久遠の神話
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第九十六話 剣道家その六
「そうさせてもらいます」
「だよな、じゃあな」
「それでは」
「頼むな、五日後の時間は」
「何時でしょうか」
そちらの時間はというのだ。
「その時間は」
「四時でどうだよ」
「夕方の四時ですね」
「ああ、その時ならな」
道場は開いていない、しかしその時間なら闘えるというのだ。尚道場はその日は部活では使われていないだけで開けることは出来る。
だからだ、中田もこう聡美に言うのだ。
「いいぜ」
「それではですね」
「ああ、じゃあな」
こう話してだった、そのうえで。
聡美は中田との話を終えてその場を後にした、そうして。
中田は一人になり部活に向かおうとした、だがその彼に対してだった。
今度は声、セレネーの声が言ってきた。声はこう彼に問うてきた。
「それで宜しいのですね」
「ずっと見てたんだな」
「はい、そうしていました」
その通りだとだ、声も答える。
「覗き見していた訳ではないですが」
「それでもだよな」
「全て見させてもらいました」
このことは確かだというのだ。
「そのうえで貴方にお聞きしたいのです」
「上城君と闘うかどうかか」
「そうです、それでいいのですね」
「ああ、いいよ」
こう言ったのだった。微笑みさえ浮かべて。
「俺はこれでな」
「そうですか。私にとっては」
「いい流れだろ」
「はい、ですからいいのですが」
声としてはだった、剣士同士が闘うからだ。
「ですが貴方は」
「俺もこれでいいんだよ、上城君とはな」
「闘いたいのですね」
「願いは適ったけれどな」
それで戦いから降りることは決めた、しかしというのだ。
「俺は我儘でな」
「だからだというのですか」
「最後の剣士として闘いたいんだよ」
上城、彼とだというのだ。
「決めたんだよ」
「わかりました、では」
「あんたは見ていてくれよ」
二人の闘いをというのだ。
「じっくりとな」
「そうさせてもらうつもりです」
声もこう答える。
「この戦いで、いよいよ」
「力が必要なだけ集まるんだよな」
「ようやくです」
声はここでだった、嬉しそうに述べた。
「私達は共に生きられる様になります」
「だから余計にだな」
「貴方達が闘ってくれれば」
有り難いというのだ。
「是非共」
「わかったぜ、まああんたの為に闘ってんじゃないけれどな」
その考えはない、だから戦いから降りるのだ。上城との最後の闘いはあくまで彼にとっては願いなのだ。
それでだ、今はなのだ。
「闘わせてもらうぜ」
「健闘を祈ります」
「健闘、か」
その言葉を聞いてだ、中田は声に対してこう問うた。
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