまったのであった。
 倒れる場所に居た大勢の殺人メイド達を道連れにして―――

「あ~あ、お父さんムキになって。後で怒られても私知らないからねぇ」
「そう言う問題? 明らかに怒られるで済む代物じゃないよねぇあれ」

 呆れるを通り越してアルフは青ざめていた。無理もないだろう。醜い痴話喧嘩から始まった殺人メイド虐殺撃がまさかのデストロイ劇場へとスイッチしてしまったのだから。
 倒壊の際に吹き荒れる黒煙の中から銀時はゆっくりとやってきた。木刀を肩で担ぎ、余裕の笑みでフェイトの前に歩み寄る。

「どうだ、これが侍の戦い方よ」
「ぐっ……まさか、回りの物を武器に使う何て」
「勝つ為には手段なんて選んでられねぇからなぁ。使える物は何だって使うのが俺流なんだよ」

 自慢げに語り、勝ち誇った笑い声を上げる銀時。対し、フェイトはとても悔しそうに歯噛みしていた。既に粗方の殺人メイド達を片付けてしまった為にもう周囲に敵影はない。従って、多少……と、言うよりかなり無茶苦茶な戦い方をした銀時の方が多く倒したので銀時の勝利は確定となった。

「はいはい、終わったんならとっとと移動するよ~、二人共」

 何時までも立ち往生していられない。手を叩いて空しい痴話喧嘩の終了をアルフは促した。それを受け、流石にこれ以上無駄な喧嘩をしていられないなと二人は仕方なく移動をする事にした。本当に仕方なくだが。

「にしても、どうやら全部のメイドが魔力を使えるって訳じゃなさそうだね。一部の強化型メイドだけが使えるっぽくて助かったよ」

 流石は使い魔だ。先の戦闘を只傍観していただけではなく、メイド達について出来る限りではあるが分析していたようだ。それによると全ての殺人メイド達が魔力を使えるのではなく、一部の指揮官機、若しくは強化型しか魔力を使えないようだ。
 そのお陰か銀時自身もメイド達を蹴散らす事が出来たのだろう。しかし、例えそうだとしても厄介な事は変わりなかった。
 現にフェイトの動きが元の世界に比べて若干遅かった。それこそ若干なのだが、実戦に置いてはその若干が命取りになりかねない。
 しかも、フェイトの場合はスピードを用いた戦法を得意としているのだからそのスピードが遅くなれば決め手を潰されたも同然だ。
 今回の様な雑魚相手なら難なく勝てるだろうが、もし強敵と出会った際に、果たして何処まで通用するだろうか?

「おい、今回は俺の勝ちなんだから、後でパフェ奢れよな」
「ちょっ、何よそれ! あんたこんないたいけな乙女に奢らせる気なの?」
「お前がいたいけな乙女だぁ? お前に比べたら家の暴食娘の方が遥かに乙女してらぁ」

 あ、また喧嘩を始め出した。本当にこのままではキリがない。
 全くいい加減ンにして欲しい気持ちだった。




 とある高層ビルの屋上にて、銀時達の醜い痴話喧嘩を眺めている男が居た。
 万事屋に不法侵入を行った奉行所の男だった。恰幅の良い体つきに邪気の篭った視線を惜し気もなく銀時達に向けている。

「ふん、まさかこんな所に居たとはな。てっきりアイツと一緒に次元空間の藻屑になったとばかり思っていたが……ん?」

 男が振り返る。すると其処には若い男性が姿を現した。金色の髪に鋭い眼光を持つ男性だが、その顔に生気は宿っていない。
 彼もまたからくりだったのだ。

「戻ったか、伍丸弐號」
「ご命令通り、零號の回収を終了致しました」

 伍丸弐號が淡々と告げる。その後に続いて、メイドが首だけのたまを持って来る。
 それを見て男は薄気味悪い笑みを浮かべる。

「ご苦労。これで鍵は揃ったな」
「ところで、何をご覧になってたのですか?」
「あれだ」

 男が顎で指す。其処に映っていたのは未だに醜い痴話喧嘩を続ける銀時とフェイト。そんな二人を止めようと必死になっているアルフと我関せずとばかりに無視を決め込んでいる神楽となのは。そして欠伸をしている定春の姿があった。

「何ですか、あの連中は?」
「侍、そして異界の人間だ。向こうの呼び方では魔導師とも呼ぶな」
「侍、魔導師……私のデータにはない名称です。データに書き加えますか?」
「いや、その必要はない。どうせ直に消え失せる存在だ。侍も、魔導師もな」

 吐き捨てるように言うと、男は目線を移す。銀時とフェイトからその視線を定春の上に乗って退屈そうにしているなのはへと移した。

(あの時、参號を破壊したあの力……まだ完全に覚醒してはいないようだな。完全に覚醒すればあの程度では済まん。それにしても恐ろしい。無限大の危険性を持つ子供。……正しく化け物だな)

 男は一通り見ると踵を返す。これ以上見続けていても時間の浪費にしかならない。それよりも鍵は揃ったのだから行動を起こす事が先決だった。
 そう、江戸をひっくり返す程の行動を―――




     つづく 
 

 
後書き
【次回予告(嘘)】

銀時
「ついに始まった大江戸寒冷化作戦。江戸に向い落下する巨大隕石を食い止めるべく、白い機動兵器は宇宙(そら)へと舞い上がる。果たして、江戸の命運は? そして、この戦いの行く末とは?

次回、起動侍ギンザム

【漆黒の宇宙へ】君は、この戦いの目撃者となる」

新八
「またやってるよこの人は(汗」 
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