Tellus
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1-1始まり
前書き
異世界ものに挑戦です。
「S級反乱者カイン=フルソードが第三防衛ラインを突破!増援を……あ?」
第十要塞都市パルではカイン=フルソードの侵入が見られ外出禁止令が出されており、街には市民の姿はなく、代わりに居るのは銃や剣を構える兵士達だ。カイン=フルソードは第三防衛ラインを突破し、一人の兵士が目の前の脅威の名前と状況を伝えるが、言葉は途切れる。
「わりぃな」
その言葉を最後にその兵士は意識が沈んでいく、カインは先程殺した際に付着した返り血を手で軽く拭うと、街灯は消えており、街を照らすのは月明かりと銃の発火炎、それに付いてくるように鳴り響く銃声。街は極度の緊張状態に包まれる。
「城まではもうちょいか」
暗闇の中に建つ城は月明かりに照らされ神々しささえ出ている。カインはその城を一瞥すると、長い溜め息を吐き出す。後ろから迫ってくる兵士の群れに嫌気がさし、またしても溜め息を吐き出し、左手の刀を握り直し、右手の魔導式拳銃には魔力を込め直し、街路を駆ける。
「はぁ…はぁ…やっと着いたか」
ひたすら走り続け乱れた息を整えようと一つ深呼吸する。服を返り血に染めた彼の姿はまるで殺人犯の如く不気味な雰囲気を醸し出している。そして目的地の城には宝物を強奪するために押し入ったのではなく、城の地下にあるはずの物を破壊することにある。城を堂々と不法侵入すると、いつもの光景が広がる。剣の切っ先が、銃の銃口が、魔方陣が、こちらに向けられている。憎悪に燃える瞳がこちらを強く睨み付ける。この光景は何度見ても慣れない、まるで“こちらが悪党で向こうが正義のよう”で、その苛ついた気持ちを力に換算するように刀の握る力が増す。そして爆発したように戦う。
「やっぱ駄目だな、イライラしながら戦うのは…いって!」
城の地下は暗く、月明かりも届かない地下では一つの球体が灯り代わりになっていた。カインはその球体の光で服に付いた赤い血の面積を増やしているのが分かった。その血の中にはカイン自身の物も含まれている。腹部には弾丸が貫通しており、先程から出血が止まらず、傷口を手で添えているだけだった。速く帰る為にも目の前にある球体を破壊してしまおうと決心し、立ち上がる。その球体は光の塊みたいなもので、その光は視線を外すことを許さぬかのように魅力的な光を放っている。だがその球体は刀を一振りすれば斬れてしまい、銃の引き金を引いてしまえば弾丸が貫通する。要は壊せるのだ。カインは刀を構える。
「それを壊されたらこの街は生活が出来なくなんだけど?」
後ろから聞こえる軽い口調の声だが確かな殺気が含まれている。振り向くと顔は見えないが青が基調の軍服の兵士だ。
「あんた、普通の兵士じゃないな?」
前に立っている男は雰囲気が今までの奴とは比にならないほどのものだ。
「No.5だからな、一応」
男はまた軽い調子で言ったが、カインは自然と舌打ちをしていた。
「No.(ナンバーズ)かよ…クソッ!」
No.5を名乗った男は背中に背負っている幅広な黒い剣を構える。
「じゃあ、そろそろ始めますかね」
その言葉を皮切りにNo.5は地面を蹴ると同時に足の裏には青い円状の魔方陣が出ており、魔法の力を借りてロケットのような速度でカインに向かう。カインは壊してしまえばこっちのものだと、刀を構えるが
「やらせると思うか」
男は既に目の前に出現し、先程よりも殺気が数段重くなっている。 男は刃ではなく面積の広い平地の部分でバットを振る要領でカインを吹き飛ばす。カインも防御は出来たが咄嗟の事で十メートル程飛ばされ、地面と激突し傷口に激痛が走り踞るが、その隙を見逃してくれる程敵は甘くはない。今度は平地の部分ではなく、刃の部分でこちらを断ち切ろうという意思と共に剣から落ちるようなモーションでカインを襲う。直後地面が割れる轟音は聞こえるが人を斬った感触はない。光の球体一つではこの空間を照らすにはあまりに足りない。どこに隠れたか首を動かしていると、隣に小さな音が鳴り確認すると、どうやら血のようだ。男は自分の物でないと分かると天井を確認する。十メートル程の高さの天井だ。
「そんなとこに隠れてたのか」
カインは天井に刀を突き刺し、空中で体を維持していた。カインは諦めたように降りてくる。腹部の傷口には手を当てているがたらたらと血が垂れていた。
「お前さんその傷は俺の攻撃で付いたものじゃないな…手負いだったのか」
「なんだよ、逃がしてくれんのか?」
男は軽く笑うと、平地の広い剣を構え直す。
「…まさか」
さっき笑ったのが嘘のように重くのし掛かるような殺気がカインを襲う。
「だよな」
向こうが構えたことに、こちらも少し長い刀を構え直す。
そして激突。轟音と共に鉄同士のぶつかり合う音が辺り一面に広がっていく。だがこの鍔迫り合いは長くは続かなかった。カインは力を込めれば込めるほど傷が悲鳴を上げるように激痛が走り続ける。それに比べ向こうの男の剣はサイズが大きいことに伴い普通の剣と比べ非常に重い、カインも力は込めるが向こうが力を更に込めると簡単に押しきられ、軽く飛ばされる。靴は飛ばされる体を止めようと地面と激しい音を出しあう。努力の甲斐あってか止まりはしたが、当然男は追撃を止めようとはしない、それどころかここで決めるつもりのようだ。
「これで…終わりだ」
あの巨大な剣を高らかに天に向けて持ち上げる。すると黒い“何か”が剣に巻き付くように剣を包むと空気が振動するのを感じ取ることが出来る。
「竜破獄炎刃(りゅうはごくえんじん)!」
「(あれは……やばい!)」
脳は知らず知らずの内に警鐘を鳴らしており、逃げようと足に力を入れようとしたが、一瞬だけ足から力が抜けて尻餅をつく、もう一度足に力を入れるが、戦闘において一瞬とはお互いの力量が高ければ高いほどそれは致命的になる。目の前の剣は元の鉄色の黒ではなく禍々しい黒色のエネルギーに身を包み、それは既にこちらに向かってきている。
「チッ!しゃあねぇ……全拘束法陣解放!」
その言葉に応えるように右肩から先は人ではなくなる。服は腕の大きさに耐えられず破れ、黒々とした人間の腕の何倍にも膨れ上がり、青い筋が無数に走りその腕は出現する。そして同時に《闇》が目覚める。そして男の剣を真っ向から受け止めた。
「おいおい何だよ……その腕は?」
男は信じられない光景を目にし、額からは体に絡み付くような嫌な汗が止まらない。その理由に男の放った技で倒れなかった奴は今までいなかった。そしてもう一つ、この技を受け止めた腕だ。肉体強化の魔法で筋肉が膨れ上がった奴は見たことあるが、明らかに別の生物に変える魔法は聞いたことがない。
「とりあえず…ぶっ飛びやがれ!」
カインの巨大化した右腕の掌は爆発し、男を吹き飛ばす。男が壁に直撃し、気を失ったことを確認すると光る球体に近付く、左手に握られた刀で一振りすると真っ二つに割れると散っていく。
「はぁ…終わったか」
右腕は戻ると黒い文字のようなものが手首、肘あたり、肩口にリング状に描かれる。壁に埋もれている男を一瞥すると城から脱出した。
後書き
初回からぐだぐだでしたが少しでも多くの方に目を通して頂ければ幸いです。
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