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戦国異伝

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第百五十七話 延暦寺その七

「我等では救えぬ」
「御仏に祈るしかありませんか」
「そうした者達は」
「そうじゃ」
 まさにだというのだ。
「そうするしかな」
「では、ですか」
「我等としましては」
「動くでない」
 こう周りの高位の僧侶達にも告げた。
「それではな」
「はい、そうですな」
「それしかありません」
 僧侶達も応える、延暦寺としても守るべきものがありそれを手放す訳にはいかない、例えその一部を焼いてもだ。
「ですからここは」
「あの者達は」
「そもそも杉谷達は何者かわかりませぬし」
「ですから」
「焼けても一部ならな」
 それではというのだ。
「何とかなる、それよりも織田の兵が他の場に入らぬ様にな」
「そこは固めてですな」
「そうして」
「そうじゃ、このことは右大臣殿にも守ってもらわねば」
 延暦寺としても引けないというのだ。
「決してな」
「では僧兵達に山を守らせてですか」
「主な場所には入ってもらわぬ様にしますか」
「そこは絶対にですな」
「守ってもらいますか」
「どうやら右大臣殿は約束は守る方じゃ」
 少なくとも信長は自分から約束を破ったことはない、そうすればその時はよくとも後で自分にとって厄介なことになることがわかっているからだ。
「だからな、我等もな」
「ここはですか」
「約束を守りですか」
「しかしそれでも守りを固め」
「そのうえで」
「そうせよ、このことは右大臣殿にもお伝えしてな」
 慎重にだ、信長を刺激することを避けてそうするというのだ。
「わかったな」
「はい、それでは」
 使者に出た僧侶の一人が応える。
「このこと、右大臣殿にお伝えします」
「頼んだぞ」
「杉谷達を討つこともですな」
「うむ、あの者達は破門とする」
 つまりもう延暦寺とは関わりがないというのだ。
「後は右大臣殿にお任せするとな」
「あの者達の仕置をですな」
「そうせよ」
 こう話してそしてだった、延暦寺は今の断を信長にも伝えた。信長もその断のことを聞き使者の僧侶達に告げた。
「わかった、杉谷達は攻めるがな」
「あの者達がいる場所以外には」
「入られないということで」
「約は守る」
 信長はこのことを保障した。
「そして僧兵を配することもな」
「今はですな」
「よいということで」
「よい」
 今は僧兵達がいる、それならというのだ。
「我等も入らぬ、しかしな」
「万が一、ですな」
「織田の兵が入れば」
「その時は押し返せ、わしも許す」
 つまりお互いに延暦寺の殆どには入らないし入れないともいうのだ、それだけ双方のことを気遣ってなのだ。 
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