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プリテンダー千雨・リメイク

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序章・3

私が宇宙人の殺し屋に襲われ、自分と父親の正体を知った日の翌日。私は昨日割り当てられた部屋で目を覚ました。マットの敷いて無い固い金属製のベッドの上で眠ったせいか、身体のあちこちが痛い。それでも、何とか私は目を開ける。その先に広がっていたのはこの部屋の天井。ではなく・・・巨大な熊の顔だった。

「ぎゃああああああああああああああああ!!!」

あまりの出来事に私は乙女にあるまじき悲鳴を上げてしまう。

「千雨!何があった!!」

すると、入口から父さんが飛び込んで来た。昨日みたいな巨大ロボットの姿でもパワードスーツを着た姿でも無く、私のよく知るいつもの父さんの姿だった。

「なっ!?グリーズ!何をしているんだ!!」

熊に気づいた父さんはそいつに向かって叫んだ。すると、熊は父さんの方を向く。

「グリーズ、変身。」

そして、なんと言葉を発した。だが、それだけでは終わらず、熊が変形しロボットへと姿を変えた。その様子は昨日ラチェットさんが救急車からロボットへと変形した時とそっくりだった。

「別に。ただ、これから俺が鍛える事になる奴がどんな顔をしているのか気になっただけだ。」

ロボットはそう言って私の方を見た。すると、父さんがそいつの隣に立つ。

「紹介しよう。この基地の警備をしているビースト戦士のグリーズだ。普段は熊の姿でこの山の見回りをしている。」

そして、熊ロボット…グリーズの紹介をした。って、あれ?そう言えば・・・

「なあ、父さん。大分前から麻帆良では外れの山のヌシって呼ばれている熊が居るって噂があるけど・・・」

「ああ。それは彼の事だよ。」

やっぱりか。

「昔からやたらと戦いを挑まれてな。かと言って人間に怪我をさせる訳にもいかん。ゆえに、自然と手加減をするのが上手くなってしまった。」

そりゃあ、デカイ熊が居りゃあハンターが名を上げる為に狙って来るだろうな。

「まあ、そんな彼だから千雨の訓練を任せられるんだが。」

「へ?ちょっと待ってくれ父さん。訓練ってどう言う事だ!?」

「千雨。私たちは君をクインテッサの手から守りたいと思っている。だが、私たちも常に一緒に居られる訳では無い。そこで、君には私たちが来るまで持ちこたえられるくらいには強くなってもらわなければならないんだ。」

確かにそうだけどな。熊に鍛えてもらうって何処のバトル漫画だ?

「では、早速今日から始めるぞ。まずは座学からだ。」

すると、グリーズさんは子猫を持ち上げるみたいに私の制服の襟を掴んで持ち上げた。

「え?座学?」

「そうだ。戦闘訓練の前にまず我々トランスフォーマーの歴史を知らなければな。」

そして、私はそのままグリーズさんに連れて行かれた。




私が連れて来られた部屋は巨大なモニターのある所だった。しかもご丁寧に学校で使うような机と椅子まで用意してある。

「我々トランスフォーマーの先祖はクインテッサによって生み出されたと言うのは知っているな。」

「はい。父さん達から聞きました。」

「ああ。だが、クインテッサはその時二種類のロボットを生み出した。一つは民間用、もう一つは軍事用だ。」

グリーズさんがそう言うと、モニターに二つのマークが映し出される。一つは柔和な表情のロボットを模した赤色のマーク、もう一つは鋭い顔をしたロボットの顔を模した紫色のマークだ。赤い方のマークは確かラチェットさんとロボットの姿の父さんのボディにも刻まれていた。

「この二種類のロボットが我々サイバトロンともう一つの種族デストロンへと進化する。クインテッサ星人を追い出した後、我々の先祖は文明を発達させて来た。だが、デストロンがセイバートロン星を軍事政権化すべくクーデターを起こした。我々サイバトロンはそれに対抗すべく自らを戦闘用に改造した。」

今度はモニターに戦うロボット達の姿が映し出された。

「その戦いの中で様々な技術が生み出された。その代表がトランスフォーム能力だ。」

モニターにロボットが自動車に変形する映像が映し出される。

「この技術は元は我々サイバトロンが生み出した物で、当時戦いに関しては素人だった我々の先祖が戦闘のプロであるデストロンに対抗するため、自動車などの乗り物に擬態して奇襲を行うゲリラ戦法を使っていた。」

今度は無人のバイクがデストロンの兵士に突撃して行く映像が映った。

「時が経ち、デストロンもトランスフォーム能力を身につけるようになり、トランスフォームは擬態以外に移動能力や火力の強化と言う意味も持つようになった。」

モニターには戦車や戦闘機に変形するトランスフォーマーの姿が映った。

「さらに、様々な種類のトランスフォームをするトランスフォーマーも生まれた。『トリプルチェンジャー』や『合体兵士』、『ヘッドマスター』など様々な種類が居るが、これらは普通のトランスフォーマーとして一括りに出来るから、詳しい話は後だ。今回は三種類のトランスフォーマーについて教える。」

すると、モニターにはラチェットさん、ロボットの姿の父さん、そしてグリーズさんの姿が映った。
そして、まずラチェットさんの姿がアップになる。

「まず、先程言った諸々を含む通常のトランスフォーマー。乗り物などの機械に変形する。」

その次に、父さんの姿がアップになった。

「次が『プリテンダー』。トランスフォームとは別のプロセスで有機生命体に擬態出来る種族だ。ロボットの姿ではビークルモードへの変形も可能だ。」

そして、最後にグリーズさんの姿がアップになる。

「最後が我々『ビースト戦士』だ。トランスフォームによって有機生命体への擬態をする事が可能だ。」

「ええと。つまり、プリテンダーは普通のトランスフォーマーとビースト戦士の両方の特性を持っているって事ですか?」

私は自分なりの解釈が正しいか質問した。

「そう言う事になる。さらにだ・・・」

この後、座学の時間がみっちり三時間続いた。何で休みなのにこんな勉強しなきゃならないんだ・・・




午後。昼食を終えた後に私は戦闘訓練用のトレーニングルームに連れて来られた。
因みに、私と父さんは普通に人間の食べ物を食べたが、ラチェットさんは紫色の液体を飲んでいた。これは『エネルゴン』と言ってトランスフォーマーの主食だそうだ。私も戦闘をする場合は人間の食料がエネルギーが足りないからあれを摂取する必要があると父さんは言っていたけど、紫色な上光ってたから進んで飲もうとは思わない。そして、グリーズさんが食べていた物だが、何と熊の姿でエネルゴンをドリンク代わりに鮭を食べていた。後で聞いた話によると、ビースト戦士もプリテンダーと同じようにエネルギー効率こそ悪いものの物を食べる事が可能で、その嗜好は変形する動物に引っ張られると言う。
それはさておき、訓練に話を戻そう。私は父さんに父さんがしているのと同じタイプの腕時計を渡された。これは所謂変身アイテムだそうだ。

「では、早速バトルスーツを着用しろ。」

グリーズさんに言われ、私はさっき父さんに教えてもらった通り腕時計のボタンを押しながら叫んだ。

「スーツオン!!」

すると、私の体に装甲が纏われた。だが、何故か父さんみたいなゴツイ鎧ではなく、武装○姫とかイ○フィニット・スト○トスみたいな感じに水着みたいな体にフィットするスーツ+手足の装甲と背中の翼と言う姿になった。因みに、スーツは緑で装甲の色は父さんのロボットモードと同じ黄色だった。

「ちゃんと着用出来たようだな。よし、まずは射撃訓練からだ。」

私がバトルスーツを着用したのを確認すると、グリーズさんは手に持つリモコンを操作した。すると、射撃用の的が複数出現する。

「そのライフルのレーザーであの的を撃ち抜いてみろ。」

グリーズさんにそう言われ、私はライフルを発射した。




射撃訓練の結果は散々だった。今まで銃なんて扱った事なんて無かったんだから当然だ。
グリーズさんは私にも一応射撃の制御をするシステムが搭載されているハズだから、何発かは当たっているのが当然と言っていたけど、どうだか・・・
その後も、私はグリーズさんに接近戦訓練と防御訓練をさせられ、すっかりヘトヘトになった。

「今日の訓練はここまでだ。最後にロボットモードになってみろ。やり方は分かっているな。」

グリーズさんにそう言われ、私は父さんがロボットの姿になった時の事を思い出す。

「プリテンダー!!!」

そして、私は叫んだ。すると、不思議な感覚を感じ、その直後視点が一気に上に上がる。先程までグリーズさんを見上げていたのに、今は見下ろしていた。

「上手く行ったな。折角だから自分の姿を見てみろ。」

そう言ってグリーズさんはまたリモコンを操作する。すると、私の目の前に鏡が現れた。
そこに映る私の姿は装甲の色は濃い紺色で、手足は父さんのロボットモードに比べて細く、腰もくびれているので女性らしい感じになっていた。顔はロボットモードの父さんやラチェットさんとは違い、鼻と口はあるが目のセンサーがツインアイではなくゴーグルタイプになっていた。

「それがお前の『本当の姿』か。」

私の姿を見たグリーズさんが言った。

「こっちが、私の?」

「そうだ。見てくれはかなり立派だが、お前はまだ未熟だ。これからみっちり訓練を・・・」

グリーズさんは説教臭い言葉を放つが、私には聞こえていなかった。何故なら、その時私は意識を失っていたからだ。



続く
 
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