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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第6章:女の決意・男の勘違い
  第31話:有言実行

(天空城)
ウルフSIDE

(ボカッ!)「ぐはぁ!」「キサマー何をしてるか!?」
殴るとは言ってたが本当に殴るとは思ってなかった。
天空城に着くなり、リュカさんは玉座へダッシュ……そして何かを言おうとしたマスタードラゴンを多分手加減して殴った。当然周囲の部下達は大激怒している。

「てめぇ~ふざけんじゃねーぞ! こんな厄介な時代に送りやがって……どれだけ苦労してるのか解ってんのか!?」
「お前は何を言ってるのだ!? 私はお前とは初対面だぞ……」

「そんな事は解ってるわ! 未来になったらお前が僕等を過去へ送るから、先に仕返しをしてるんだろうが! 先に仕返しをされたくなかったら、未来で僕等を過去に送るな」
言いたい事は解るし、言ってる事も理解できる……でも言われた相手だって理不尽極まりない気持ちでいっぱいだろう。

はぁ~……嫌だなぁ。
凄い勢いで互いに言い争っている二人を、俺が仲裁しなきゃならないんだろうなぁ……
チラリと嫁娘(かぞく)に視線を向けたが、『早くお前が仲裁しろ!』と目で訴えてくる。

はぁ~……嫌だなぁ。
どうして俺が損な役回りをこなさないとならないんだ!?
こういう役目はティミーさんの専売特許だろう。
彼が居ないからって、血の繋がりの無い義理の息子に役目が回ってくるのは納得できない。

はぁ~……本当に嫌だなぁ!
シン君からも『このままでは世界樹の花を咲かせる様お願いも出来ません……早く仲裁して下さい!』って無言の圧力をかけられる。
何で俺なんだよ……娘になんか惚れるんじゃなかったなぁ。

「リュ、リュカさん……もうその辺で……」
あぁ……嫌だなぁ。

ウルフSIDE END



(天空城)
シンSIDE

ウルフさんの懸命な仲裁により、やっとリュカさんとマスタードラゴン様の言い争いが終結した。
ついでに俺達やリュカさん達の事も説明し、未来のマスタードラゴン様が何らかの理由で彼等を遣わした事も理解してもらえた。

と言うより、ウルフさんはマスタードラゴン様に自業自得感を与える事で、お二人の言い争いを終わらせようと努めたのだ。
でも解る気がする……過去の自分を殴らせる為に、未来から送り出したんだから。

勿論、本当の目的は世界を平和に導く為なんだろうけど、これ程手を付けられない人材を送り出したマスタードラゴン様は、ウルフさんだけでなく自業自得だと感じてしまう。
まぁ取り敢えずは落ち着いてくれたみたいだから、この雰囲気が崩れる前に世界樹の花を咲かせてもらえる様お願いをしよう。

「あのマスタードラゴン様……つきましてはお願いがあります」
“俺は真面なんだぞ”って感じを醸し出す為に、出来る限り恭しく話しかけ懐から世界樹の蕾を枝事取り出した。

「あ、そうだよ……殴る事に熱中してたから、すっかり忘れてた! おいヒゲメガネ、この蕾を開花させろ! 今すぐ開花させろコノヤロー!」
俺が取り出した世界樹の蕾を見て突然思い出したリュカさんは、俺の手から蕾を取り上げると枝先をマスタードラゴン様の鼻に突き刺しながら、即座に開花させる事を強要する。

「お、おい……ちょ、ちょっと……止めろコラ……これが物を頼む態度か!?」
リュカさん、頼むから止めて下さい!
俺にはソレが必要なんです……マスタードラゴン様がヘソを曲げてしまったらお終いなんです!

「馬鹿野郎……お前に『物を頼む態度か!』なんて憤慨する権利があると思ってるのか? 僕等なんかは頼み事もされずに、この時代へ強制的に送られたんだぞ! 高圧的に頼み事をするのと、強制的に何かをやらせるのと、どっちが非常識なんだ? 事前にお願いをしている分、僕の方が常識的だと思うんだが……」

「それはしょうが無い事ですよリュカさん。そちらのお方はマスタードラゴン様……この世界の全てを統べる偉大なる神様なんですから。俺等人間ごときが、偉大なる神様相手に頼み事をするのだって彼等からしてみれば、身分を弁えない愚か者の行為なんですから!」

神様に無礼な態度で接するリュカさん……その態度に憤慨気味のマスタードラゴン様……
そんなお二人を見てたウルフさんは、とても嫌な言い方でリュカさんの援護に打って出る。
終わったな……俺のささやかな願いは、これで間違いなく拒絶される。

「実に嫌な言い方をする人間だな。私はそんなに高圧的な態度に出る気は無いぞ! ただ、枝を鼻に突っ込まれるのが不愉快なだけだ……それくらいは解るだろう」
確かにあんな物を鼻に突っ込まれたら、痛くて嫌だな……リュカさんも解っててやってるんだし、ウルフさんだって理解してるんだろうけど、何で神様にそんな態度を出来るんだろう?

「殴られるよりマシだろう! どうせ普通に頼んでも、面倒臭い交換条件を押し付けてくるんだろうから、先に嫌がらせをしたんだ。お前は昔からそう言う奴だからな!」
「私の何を知ってるんだ!」

「少なくともお前の未来は知っている! そしてその未来では、僕に面倒ごとを押し付ける凄く厄介な存在だ。どんだけ振り回された事か……」
「くっ! 私に未来の事が分からないからって適当な事を……」

「適当な事かどうかは時間が解決してくれる。そんな事より蕾を開花させ、勇者シンの彼女を生き返らせてくれるのですかぁ?」
枝を鼻に突っ込む事を止めたリュカさんは、エグる様な視線をマスタードラゴン様の下方から発し、王族とは思えないガラの悪さで問いただす。

「止めよ……そんな目で睨むな! 勿論シンの思い人を生き返らせるつもりでおる」
「それは話が早い! では神様パワーで、シン君の彼女をこの場で復活させて下さいよ。わざわざシン君の故郷へ行くのは面倒だ……俺もリュカさんも行った事ないから、ルーラで飛ぶ事も出来ない」

「お前等の方がよっぽど私を扱き使ってるではないか!」
どうやらシンシアを生き返らせてくれるみたいだ。
凄く安心した所為か、リュカさん・ウルフさん・マスタードラゴン様の遣り取りが面白く感じてきた。
未来でもこの人達は、こんな感じで接してるのだろうか?

シンSSIDE END



(天空城)
リューノSIDE

やはりお父さんに任せて正解だった。
間違いなくヒゲメガネは不機嫌だろうけど、シンシアを生き返らせる事を約束する。
しかも流石はウルフだ! わざわざ故郷の山奥に出向く事無く、この場でシンシアを生き返らせてくれる様に話を操作する。

見る見るうちに、ヒゲメガネの鼻をエグってた枝の蕾が、綺麗で大きな花を開花させる。
「いい加減その枝を退けよ!」
皆が開花の美しさに歓声を上げる中、お父さんだけがヒゲメガネの鼻をエグる事を止めず怒られる。

「花を咲かせただけでイキがんじゃねーよ! 死者をこの場に蘇らせてこその神様パワーだろが! 結果示してからデカい口叩け」
まぁ確かに……私達の望みはシンシアの復活だから、200年待たなきゃ咲かない花を開花させただけでは意味が無い。

「だから、この場に肉体を再生させ魂を呼び戻そうとしてるのだ! それには集中力が要る……邪魔をするでない!」
「このくらいで集中力が削がれるなんて、神様も大したことねーな」
他者を苛つかせたら右に出る者は居ないと言われるお父さんを、温かい目で眺めながら私はフッと気付いた。

「ねぇビアンカさん……シンシアが蘇ったときの為に、お父さんの手を握って離さないでおいて。歓喜で思わずシンが抱き付くと思うの……本当にシンシアはビアンカさんにソックリだから、お父さんの身体が反応してシンを殺しかねないから、押さえ付けておいてよ」
一瞬不思議そうに私を見たビアンカさんだが、直ぐ理解してくれたらしく笑顔で頷きお父さんの側に移動する。

ロザリーヒルでの一件を考慮し、最悪の事態を回避する為先手を打つ。
殺しはしなくてもお目出たい雰囲気を壊したくないし、ビアンカさんの機嫌を悪くするのも避けたい。
何よりウルフに“良く気が付く女”と思われたいから、事前に保険をかけておこう。

リューノSIDE END



 
 

 
後書き
ヒゲメガネ降臨! 
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