インフィニット・ストラトス 自由の翼
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入学と自薦他薦……です。
前書き
今回はバトルなし
あの試験から2ヶ月の時が経ち、現在は桜咲く4月初旬です。
厳しい訓練や勉強をこの短期間でこなすのには多少骨を降りましたが……代表候補生に選ばれた以上はそれをこなすのも義務ですからね。
そして、明日はIS学園の入学式なので私たち姉弟はその最後の準備を終えて自宅リビングでくつろいでいます。
「月日が流れるのって、早いよねぇ。一夏。」
「まぁ、それには同感だな。」
あの入試の日に一夏はISを動かしました。これには……なまらびっくり―――いや、私はそこまで驚いてませんけれども。転生者なのですからして、事の顛末は知っていましたし。
ただし、それは私個人からしてです。この出来事は世間を大きく騒がせちゃいましたね。
世界的なニュースにもなりましたしね。
連日のように記者がインタビューに来たり、学者を名乗る人達が「弟さんの生体データを取らせてほしい」と押し寄せてきて近隣の方々に迷惑をかけてしまったり……(このときは警官隊がくる事態にまで発展しました)。
そんな出来事を重く見た日本政府は超国家機関の権限を利用して私と一夏をその保護下に置くという通達が来る事態に。現在も自宅周辺をコワモテ黒服のSP達がうろついているようですね。我ながら……VIPになった気分です。(え?場違いですか?……ですよねー。)
片や史上初の男性IS操縦者。片や日本代表候補生にして第4世代IS操縦者。
第1回モンド・グロッソ優勝者にして初代ブリュンヒルデこと織斑千冬の身内。
拉致された経験もあるので政府が気を利かせてくれたのでしょうね。
「明日は入学式だね。」
「ああ、そうだな。俺は自宅から通うから関係ない……のか?」
「全寮制だけど……どうなのかね?一夏はいきなり女子高に放り込まれる訳だけどさ。」
「まだ夢見心地だよ。うまくやっていけるかどうかなんかはわかんねーな。」
「まぁ、なるようになるかな?……んじゃ、お休み一夏。」
「おう。俺もそろそろ眠るとするか。春奈、お休みー。」
私と一夏は自室に戻り就寝します。―――?
気のせいでしょうか?誰かがいるような……。
そんなことを考えながら私は眠りに落ちました。
●
○side???
「ふむふむ。最後のフィッティングは完了だね。」
ここは篠ノ之束の秘密ラボ。現在地は彼女と神のみぞ知るといったところか。
「うーん?展開装甲はデータ量としては物足りないかな?いや、はるちゃんのスペックなら十二分に使いこなしてくれることを束さん期待しようか。」
その場にいない人物のことを口に出しながら束はフリーダムから送られてくるデータを閲覧する。
春奈の事実上専用機[フリーダム]は束謹製の極秘回線を介してこのラボとつながっている。そこから送られてくるのは、その駆動データと起動経験値、春奈個人の戦闘データなどなどである。
「ここまで節制しないとエネルギーが持たないのかな?せっかく永久機関を組み込んだのに。まぁ、諸刃の剣に変わりはないから仕方がないかな?」
束は自身の作った物に関しては人並みならぬ愛着を持っている。いや、それは当たり前だろう。彼女はISを生み出した人物の一人なのだから。
「さてと、いっくんのISも組み終わったし……まぁ欠陥機として放置されてたのを改修しただけだけど。別にいいよねー。ぶいぶい」
自らの子を自慢する教育ママのような微笑を浮かべて束はこうつぶやいた。
「いっくんの望む剣になってね。いい?―――[白式]。」
ラボの隅にぽつんと置かれた白磁の機体は窓から差し込む朝日を浴びて白く輝いていた。
●
○side春奈
「次は織斑春奈さん。お願いしますね。」
私は「はい」と答えて起立。振り返ると同時に……
「は~るばるきたぜ、ISがくえ~ん!!」
『……』
す、滑っただとなのです!?隣の一夏も唖然としてます。……誰のせいでこうなったと?
痛い子を見る視線が私のハートをくギュウの台詞「バッキューン」ヨロシクと打ち抜いていきます。でも私は折れないめげない諦めない。やってやろうj……
『……』
先ほど自己紹介で暗い印象を与えてくれた一夏をフォローするために(勢い任せ)自慢(?)の1発をかましたまではよかったのですが……あの、その、そんな目で見ないで箒ちゃん!!
「……あはは。これは今一つだった?まぁ、そんなことは置いといて、名前から察してる人もいるとは思いますが。織斑春奈です。姉弟共々仲良くしていただければ幸いです。皆さん、よろしくおねがいしますね。」
後ろのほうではぼそぼそと話し声が「なんだ。すっごいいい子じゃん」「痛い子って思ったけど一夏くんをフォローしたんじゃないの?」「これは、美少女な姉と弟の絡み―――今年のコミケはもらったね。」……最後のは聞かなかったことにしましょうか。
あ、いまさらですが私、地獄耳です。
それから滞りなく自己紹介も終わったころ。
ガラガラッ
「む?自己紹介は終わっていたのか。」
教室に入ってきたのは千冬姉でした。……いや、織斑先生ですね。間違っても―――
「げっ!?千冬姉ッ!?」
バシーンッ!
と、呼んではいけません。音と威力に数名の女子が若干引いています。
「お、織斑先生。会議は終わったんですか?」
山田先生がおずおずと話しかけると織斑先生は微笑んで
「ええ。山田先生。ホームルームを押し付けてしまって申し訳ない。」
「い、いえ。副担任ですから。」
顔を紅潮させる山田先生。そりゃ照れるよね~かの織斑千冬に褒められるんだから。
「私が一組担任の織斑千冬だ。諸君をそれなりの腕を持つIS操縦者へ育てる事が私の仕事だ!ここでは私の言うことを聴き、理解しろ。わかったなら返事をしろ。わからなくても返事をしろ。」
無理無茶の傍若無人な言葉に対する返事は―――
『キャアァ~~ッ!!』
「ヒィッ!?」
「はい。」
黄色い悲鳴に一夏もびっくりですね。て、これは返事なのかな?
「本物の千冬お姉さまよ!」
「私、おねぇさまに憧れて北九州から来ました!」
「私は島根から!」
北九州……と聞くとなぜかラーメンが食べたくなりますね。島根は―――と、ここで考えを中断します。
「やれやれ。私のクラスには馬鹿ばかりが集められるのか?」
うっとおしいという顔の千冬姉。それにめげない女子一同。
「もっと罵って!」
「付け上がらないように躾けてください!」
「でも時に優しく導いてください!」
……良くもまぁそんな台詞がぽんぽんと出てきますねぇ。こっちからしたら関係のないことですがね。
そんな騒がしいホームルームはそれからすぐに終わっていましたが。
●
○
1時間目の授業が終了して休み時間となる。一夏は机に突っ伏していた。
隣に座る春奈は涼しい顔で教科書を読み直していた。
一夏からすればこの状況はかなりのアウェーであるようだ。不幸にも自分は有名人になってしまったんだ。と自身に言わなければやってられないと言ったところだろうか?
「ちょっといいか?二人とも。」
「ん?」
一夏が顔を上げるとそこには幼馴染の箒がいた。
「久しぶりだな二人とも。」
「……六年ぶりかな?」
「もうそんなに経ってたのか。」
顔を合わせる織斑姉弟。そして―――
「「久しぶり。箒(ちゃん)。」」
見事なシンクロである。一卵性の双子にあらずとも声がそろうこともある。
「あ、それと……」
一夏は思い出したようにこう続けた。
「剣道全国大会優勝おめでとう。」
「ほんとだよ。よくあそこまでいけたよね。て、箒ちゃんには余裕だったのかな?」
「……ふっ、当然だ。努力と鍛錬をした結果なのだからな。」
この世界の箒は転校が日常茶飯事だったので慣れたらしい。その地域にいる友人とも連絡を取り合っているらしいが定かではない。(コミュ症でないのは確か。そして非暴力的。)
「春奈。姉さんと最近聞いたのだが会ったのか?」
どうやら政府高官の情報が箒に漏れていたらしく彼女は束に接触した少女こと春奈にそれとなく探りを―――否、直球で聞いた。声のトーンは当たり前に落としてはいるが。
「……ほかには内緒だよ。一方的な接触だったから詳しくは話せない。でも……」
そういって春奈は胸元に下げている青い翼の様な物を引き出して箒に見せた。
「このIS、フリーダムを私に渡してマンホールに飛び込んでロストしたよ。」
箒は「ふむ」と考えるそぶりを見せて何か閃いたのかポンッと手を打った。
「そのISは実験機ということか。私の考案したブツブツ……」
流石は束の妹である。なにやら織斑姉弟を置き去りにして何かを考え始める箒。
箒は束の影響を少なからず受けておりISの設計を手伝うこともあった。故に、今の思考は彼女も自身の専用機の構想を考えているというわけである。
文武両道とはまさに彼女のことなのかもしれない。
「む?もうこんな時間か。次の授業が始まる。席に戻るぞ?」
そう言い残して箒は自分の席に戻っていった。
●
○side春奈
次の休み時間にて……あれですね。セシリアの絡み。
休み時間もほとんどないか。原作と違って束さんをあまり嫌ってないのかな?箒ちゃんは。
「ちょっとよろしくて?」
ん?この声は……
「イギリス代表候補生。セシリア・オルコットさんでいいのかな?」
私が先制して相手の視線をこちらに誘導する。
「用があるのは日本代表候補生ではありませんわ。そちらの殿方に様がございますの。」
「手短にね。もうちょっとで授業始まるし。」
「それくらいわかってますわ!」
高飛車だねぇ。家が超お金持ちだとは聞いてたけど。いや、男や周りを見下してるだけかな?
私は適当に聞き流すことにします。一夏が自分で何とかする子とわかってますのでね。
「わ、わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補性にして、入試主席のこの私を?」
む?もうそこまでいってたのかな?若干原点とは違う気がするけど。
「ごめん、知らない。代表候補生ってのはわかるけどさ。春奈がそれだからな」
「な、なんて失礼な方ですの!」
キーンコーンカーンコーン……
GJチャイム。
「~~~っ!後できて差し上げますわ!逃げないことね!?」
「いや、逃げないよ。」
はたから見れば滑稽なもんだね。一夏も安定した唐変木発揮してるしね。まぁ、温かい目で見守りますか。
●
○
「諸君。少し時間を取らせてもらおう。」
千冬は教室に入るなりそう告げる。彼女の言葉を待つ生徒は静かである。
「再来週のクラス対抗戦に出場する生徒を取り決めなければならない。」
「それって、あくまでも実力を推し量るための大まかな対抗戦ですよね?」
「織斑。誰が発言を許可した。まぁ大まかな意味はそれであっている。あとはクラス代表は文字通りクラス長だがな。目的はクラス団結の一環と競争による向上心だな。付け足すがここで決まった場合1年間はその任から降りることはできん。それも含めて代表を選べ。」
千冬は最後に「自薦他薦は問わん」と付け加えた。
しかし、悲しきかな群れとなったヌーに1匹で挑む獅子はいない。つまり……
「織斑君を推薦します。せっかくの男子なんだから、そっちのほうが面白いと思うし。」
「あ、それいいね。」
「織斑さんを推薦します。専用機持ちだしねー。」
「私も賛せーい。」
「「はぁっ!?」」
「ほかに立候補はないか?この二人で選挙と行くが?」
泡を食った二人が反論しようとすると、甲高い声が。
「待ってください!納得がいきませんわ!」
「どういうことだ?」
目を細めた千冬がその理由を問う。
「そのような選出は認められません! 大体、織斑さんはともかく男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
セシリアはさらにヒートアップして言葉をつなぐ。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までISの修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
一方春奈はというとなにやら震えている。何かを我慢しているようでも見て取れるが―――とセシリアが絞めようと言葉を紡ぐ。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなければいけないこと自体、わたくしにとっては耐えがたい苦痛で―――」
ブチッ……誰かの中で何かが切れる音がした。
「そう。言いたいことはそれだけなの?セシリアさん代表候補の意味まったくわかってないね?それでよく候補生になれたもんだよね。」
「視野が狭いなお前。第一イギリスにもこれといった国自慢ないだろ?」
「なっ……!?」
セシリアは織斑姉弟の横槍に驚きながらすぐに体勢を立て直す。
彼女は白人であるが故に日本人よりも顔を赤くして怒髪天を突く勢いで怒り出した。
「あなたたちッ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
祖国の侮辱。彼女にとっては聞き流すことのできる題ではない。しかし……
「あんたが先にうちらの国を馬鹿にしたんじゃないの?」
春奈の正論に返す言葉のないセシリア。しかし、彼女の行き場のない怒りが一夏に向けられる。
「だからって男がクラス代表なんて、耐えられませんわ!」
「ここでも女尊男卑かよ。されるほうの気持ち考えたことあんのか?あんたも相当小さい器だな。」
反論に反論で返される。セシリアの怒りはメーターを振り切ってある言葉をはじき出した。
「―――決闘ですわ!」
机を叩き叫ぶセシリア。
「「やってやろうじゃねぇか。(じゃん。)」」
鋭い目つきで一夏を睨みつけるセシリア。
「ハンデを差し上げますわ。このままいっても私が勝つのは当然ですし。そうね、お二人を同時に相手取らせていただきましょうか。」
「2対1?ってことでいいのか?」
「そうですわ。」
「なめてんじゃねぇぞこのメスガキが。」
低いドスの聞いた声に周りの空気が凍りついた。今の言葉は一夏のものだ。
「春奈。俺一人で十分だ。手は出してくれんなよ?」
「私は織斑君を推薦します。―――これでいいのよね?一夏。」
「っ!?」
セシリアは気圧された。無様にもだ。
しかし、調子を取り戻すのは早い。
「い、言っておきますけどわざと負けたりしたら許さなくってよ?もしもそれをしたら―――責任を取ってわたくしの花婿になっていただきますわよ!?」
『……ゑ?』
セシリアは興奮のあまりとちった。はっとして咳払いを一つ。
「コホンッわたくしの奴隷になっていただきますわよ!?」
「……し、真剣勝負で手なんか抜くかよ。侮るなよ?」
「では話は纏まったな?織斑、異存はないな?」
「「ええ、かまいせんよ。織斑先生って、どっちの織斑ですか!?」」
ここでもブレナイ織斑姉弟。
「あー……織斑姉。織斑を推薦するということで異存はないな?」
「はい。異議なしなしです。」
「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれまでに用意をしておけ。いいな?」
「「はい。」」
そんな二人の反応に満足げな顔をする千冬。そして。
「では諸君。授業を始めるぞ!」
『はい!』
こうして授業は進んでいった。
後書き
一夏は春奈と箒と言うトレーナーを得て着実に能力を基本を発達させていく。
そして、届いた専用機
「これが俺の専用機……。」
「はい。織斑くん専用機の白式です。」
一夏は春奈と箒の指導のもと模擬戦闘を開始する。
次回インフィニット・ストラトス 自由の翼
雄雄しき白
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