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ドリトル先生と京都の狐

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第三幕その八

「全く」
「だといいけれどね」
「はい、ですから」
「僕がお母さんのところに行ってもだね」
「大丈夫です」
 お母さんも怖がったり怯えたりしないというのです。
「ですから安心して下さい」
「わかったよ、それじゃあね」
「はい、それでは」
 こうしたお話をしてでした、そのうえで。
 一行はお家の奥のお部屋に入りました、するとそこに。
 年老いたお祖母さんが畳のお部屋にお布団を敷いて寝ていました、細長いおお顔で目が吊り上がっているところは同じです。
 そのお婆さんがです、狐と先生達を見てお布団の中から言ってきました。
「お医者さんだね」
「うん、来てもらったの」
「そのイギリスから来たっていう先生だね」
「ドリトル先生っていうの」
 狐はお母さん狐に先生のことをお話します。
「この人がね」
「よく来てくれました」
 お母さん狐は人間の姿のまま先生に微笑んで答えました。
「娘の頼みを聞いてくれて」
「いえいえ、僕は医者ですから」
 だから来たというのです、先生は。
「当然ですので」
「そう言って下さるのですね」
「それでなのですが」
 すぐにです、先生はお母さん狐の枕元に座って申し出ました。
「診察を」
「あっ、診てくれるんですか」
「はい、そうさせてもらいます」
 持っているバッグからお医者さんの道具を出しながらの言葉です。
「早速」
「それでは」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生はお母さん狐を診察しました、お母さん狐も本来の狐の姿に戻ります。狐色の毛がとても綺麗な狐にです。
 その狐を診察してです、先生は難しい顔でこう言いました。
「肺の病ですね」
「肺ですか」
「結核です」
 その病気だとです、先生は狐の母娘に言いました。
「それも結構重いですね」
「だからですか」
「狐の結核は獣医にはわからなかったのでしょうか」 
 日本の獣医さんにはです。
「そうなのでしょうか」
「私達はいつもコンコンと鳴きますし」
 日本の狐の鳴き声です。
「だからでしょうか」
「そのせいですか」
「少なくとも狐の肺病は」
 それはといいますと。
「あまりないと思います」
「だからですね」
「はい、ですからどのお医者さんも」
 わからなくて匙を投げたのではないかとです、狐は先生にお話します。
「先生のお話でそう思いました」
「そうですか、とにかくですね」
「あの、それで母は」
「はい、今ざっと診たばかりですが」
 それでもと前置きしてお話する先生でした。 
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