東方小噺
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出張万事屋、兎が導く魔女の家
前書き
九月六日に出たお題
『因幡 てゐと霧雨 魔理沙が悩み相談をする話』を書きます。
因幡てゐは寝心地の悪さで目を覚ました。
昨夜は確か暖かな布団にくるまれて安眠についたはずだ。鈴仙へのいたずらも十分に行い精神的にも満たされての眠りであった。
それだというのに感じるのは冷たい板の感触と古ぼけた本の香りと埃の匂い。心なしか手首も痛い。
一体何がどうしたのだと眠い目をこすりながら起き上がろうとし――そのまま倒れる。手が全く動かなかったのだ。
「よう、起きたか」
ひっこりと魔法使いのような黒い帽子を被った金髪の少女がてゐを覗き見る。
「手足を縛って拉致る何てなんのつもり魔理沙」
金髪の少女、魔理沙に言い返しながらてゐはよっこいせと体を反動で起き上がらせる。
周囲を見ればそこかしこに積まれた本やよくわからない道具のたぐいがわんさかと置かれている。恐らくだがここは魔理沙の家だろう。掃除が行き届いていないのは家主の性格からか清潔感が薄い。
永遠亭は馬車馬のごとく動く奴隷もとい同僚の鈴仙がいるし部下の兎もいるから清掃は行き届いている。家のトップが文字通りの姫なので汚いままというわけにもいかないからだ。
「拉致とは酷い言い草ね。永遠亭に行ったら鈴仙は快くお前を貸してくれたのに」
「あの兎今度見つけたら鍋にしてやる」
それか服剥いでマッパで竹林に放置してやろうかとてゐは考える。その上で文屋にチクるのもいい。
「で、あんたは何の用。幸運が欲しいの? 言っておくけどSM趣味は無いから」
「私もそんなのはない。てゐに相談があるんだ。ほら、私って何でも屋やってるじゃない」
「え、何それ初耳」
思ったままに言うと魔理沙はがっくりと項垂れる。
実際にてゐは魔理沙が何でも屋をやっているなど知らなかった。そこそこ長いこと幻想郷にはいるつもりだが聞いたことがない。そこから察するに人気がないのだろう。
そもそも彼女に頼む人がいるのがてゐには不思議だった。魔理沙の家は魔法の森にあるし何でも屋の広告を頑張っているとも思えない。仮に頼むとして何を頼むのだろう。妖怪事なら博麗の巫女の方が安易に有名だ。
「知らないか……そうよね。知名度ないよね。依頼全然来ないし……」
「あからさまに目の前でダウナーになるのはやめてくれない。仮にも、というか本物の幸せを運ぶ兎の目の前で」
「そう、それなんだ!!」
落ち込んだ表情から一転、魔理沙は元気になる。
「お前への相談はそこなんだ。流石に客が来なすぎるのが気にかかってな。その原因は明確な実績が少ないのと私の事が余り身近じゃないからからだと思うの」
「立地だと思うけど。あと性格」
「でだ。そこで私は町で出張所を出し、ついでに悩み相談所をしようと思ったの」
「いいと思うわよ。けどそれと私が縛られてる関係性が全く分からないんだけど」
チッチッチと魔理沙が指を振る。てゐはすごいイラっとした。
「てゐにも手伝って欲しいんだ。お前、幸運をくれるからって里の人から好感度高いでしょ」
「それはそうだけど……つまり呼び込みパンダってこと?」
「パンダじゃなくて兎だぜ」
自画自賛ではなく確かにてゐは妖怪ながら余り人間から嫌われていない。というかむしろ好かれている部類だ。
何せ出逢えば幸運になれると言われている兎だ。医者をしている永遠亭の一員ということで悪印象もそこまでないだろう。
幸運をくれる兎の悩み相談所。普通に人気が出そうである。
「里の人に知ってもらうだけなら親に頼んだらどうなの。確か魔理沙の実家って大きな商人の家だった気がするけど」
てゐの言葉に魔理沙は何とも言い難い表情をし、言いづらそうに口を開く。
「親に頼むってのはちょっと……魔法使いを目指すあたりでいざこざがあってさ。家を飛び出してるっていうか」
「ああ、思春期だったのね」
「私の葛藤を安い感じで言わないでくれる?」
「ちなみに思春期って春期発動期の事で、春期って性欲のことみたい。魔理沙は辛い葛藤があったのね」
「私がエロいみたいに言わないでくれるか。しょっちゅう盛る兎のくせに」
「一年中発情期の人間に言われたくないわね」
まあ魔理沙が実家に頼めない理由は分かった。他人の家庭事情に無意味に首を突っ込むほどてゐは暇ではない。
「で、それをして私の得は何よ。只働きはごめんだけど」
「永遠亭の評判が上がるわね。お前の上司たちの為になるんじゃないか」
ふむとてゐは考える。確かにそれはある。医者にかかろうにも迷いの竹林の奥にあるからと気が引けてしまう人も中に入る。そういった人たちを呼んで新規顧客開拓というのもひとつの手である。
「それに悩み相談だから色々弱みが握れると思う」
「よっしゃ乗った!」
てゐは即決した。
そんなこんなでてゐは人間の里にいた。
場所は予め魔理沙が手配していたらしい。里の一角にある空家を少し改装して空間を整えた。
外には看板が立っており中は二つに分かれている。一方は魔理沙の悩み相談所兼何でも屋でもう一方がてゐの悩み相談所だ。
(うさー。ノリで引き受けてしまったわ)
今更ながらにてゐは少し後悔していた。今後はノリで行動することを控えねばならぬと少し反省する。
そも何故こんなことをしているのか考える。実際、魔理沙の考えはさほど悪い案ではないのだ。
魔理沙の何でも屋に人が来ない理由は立地もあるが知名度も大きく関係している。そういうことをやっていると知られれば人も来るようになるだろう。
それに好感度もある。素性の知れない相手の店に始めていく、というのは勇気がいることだ。こういった行為を通し霧雨魔理沙という人が里の人により一層理解され身近な存在となれば気軽に頼み事をする事もできるだろう。
精神的な近さが得られたなら後は物理的なお手軽さ。魔法の森というのは里の人が入るには少しばかり勇気がいるがまあ其の辺は頑張れば(?)何とかなる。
少なくとも妖怪がよくいる博麗神社よりはマシなはずだ。
このままでは暇だ、さてどうしよう。そんなことを考えながらてゐは貧乏ゆすりをしていると扉が開く音が聞こえた。誰かが入ってきててゐの前に来る。
お悩み相談の空間は簡易的に区切られた個室が使われている。一応簡単な防音対策も施されている。てゐと相談者の間は簡易的に区切られている。 分かりやすく言えば教会の告解室。それをマイルドにした感じ。とりあえずそんな感じのアレな空間だった。話しやすいよう椅子も置いてある。
「はいどうぞ。幸せを運ぶうさぎがあなたの悩みを聞くうさー」
取り敢えずお客第一号である。露骨に語尾も点けて話の起点を作る。
「はい実は……というか今更ですがこれって見えてるんですか?」
「マジックミラーでこっちからは見えないけどそっちからは見えるうさー。一応のプライバシーうさ。まあ別に要らないなら横にずらせるからずらしてもいいけど」
いたずら道具の王道マジックミラー。鈴仙のお風呂映像ゲットだぜ!! な御用達アイテムである。
相談者のプライバシーは一応考えてあるのだ。まあ要らない人はズラしてもらえればいい。それに一応教会の告解室みたく窓もある。下半分がマジックミラー上半分が窓。塞がってはいるがパカッと開けてもらえば両者の顔が見える。直に会いたければ横のドアを開ければ行き来ができる。
まあぶっちゃけてゐからしたら大きなウサ耳で声の判別が出来るからあれであるが。ウサギなめんな。
そんなことを思っていると窓が空いてひょっこり顔が出てくる。
「あ、ほんとだ見えない」
そしてまたひょっこり帰っていく。
「……意味ないうさー。で妖精が何の用なの」
「何故私の正体が!!?」
「妖精ってほんとに馬鹿なんだ」
うちの兎の方が賢いまであるレベルだった。
「実はですね、紅魔館で働いてるんですよ私」
「あの湖のほとりの。悪魔の館って言われてる」
「ですです。ご飯もらえるし友達もやってるからいいかなーってフラフラと風の向くまま行ったんですよ。それが酷いんです。ブラックですブラック」
「それはまたどんな風に」
「ちょっと十回くらいお昼寝しただけでナイフが飛んできます。言いつけられた仕事を三回連続で忘れるとご飯なしです。遊んでてガラス割ったらぴちゅられました」
「自業自得という言葉を送るうさー」
仕事なめてんのかという内容である。寧ろそれでもまだ雇ってくれている紅魔館の度量の広さというべきか。
「今年に入って二回一回休みです。たまに館の主の妹さんがいるんですけど、強制遊び相手になると乱数無し確1で落ちます。現実から回線落ちです」
「やめればいいんじゃないの。辛いなら逃げるのもありよ」
「ご飯おいしいから嫌です」
「帰れ」
「まあこれ全部友達の話なんですけどね。アホの子で可愛いです」
「なら何故きた」
妖精には明確な死がない。自然現象の顕現みたいなものだからピチュッても一回休みでしばらくすれば復活する。それに頭も悪い。恐怖というものが薄いのだろう。
食欲>>他 実にシンプルである。
ガタガタと椅子から立ち上がる音がする。
「愚痴れて楽になりました。ありがとうございました」
「友達によろしく言っとくといいうさ。私の幸運なら5vくらいなら道具なしでも一発うさー」
「はい。チルノちゃんに言っときます」
「あなたに必要なのはプライバシーという言葉だと思うわ」
気配が遠ざかっていく。マトモに対応できたかは知らないがこんなものでいいのだろう多分。
所詮自分は客寄せ兎。悪評が立たない程度に適当にやればいいのだ。
昼寝でもしようかとてゐが思っているとすぐ二人目が入ってきた。意外に盛況なのだろうか。
「冥界で庭師をしている妖夢といいます。私の事は内密でお願いします」
ならば何故名乗った。
「最近私の主の食事で悩んでいます。それでここにきました」
「聞いたことあるよ。確か大食いなんだっけ」
夜雀やら鈴仙やらが食べられそうになったとか何とか。
冥界の主といえば亡霊の姫のはずだが死んでいるのに食欲があるあたり色々と不思議だ。食べたものは一体どこに行っているのだろう。幽霊と亡霊で何か違いがあって亡霊は特権でもあるのだろうか。
「ああいえ、違うんです。というよりも幽々子様は世間一般で言う大食いではありません」
「そうなの? というかサラッと主の名前言ったわね」
気にするだけ無駄なのだろう。まあそれよりも相談内容の方だ。
「幽々子様は大食ではなく美食家という方が近いのです。美味しいものや珍しいものが好きなだけで沢山食べるのが好き、というわけではありません。恐らくですが夜の異変の時のことが変に伝わったのが原因でしょう」
「夜雀に月の兎。確かに珍しいっちゃ珍しいわね。珍味や美味が好きなだけで量を食べてしまうのは結果ってこと?」
「はい。幽々子様は量より質の方です。質さえあれば少食と言えるほどの量で満足します。質の良いものが多くあるとその分頑張って食べてしまうのは確かですが」
確かに美味しいものがあるのに食べられないというのは辛い事だ。多少無理はしても食べてしまうだろう。
グルメと大食いは違う。自らの舌を満足させる味やそれを食べたという経験を積むことが目的の前者。そこにあるのは味の追求だ。それに引き換え自らの食欲を満たすために美味しいと思うものを食べるのが後者。味が良いに越したことはないが及第点さえあれば満足するだろう。
冥界の主はその点前者というわけだ。てゐ自身、巷の噂で普通に後者だと思っていた。実際に話を聞くというのは大事なことだ。
まあ、鈴仙やミスティアを見て食べたいと思うのは悪食家な気がしないでもないが。
「じゃあ悩みはその噂のこと? 主に対する誤解を何とかしたいうさか」
「う、うさ? ええとその、そうではないのです。食べるのが好きなのは確かですし幽々子様も気にしてはおりません。寧ろ知り合いにたかれると……ゴホンゴホン」
「私は何も聞かなったうさ」
思いっきり聞いたしいいネタだがここはそう言うべきである。
「ありがとうございます。問題は先程いった食事の質のことです」
「腕を要求されるってこと? 『この味噌汁は出来損ないだ。食べられないよ』とか」
「いえ、幽々子様は息子でなく海原○山タイプです。静かにチクチク言ってきます。『本物を見せるわ』と昔はよく言われ手料理を振舞われました。美味でした」
親子の合わせ技。嫌味のハイブリッドである。
「というか作れたのね料理」
「お陰さまで私の腕も上がり今では満足していただいております」
○山を満足させるとは中々出来るらしい。今度作ってもらいたいとてゐは思った。
「じゃあ問題っていうのは」
「技術ではなく食材のことなのです。幽々子様は最近新しい食材に興味示されまして、早い話が珍味を所望されたのです。色々と狩りに行ったのですが最近は良いものがなくて」
「あいにく珍しい食材なんて余り知らないわ。知恵袋は専門外だから」
「いえ、食材に目星はついているのです。屈強な存在で妖怪の山にいると聞きました」
ほうほうとてゐは頷く。ならば何故来たというのだろう。
「ただそれは非常に珍しく、出会うのも稀だとうのです。私は自分自身運が良い方だとは思っていません。困り果てていたところにここの話を聞いたのです」
「なるほど話は分かった」
そこまで聞けば望みを予想することはたやすい。
てゐは告げる。
「――喜べ少女、君の願いはようやく叶う。明確な運がなければ、君の望みは叶わない。たとえそれが君にとって本来望み得ぬものであろうと、不運には対立すべき運が必要だ」
「……っ」
「私にはそれが可能だ。そして君はその機会を得た。見事その敵を打倒し、君の望みを叶えるがいい。宿命の天秤を傾け命を刈り取れ。主の笑顔のために」
愉悦の笑みをてゐは浮かべる。
告解室を模した部屋ならばそこにいる両者もまたそれを模したもの。ならばこそてゐは確かに救いを与える聖職者だ。
「……てゐさん何やってるんですか」
「愉悦ごっこ。楽しいうさ」
最もてゐはラスボスでもステージボスでもない中ボスであるが。多少髪はモジャっているが眉は普通だ。あくまでごっこである。
「取り敢えずあなたは幸運になったともう。今ならその珍味と群れバトルで色違いくらい行けると思うから頑張って。運は鮮度早いから」
「はい。ありがとうございました。狩猟できた暁には何かお礼をしに行きます」
「なら料理食べたいわ。至高と究極どっちでもいいから」
バイバーイとてゐは去っていく相手に手を振る。こっちから見えないが向こうから見えていれば十分だ。裏で何と思っていようと表ではパッと見好意的にする。愛嬌は大事なのだ。
「飽きてきたー」
まだ二人だというのにてゐは愚痴る。気の長い方ではないのだ。
手伝うのは今日含め二日ということだが既に帰りたくなってきた。一日も持ちそうにない。
そもてゐは何かしら悪戯にでも使える弱みとかその辺りが聞きたくてこの役をやっている。今までの二例はそれに当たらない。
今更ながらに思えばそんな相談が来るのか疑問だ。てゐの性格はある程度異常関わりがある相手に走られている。そんな相手に本格的な相談をしにくる存在がいるのだろうか。
来るとしたら関わりの薄い里の人間か冥界の庭師のように幸運が欲しい相手くらいだろう。
魔理沙のノリにのってノリで動いたがもう少し考えるべきだったかとてゐは少し後悔する。
座っている椅子に背中を預けブランブランとバランスをとっているとコンコンという音が聞こえた。適当に返事をすると誰か入ってくる。
「アノー、相談ヲ聞イテクレルト聞イテ来タノデスガ」
どこかくぐもった、安直に言えば声色を変えた声だった。やっとこさプライバシーを気にする相手が来たのだろう。
「はいどうぞ。相談事なら何でもござれ幸運うさぎです」
ぶらんぶらんしながら適当に言う。向こうからは見えているだろうが知ったこっちゃない。
「友人ニ少シ悪戯ヲシテイマイマシテ。ソノ相談ヲ聞イテ欲シインデス」
「悪戯ね。いいんじゃない。何でそんなことしたの」
「ソノ友人ガ私ニ悪戯シタカラ、ソノ仕返シニ少シクライ意地悪ヲト」
「そりゃ平気うさうさー。喧嘩両成敗で気にする必要ないよ。軽くめんごって言えば許してくれるって」
ありがちな話である。それでも相手に先にされたのに気にするあたり真面目な性格だ。
こんなところにまで相談しにくるあたりどこか臆病なのだろう。それでもその純真さは素晴らしい事だ。良い子なのだろう。
どっかで聞いたことある声な気がするなーと思いつつてゐは会話を続ける。
「本当ニソレダケデ平気デショウカ。アナタモソウナンデスカ」
ここまで思いやれるのはいい事だが少し臆病すぎる気もする。相談を受けた身としてそのへんは言っておいたほうがいいだろう。
「うんうん平気平気。私ならめんごめんごで終わらせるって。もう少しあなたは度胸持ったほうがいいわよ」
そう言うと一転、相手が軽い声になる。
「マジで。てゐ、朝はめんごめんご許してちょ」
「テメェ鈴仙ちょっと待てやコラァ!!」
とっ捕まえるべく扉を開けるが鈴仙は速攻で逃げいていた。ファック。
「私の言質取るために芝居してたわね。誰が許すか。人参違う口で食わせてやる」
数秒前の言葉を直ぐさまてゐは反故にする。声は恐らくだが能力で変えていたのだろう。帰ったら皮剥からのうさぎ鍋である。慈悲はない。或いは風呂画像の里にバラ撒きである。『発情期です』というプラカードかけて竹林に拘束放置もありだ。
それ以後はポツリポツリとまともな相談が何件か来てその日のてゐ相談所はは終わりとなった。
次の日は噂が回ったか前日よりも多くの相談客がてゐの元を訪れていた。
「この間裁縫の授業で人形を作ったんだ。だがそういったことは苦手で私は針を指に何度も突き刺してしまってな。人形の出来も教え子たちの方がずっと上手くて笑われてしまった……」
「魔法の森に人形師がいたはずだから彼女に教わるといいと思うわよ」
「当人に教えてもらいながらの授業だったんだ。これからもアリスで良いって子供たちが……皆が……アリスも満更じゃ……うううううう」
「涙の数だけ強くなれるわよ」
「グスン。涙と血を吸いすぎて私の人形が呪術道具クラスだってそう言えばアリスが」
「間違えたうさーあなたには博麗の巫女を紹介するうさー」
「前に永琳先生に見てもらった事がある元患者です」
「それはどうも。今後も御贔屓に、と言えないのが医者の辛いところだわ」
「いえ、実は何度か通ってまして。てゐさんも顔を見て頂ければ思い出していただけるかと。実は今日はそのことに関してなんです」
「はいはい。なんでしょう」
「実は永琳先生に見ていただいて以来熱い思いが。主にムスコが。あの胸や脚線美を見るのが目的になってしまって……通いすぎて頗る健康体なのですが私はどうすればいいのでしょうか」
「あー平気だと思うよ。今度は頭を見てもらいましょうかー」
「……」
「何か喋ってよ。誰だか知らないけど何の用なの」
「……紅魔館の地下にいる魔女よ」
「聞いたことあるかも。図書館だっけ。付き添いも連れて何の用なのよだから」
「私の図書館の本は、外で忘れられた本が紛れ込むの。ゴホン……幻想郷の結界に似た原理で」
「ふむふむ」
「だから、ケフッケフ……欲しいレア本が来るようにって、リアルラックを美鈴と」
「よし、帰れ」
「実は家のお寺に来ている方の親族のことで相談が。その方のお姉さんが心を病んでしまって家から出ないのです。ご家族の方も心配されてて……私共にもいくらか責任があるのです」
「まともな相談が……ええと、その原因は知ってるの? 聞いてもいい?」
「余り詳しいことを言うわけには……ぼかして言いますが、人目があるところで少しばかり恥をかいてしまったのです」
「トラウマね。踏ん切りを付けるタイプじゃないから少しずつ風化させ傷を小さくするべき。本人の強さにもよるけど信頼できる相手と話して少しずつ行きなさい」
「その方は責任のある行為を長く続けてこられた方です。人の汚いところを見ても耐え続けてきました。私も機会を見て伺っているので少しでも早く外に出てくれよう願っています」
(はー凄いまともな人だこの人)
「早く地底から出てきて欲しいです……」
「ちょっと待て」
「珍味取れましたてゐさん。ありがとうございました」
「お礼の料理宜しくね」
「はい。生け捕りにいた色違いシ○ガミを今日にでも」
「ダイダラになる前にすぐ返してきなさい」
「最近、会合で友人の儂への態度が酷くてのう。どうしたらよいかの」
「何されたのよ」
「人気が出たからと良い気になるな。本に出たからって偉いのか、とかのう。こないだ糾弾されてしまったわい」
「僻みよ僻み。嫌われたわね。気にしなくていいんじゃない。嫌なら抜ければ?」
「それがどうも、一番の理由は儂が言った会長の陰口がバラされたらしいんじゃよ」
「自業自得でしょ。土下座でもすれば」
「個人としては儂は好きじゃがああはなりたくない、と言っただけなんじゃがのう。喪女は嫌じゃ」
「だから謝りなさいよ」
「人を不幸にするからってボッチの子がいるんだけどあんたの能力でなんとかできない?」
「不幸? あー、もしかして厄神のこと?」
「そうよその子。私の友達……ふへへ。そう、友達なんだけど、周りを不幸にするからって尻込みしてるのよ。毎回緋想の剣を持ってこれるわけじゃないし」
「自分から不幸になりたい何てマゾくらいよ。私の能力でも多分無理。厄神の能力は自身には及ばない。それを私ので『打ち消す』事は不可能なのよ。その状態から幸せに、っていうことは誰かを近寄らせること。けど力は消えないからそれは彼女の不幸になる」
「何よ使えないわね」
「勝手に期待しといてうるさい。まあ、そらならあなたが横にいてあげれば? 友達なんでしょ。不特定多数の誰かより、知った上で隣にいてくれる一人の方が嬉しいもんよ」
「幸せをくれるらしいわね」
「まあ、一応それが私の能力だからね」
「私にとって何が一番幸福だか分かる?」
「知らないわよ。妖怪いじめじゃないの? というか迷わず鏡あけたわね」
「私にとっての幸福。それはお賽銭が入る事。幸せをくれる妖怪=お賽銭をくれる妖怪。というわけで賽銭よこしなさい」
「帰れ博麗の巫女。あ、ちょ、ま、やめ――」
てゐのもとに来たのは普通のも相談も多く里の人も多かった。それに引き換え知り合いの相談は大半がロクでもなかった。
中々の人数の相談を聞きてゐは疲れていた。中にはいいネタになりそうなものもあったがこんな場所に居続けるのは余り精神的に好ましくない。
そろそろ時間だ。もう少しすれば今日も終わり。そして二日目だから今日で終わりだ。終わりごろになって思えばまあまあ楽しかったと言える。
意外に里の人間からの自分の評判は悪くないのだと知れた。悪い気はしない。それが近くで深く知ってではなく表層だけの、遠くからのものだとしても嫌えるものではない。
たまにはこういうのもいいのかもしれないとそう思う。永遠亭の評判を上げる手助けは出来たのだろうか。
そんな事を思っていると扉が相手誰か入ってくる。これが終わり次第魔理沙のところに行こう。そうてゐは思う。
最後だから少しは気合を入れるかとてゐは姿勢を正し耳を澄ませる。
聞こえてきた声はてゐがとても良く知っているものだった。
「てゐに相談があるんだ」
それはもう片方の部屋で相談所兼何でも屋をしているはずの魔理沙の声だった。
一体どうしたのか。そう思うてゐに魔理沙は万感の思いを込めたような声でそれを告げた。
「客が、来ないんだ」
後書き
幸運をくれる兎がいるなら皆そっちに行くさ。
鈴仙のお風呂ブロマイドは一枚五千円から。
てゐでは雛さんは助けられない。なんせ打ち消せないから。
雛さんと天子は緋想の剣使って遊んでそう。緋想の剣なくても天子は雛さんとこいってそう。
やったね天ちゃん、友達が出来たよ!!
ぼっちの結束は強いのさ。多分。
幽々子様は大食いネタが多いので違うネタにしたかった。だからグルメで少食にした。
天邪鬼なのでこれから出るキャラも固定ネタからずれそう。
ていうかズラす。
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