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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第2章
戦闘校舎のフェニックス
  第51話 準備はいいか?

 
前書き
次回戦闘開始です。 

 
「……お前らいい加減に休め…」
俺はイッセーが眠っているベッドから一向に離れようとしない千秋、鶇、燕に向かって言い放つ。
現在いる場所はイッセーの自室だ。
レーティングゲームは部長の敗北で終わった。
他の奴らは治療を終えてピンピンしているが、イッセーだけは傷が癒えても起きる気配がなかった。
ゲーム終了から丸一日は眠ったままだ。
三人とアーシアを加えた四人はイッセーの看病をしていた。
アーシアは今は休んでいるが、この三人は本気で不眠不休で看護していた。
食事すら摂らない勢いだったが、さすがに食事だけは強引に摂らせる事はできた。
だが、三人の顔に不眠不休の疲れが出始めていた。
特に千秋が一番顔に出ていた。
鶇と燕は忍ならではの忍耐力があるためか多少の余裕はありそうであったが、それでもやはり疲弊の色が見えた。
「はぁ。お前らまでぶっ倒れる気か?」
『……大丈夫…』
何を言ってもこの一言である。
いっそ強行手段でもとって休ませるか。
現段階でとれる手段は二つ、食事に睡眠薬を盛る、当て身で気絶させるの二つである。
ただ正直、どちらも難しい。
まず食事に睡眠薬を盛るだが、個人的に料理に細工をするのは俺の料理人としてのポリシーに反する為、正直死んでもやりたくない。
もっとも、三人ともその手の薬やある程度の毒物に耐性があるため、ぶっちゃけあまり効果は望めない可能性があるんだがな。
次の当て身による気絶も正直厳しい。
何故なら三人とも異様に気を張り巡らしているからだ。
イッセーの変化を一ミリも逃さない為なのだろう。
その為、俺が何か不振な行動をしようとすれば、真っ先に対処されてしまう可能性がある。
一人ならまだしも、三人掛かりではこちらの部が悪い。
おまけに、そうやって気を張り巡らしているせいで疲弊をさらに促進させていた。
最終手段として疲弊しきった所を気絶させる手もあるが、疲弊させない為に休ませようとしているので、ぶっちゃけ本末転倒である。
「……そんな疲弊した顔をイッセーに見せる気か?」
今の言葉には少し反応したのか肩が僅かに動いた。
それでもやっぱり動こうとしない。
「……飲み物でも持ってくる…」
仕方がない、不本意だが、紅茶あたりに薬を盛って持ってくるか。
そうして立ち上がろうとしたら、誰かが部屋に入ってきた。
「お茶でしたら、私がお持ち致しました」
入室してきたのは、メイド服を着た銀髪の女性のグレイフィアさんであった。
手には四人分の紅茶を乗せたお盆を持っていた。
「どうも」
俺は軽く会釈し、紅茶を口する。
(っ!?これは…)
体に電撃が走ったかのような衝撃を受けた。
この味はハーブティーの様だが、非常に旨かった。
「お三方もどうぞ」
グレイフィアさん言われて千秋達は渋々紅茶を手に取る。
せっかく用意してもらったものを無下にするのは気が引けたのであろう。
紅茶を口にした千秋達の顔からさっきまでの張り詰め感が消えた。
飲んでいて思ったが、非常にリラックスできる紅茶だった。
「それをお飲みになられたら、お休みになった方がよろしいかと?」
『っ!?』
「もしお三方が倒れられたら、彼は自分を責めることになりかねませんよ。ここは私と彼がお引き受けますので、お休みくださいませ」
グレイフィアさんはどこか圧力のある顔をして言った。
千秋達はその圧力に気圧されてか、紅茶を飲み干した後、渋々部屋から出ていった。
「ありがとうございます。おかげであいつらを休ませる事ができました」
「いえ」
「ところでどうしてここに?」
素直な疑問だった。
部長はライザーとの婚約の事で出払っていた。
どうやら明日の夜に婚約パーティーがあるらしい。
一応、招待券はもらっていた。
グレモリー家のメイドである彼女も、それ関連の準備などで忙しいと思ったのだが。
「彼女は私の付き添いだよ」
「っ!?」
突然聞こえた男の声に俺は驚いた。
気配を全く感じなかった。
声がした方を見ると、紅色の髪を持った高貴な男がいた。
「……まさか…」
「おっと、名乗りが遅れたね。私の名はサーゼクス、魔王ルシファーの名を受け継いだ者だ」
「っ!?」
サーゼクス・ルシファー、部長の兄で魔王の一人。
突然の魔王の登場に俺は固まってしまっていた。
「そんなに固くならなくていい。楽にしてくれたまえ」
「……そうは言いますがね…」
とりあえず、言われる通り体の力を抜かせてもらった。
「御友人の事はすまなかったね。我々の事情に巻き込まれたばかりに」
「……いえ…それより何故ここに?…」
「君の友人に興味があってね、是非ともこの目で見に来たのだよ」
「興味?」
「うむ。彼のような真っ直ぐな悪魔は初めて見てね。非常に面白いと思ったよ」
どうやらイッセーは魔王様のお目に留まったようだ。
「ところで君は何をしているのかな?」
「……何をと言われても…イッセーの看護ですが…」
何だ、まるで全てを見透かされているような感じだ。
「ん?そうかね?私には牙を光らせ、機会をうかがっているように見えたが?」
「………」
「ふふ、まあいいかな。実はだね、可愛い妹の婚約パーティーを盛り上げようと、一つ余興を行おうと思っているのだよ」
「余興?」
「ああ。是非とも彼と君とで一つ会場を盛り上げてほしいのだよ」
「っ!?……それはつまり…派手に盛り上げろと?…」
「ふふ。是非とも頼むよ。では、そろそろ失礼する。彼が起きたら、グレイフィアから招待状をもらいたまえ」
そう言って魔方陣で転移していった。
「では、後ほど」
グレイフィアさんも後に続いて行った。
俺は全身から力が抜けて尻餅を着いてしまった。
「……はは…やれやれだぜ…」
静寂なイッセーの部屋に俺の乾いた笑い声が流れる。


(……誰だ?…)
『今揮っている力は本来のものではない』
(……その声…どこかで?…)
『そんなんじゃお前はいつまで経っても強くなれない』
(……そうかお前…前にも夢で…)
『お前はドラゴンを身に宿した異常なる存在。無様な姿は見せるなよ。白い奴に笑われるぜ』
(……白い奴って誰だよ?…)
『いずれお前の前に現れる。そうさ、あいつとは戦う運命にあるからな。その日の為に強くなれ。俺はいつでも力を分け与える。なに、犠牲を払うだけの価値を与えてやるさ。ドラゴンの存在を見せつけてやればいい』
(ドラゴン!?お前!!)
『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)、赤い龍の帝王 ドライグ』
(ドライグ!?)
『お前の左手にいるものだ』


目を覚ますと、そこは俺の部屋だった。
「起きたかイッセー」
「……明日夏…」
「目覚めたようですね」
「……グレイフィアさん…あ!勝負は!部長はどうなったんですか?」
「ゲームはライザー様の勝利で終わりました」
「……負けた…」
「部長が投了(リザイン)を宣言したんだ」
「っ!?降参した?」
「ああ」
「そんな!?自分から負けを認めるなんて!そんなの部長にかぎって!!」
「ライザー様が貴方を殺そうとしたからです」
「え?」
「……お前は何度もライザーに挑み掛かり、そしてそれに業を煮やしたライザーはお前を殺そうとし、部長はそれを止める為に…」
部長が負けたのは俺のせい?
「……明日夏…他の皆は?…」
「アーシア、千秋、鶇、燕、俺はお前の看護に残り、他は部長の付き添いだ」
「付き添い?」
「リアス様の婚約パーティーです」
「っ!?」
俺は膝が崩れ落ちた。
……すみません部長…。
……俺、強くなれませんでした…。
……弱ぇ、何で俺はこんなに弱ぇんだ…。
「納得できないか?」
明日夏が問い掛けてきた。
「……頭じゃ分かってるよ…部長が自ら家の決まりに従っているのは…勝負の結果は部長が望んだ事だってのは…それでも俺はそれに嫌々従うしかない部長なんか見たくない!…何よりも…」
「ライザーなんかに部長を渡したくない…か?」
「……嫉妬だって分かってるさ…笑いたきゃ笑えよ…」
だが、明日夏の口から出たのは笑いじゃなかった。
「お前は今何をしたい?」
「え?」
「ここで泣くか?部長をお祝いするか?どうなんだ?」
……そんな事…。
「……決まってるだろ……部長を助けたい!どんな事をしても部長を助けたいに決まってるだろ!!」
俺は心の中にある事を告白した。
「ふっ」
「ふふふ」
「え?」
突然、明日夏とグレイフィアさんが小さく笑った。
「彼は面白いですね」
「まったく」
「え!?え?」
「貴方は本当に面白い方です。長年いろいろな悪魔を見てきましたが、貴方のように思った事をそのまま顔に出して、思ったように駆け回る方は初めてです。サーゼクス様も貴方を面白いと仰ていましたよ」
そう言うとグレイフィアさんは一枚のチラシを渡してきた。
そのチラシには魔方陣が描かれていた。
「これは?」
「招待状だそうだ」
「俺も部長に付き添えと!」
「なんでも、パーティー会場を派手に盛り上げてほしいらしい」
「え?それって?」
「妹を取り戻したいのなら殴り込んできなさい。これを私に託したサーゼクス様のお言葉です」
俺はチラシを受け取った。
裏にも別の魔方陣が描かれていた。
「そちらの魔方陣はお嬢様をお救いになった時にお役に立つでしょう」
そう言うと、グレイフィアさんはこの部屋から転移していった。
俺は再びチラシを見る。
考える必要なんて無い…。
「行くのか?」
「ああ!止めたって無駄だからな!俺の心はさっき言った通りだ!」
「止めねえよ。つか俺も行くぞ」
「え?」
「何だ?その意外そうな顔は?」
「でもこれは俺の問題…」
「また言わせるのか?水臭いんだよバカ」
「……明日夏…」
「礼は要らねえぞ。ダチなんだからよ」
「ああ!」
明日夏は準備があると言って、自分の家に戻った。
準備ができたら、家の前に集合する事になった。
俺も準備を始めた。
「イッセーさん?」
すると、アーシアが入室してきた。
「イッセーさんっ!!」
アーシアがいきなり俺の胸に飛び込んできた。
「よかった!本当によかったです!!治療は済んでいるのに二日間も眠ったままで…もう目を覚ましてくれないんじゃないかって!!」
またアーシアを泣かせてしまったな。
「ごめんよ。またアーシアに心配かけちまったな」
「いいえ。イッセーさんが元気になってくれれば…」
ようやくアーシアが泣き止んでくれた。
「聞いてくれアーシア」
「はい?」
「これから部長の下へ行く」
「っ!?……お祝い…じゃありませんよね……」
「ああ。部長を取り戻しに行く」
「私も行きます!」
「……ダメだ。アーシアはここに残れ…」
「嫌です!!私だってイッセーさんと一緒に戦えます!魔力だって使えるようになりました!守られるだけじゃ嫌です!!」
「大丈夫。軽くライザーをぶん殴って、倒して…」
「大丈夫なんかじゃありません!!また血だらけでぼろぼろになって、ぐしゃぐしゃになって、いっぱい痛い思いをするんですか?もう、そんなイッセーさんを見たくありません!」
「……俺は死なない…ほら、アーシアを助けた時だって、俺生きてただろ」
「……それなら、約束してください…」
「約束?」
「……必ず…部長さんと帰ってきてください!」
「もちろん!それにアーシアに協力してほしい事があるんだ」
俺はアーシアにある事を頼んでいた。
「これはアーシアにしか頼めない事なんだ。頼む」
「分かりました。イッセーさんがそう仰るのでしたら」
アーシアはそう言うとある物を取りに行った。
さて、次は…。
俺は籠手に宿る存在に語りかける。
「……おい…聞こえてるんだろ?お前に話がある…出てこい!赤龍帝 ドライグ!!」
『なんだ小僧?俺になんの話がある?』
「……あんたと…取り引きしたい…」


「来たか」
準備が終わったのか、イッセーが玄関から出てきた。
制服に着替え、すでに籠手を装備していた。
ただ、籠手…と言うよりも籠手を装備している腕から感じる気配が気になるが。
『イッセー(兄)(君)っ!!』
イッセーの姿を見た瞬間、千秋達が叫んだ。
今何時だと思ってんだよ、近所迷惑だろうが。
だが、そんなのお構い無しに千秋と鶇が涙を流しながらイッセーに抱き付いた。
「イッセー兄!イッセー兄っ!!」
「よかったよ~!イッセーく~ん!!」
心底心配だったのは分かるが、まじで声が大きすぎるぞ。
「……まったく…バカ…」
燕は罵言を浴びせていたが、流している涙の量から心底心配だったのがうかがえた。
イッセーは千秋達の頭を撫でながら、なだめていた。
「ところでまさか千秋達も」
「ああ。言っても聞かなくてな」
どうやら、アーシアも着いてこようとしたらしいが、千秋達と違い引いてくれたようだ。
イッセーはなんとかアーシア同様、待っていてくれるよう説得するが、三人はアーシアと違い、断固として譲らなかった。
結局、イッセーは折れた。
まあ、三人なら特に危険はないはずだ。
「準備はいいか?」
俺は皆に聞くと、全員頷いた。
イッセーはグレイフィアさんにもらった魔方陣を使い、俺達を転移させた。
転移の光が止み、周囲を見渡してみると、そこは広い廊下であった。
「ところで明日夏?」
「何だ?」
「さっきから気になっていたんだが、お前と千秋が着てる服って何だ?」
「ああ」
イッセーが学園の制服、鶇や燕が動きやすい機能性重視の私服と特に普通の服装に対して、俺と千秋の服装は明らかに普通の服装ではなかった。
「いわゆる戦闘服ってやつだ」
俺と千秋が着てるのは、俺達に合わせて特注で作ってもらった戦闘用の物であった。
防御力や動きやすさはもちろん、身体能力の強化機能や耐魔力、耐炎等の耐性機能、防寒と防暖の両立と性能が高い物であった。
ちなみに今日初めて袖を通したが、着心地は全く問題はなかった。
とりあえず、この服の事を歩きながら簡単に説明して、俺は乗り込む前に言っておきたい事を言う事にした。
「最初に言っておくイッセー」
「何だ?」
「邪魔な奴は俺達がなんとかする。だからお前はライザーをぶっ飛ばす事だけ考えろ」
「……明日夏…」
「ここから先はお前の道だ。だから余計な事は考えず、突き進め」
「ああ!」
等と話していると、かなり大きい扉が見えてきた。
扉の前に衛兵らしき男達がいるので、扉の先がパーティー会場だな。
「ん?パーティー参加者…ではないな!」
「何者だ貴様らは!」
「返答次第では…」
衛兵達が手持ちの得物を構えだした。
お勤めご苦労様。
さて、派手にパーティーを盛り上げるとするか。 
 

 
後書き
オリキャラ 追加情報に二人の戦闘服の事が書かれていますので、気になるまたは忘れた人はそちらで確認してください。
ちなみに鶇と燕が着てるのは動きやすい洒落っけの無い物を想像してください。
ちなみにカラーは薄灰色のズボンに鶇が水色、燕が薄赤色の長袖シャツと言った感じです。 
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